ミドリの村へ調査に向かう勇者
今回、ミドリを誘拐した犯人は捕まっており事情を聞いている最中なので彼女は村に戻っても問題ないのですがどういうわけかその村からは何の届も出てこない。
村には人頭税を課す為、村人が他の村へと移動する場合にはその村を管轄する下級貴族の承認が必要となり、勝手にいなくなるようなことがあれば失踪届を出す必要がある。
ミドリの保護から既に2日経過しており、おそらく失踪からは3日以上。
何らかのアクションがあってもおかしくないのだが、どの兵士詰所にも行方不明の届け出が無いというのですから。
「姫さま、ミドリの村までちょっと様子を見に行ってきます」
『勇者さま、護衛は必ず!最低でもシロさんとどりあーどさんをお付けください!』
お忙しいオパール王妃は一通りの視察を終えて日の出荘にある臨時の執務室へと戻って行った。
第三日の出荘の出入りはとりあえず自由にしておく。
まぁ、関係者以外は多分立ち入らないような辺鄙な場所にあるので大丈夫だとは思いますが。
星美の調査を行っているサバンナさん達にも第三日の出荘の件は伝えておいた。
ゴーレム研究所から王都まで微妙に遠いので多分そのまま寝泊りに使うのではという感じで。
個室にはシャワー、そして大浴場やランドリースペースも整っているので長期滞在もOKとなっている。
食べ物は自販機シリーズとバイオプラント産のお弁当をひとまず用意し、キッチンに入ってもらえる人手が準備出来たら食堂を本格稼働する予定ではありますが。
その辺の話も今夜あたりセントラルキッチンの責任者と詰められれば良いなとは思っていますけれど。
とりあえず先ぶれだけは出してありますので。まだ返事が無いですが…。
今は夕食の仕込みの最中と思われるので仕方ないですけれど。
日が落ちる前にミドリの村へ飛ぶことに。
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人口はおそらく50人程度のごく一般的な村。
そこに現れたのはアロハとジーンズという異世界の恰好をした僕。
高級メイド服に身を包んだシロさん。バニーメイドのどりあーどさん。
トラウマトレーサーで見た村内は何処か既視感があるが間違いなく本日初入村となる。
丁度畑仕事から帰ってきたと思われる一団と遭遇し、一体何事かと遠巻きに見られているのですが。
「B級冒険者のサブローです。こちらの村長さんに魔獣討伐の件でお話を伺いに参りました」
でっち上げも大概にしろと言われそうだが、適当な理由が見つからなかったので魔獣に罪をなすりつけることに。
この世界、魔獣の被害はどこに行っても発生しているので多分言い訳としては一番自然ではないかと考えた次第で。
「村長…戻ってきてるか?」
「どうだろう…隣村に行くって聞いてたが…」
ぼそぼそと村人同士でやりとりするのが聞こえる。僕の聴覚は姫さまの加護によって1km先で落ちた針の音さえ聞き分けられるのだ。(何かの受け売り)
とりあえずB級のランク証を見せるも反応はいま一つ。
そもそもギルド証のB級ランク何て誰も見たことが無いだろうし。
殆どのB級ランクの冒険者はその身元を隠し、魔導結界外にある高ランクの遺跡を巡っている。
めんどくさい横やり対策として王都などに顔を出すのは年に数回。
ましてや普通の村などに立ち寄ることもほぼ無いのでギルド証を見せたところで何の効果も発揮しない。
「サブロー、いつもの恰好をすればいいにゃ」
「深緑の慈悲は威圧感ありすぎですし…普段着に使える防具を今度見繕うことにしますか」
防具に近いものならタクティカルベストなどは持ち合わせているが、異世界感たっぷりなのでどうかなとも思うのですが。
ちなみにこちらの世界に来てからまともな武器や防具を専門店に見にいった記憶はない。
ひのきのぼうと100Gを渡してくる王様と違い、最初からクライマックスな装備を渡されたのでそれ以上の物をそろえる必要が無かったのだ。
初心者に紛れて活動する際は冒険者ギルドで貸し出されている皮の胴鎧と先っちょの欠けたショートソードといういで立ちになったことはありますけれど。
貸与品なので返しちゃったんですよね。ちょっと魔力通して強化してありましたが。
次に借りる人は多分ラッキーかなくらいの感じで。
「あ、あの。冒険者様。村長宅にご案内いたします」
野良着姿の猫耳少女が腰が引けた感じで僕の前に立ち、村長宅への案内を買って出てくれた。
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トラウマトレーサーで見たのとまったく同じ古びた民家の前に立つ僕。
人の気配はある。村長かどうかは分からないが。
「村長様、お客様をお連れしました!」
戸口で声をかけるさまはミドリのトラウマトレーサーと全く同じだが、今日は返事があった。
「取り立てですか?期限はまだ先かと…」
出てきたのは女中さんのようだ。見た目がお仕着せなのでなんとなく。
「いえ、魔獣の討伐依頼がこちらから出ていると聞きまして」
「魔獣の…。申し訳ございません。村長は隣村の集会に出かけて戻るのは明後日ぐらいかと」
「あと別件ですが、この村から数日の間に姿の見えなくなった方はいらっしゃいますか?」
ちょっと顔が引きつる女中さん。
「そのような話、初耳でございます」
「この女性に見覚えは?」
懐からさいせいくんRXを取り出し、ミドリの顔写真を見せるとようやく反応が。
「たしかに村の者ですが…彼女が何か?」
「王都で身柄をお預かりしています。本人に尋ねたところ村に金を貸している商会に誘拐されたのだと」
「「誘拐!」」
女中さんとここまで案内してくれた少女の声がハモった。
もしかしてミドリが居なくなったことに誰も気づいていなかった?




