商業ギルドによるガサ入れを見守る勇者
「勇者さま!ミドリちゃんのご様子を見させていただきたく!」
ユークレスさんに続いて姫さまも乱入を。
ゲストルームの鍵を掛けていなかったのでユークレスさんの侵入を許してしまったのですが。
お屋敷は部屋から音が漏れることは殆ど無く、よほどの事が無い限りは防音結界を作動させない。
頻繁に使うのは食堂の防音結界だろうか。
大人組だけが集まって酒盛りをするときに使うという用途外使用が殆どなのですけれど。
本来は内密な話をするときに使うのだが、よっぱらいの声がうるさいと思ったので飲むときは結界を作動するようにお願いをしてある。
カラオケなんてやられた日にはお屋敷中に爆音がまき散らされることになりますし。
話を戻そう。
ミドリさんの体調はほぼ戻ったと思われ、皆さんと普通に接していただいても問題無いと思われる。
「ミドリちゃん!お屋敷の事で分からないことがあれば何でも聞いてください!」
ちゃん付けだけど姫さまより年齢高くないですかね?ちょっと分からないですが。
「サブロー様…」
「お屋敷の事はシルフィール姫に聞いてください。これから見学会が始まると思いますけれど、体調の方は大丈夫ですか?」
「もう大丈夫です。お世話になりっぱなしで…」
「大丈夫ですよ。たまにおみみさまを触らせてもらえれば」
「サブローばかりずるいぞ。わしもたまに触らせてほしいぞ」
ユークレスさんがいるのを忘れていた。先程の約束は二人だけの秘密にしたかったのですけれど。
「勇者さま、そのお約束というのは…」
もう一人聞いている人がいましたね。なんと申し開きをすればよいのやら。
「村の事件を解決するお代の代わりにもふもふさせてもらうだけで…」
「ミドリちゃん、もし嫌だと感じたらすぐに断ってくださいね!おばあさまもそうです。無理強いはなさらないように」
とばっちりはユークレスさんにも飛んでいった。
ここにアカネさんがいたら同じように釘を刺されるのだろうか。
彼女も重度のモフラーですし。
「あの、なでていただけるのは本当にうれしいので…誰にも頼めないことで…」
ミドリさん、もしかしたらねこのしっぽが天職かもしれない。
あそこならば女性客からいくらでも撫でてもらえますし。
ちなみにねこのしっぽでのおさわりサービスは女性客限定となっているが僕だけ特別顧問みたいな感じでお許しが出ている。
それでないとエリオにご褒美をあげられませんので。
「では、私も撫でてよいのですか?」
「はい!よろしくお願いします」
姫さまが背伸びをしてミドリさんのおみみさまをわしゃわしゃと。
もしかして姫さまもモフラーなんだろうか。
ルティやかえでの犬モードをブラッシングするのは姫さまが多いようですけれど。
「それではお屋敷の中をぐるっと回ってみましょう」
本当にぐるっと回るくらい広いですからね。一番長いメインの廊下は100m以上ありますし。
多分自販機コーナーに行って飲み物でもサービスするつもりなんだろう。
姫さまの後をうちの子達がぞろそろとついていく。
もしかしてゲストルームの前で皆さん出待ちしていたとか?
とりあえずやることが無くなってしまったのでガサ入れに行った商業ギルドの様子をドローンで確認することにした。
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「ここがカルロス雑貨店か…ずいぶん入り組んだ路地の奥に…」
商業ギルドのガサ入れチームに貼り付けておいたドローンの映像を出すと丁度店の前に到着したところだった。
道中の映像を別窓でタイムラプスさせて見たのだが、移動だけでも30分ほどかかっている様子。
こんな辺鄙な場所で客商売が出来るのかちょっと不安になりますが。
『カルロスはいるか?商業ギルドの者だ』
ギルド職員が薄汚れたドアを何度か叩くと、ドローンの動体検知に何かが引っかかる。
奥の方から誰かがドアに向かって歩いているようだが返事をする気配は無い。
ドアのロックが外れる音がするとほんの少しだけドアが開き、生気のない中年男性が顔を覗かせる。
『商業ギルド…何の御用でしょう?』
『カルロス商会のカルロスで間違いないな?』
『はい、代表のカルロスですが…』
『収支報告が全く出てこないので様子を見に来た。それと昨日、冒険者ギルドに出した依頼の件も合わせて尋ねる』
中年男性はギルド職員とその後ろに並ぶ衛兵を見てさらに顔色を悪くさせ、急いでドアを閉じようとしたがすぐさま衛兵が動いてドアをこじ開けられた!
『店の中を改めさせてもらう!おとなしく外で待つように!』
引っ張り出されたカルロスは衛兵3人に取り囲まれ、こじ開けられたドアから衛兵とギルド職員が次々と店内へと入っていく。
店の外用に何機かドローンを残し、残りのドローンで兵士たちの後を追うことにした。
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既に夕暮れ時となった店内は薄暗くがらんとしており、とても商いをしているようには見えない。
ドローンのモーショントラッカーを有効にすると今乗り込んでいった兵士やギルド職員とは別に複数の熱源反応を検知。
いずれも床下から発せられているようなので何かありそうだけど…。
『店内、何もありません』
『奥の倉庫はほとんど空です』
『今居住区を確認しています』
兵士とギルド職員の声を拾うが、床下に気付いている様子は無い。
今日のガサ入れ、誰が責任者なんだろうか。
通信機は持って行ってもらうよう伝えてあるのでドローンで捕えた反応のある通信機に直電することに。
「すいません。サブローです。今外から様子を見させてもらっていますが、床下に人の気配があるので調べていただけませんか?」
いきなり話しかけてしまったので驚かれてしまった。大変申し訳なく。
『ゆ、床下?でございますか?』
「はい。今からマーカー…目印を出しますのでそこを確認してください」
ドローンから赤いレーザーをマーカーとして照射し、出入口と思われる場所を示す。
床の上には縦横2mほどの重そうな木箱が載せられていたが、ギルド職員が押すと以外にも簡単にスライド。
石畳に見える床には取っ手らしきものが見えた。




