とある人物からの遺失物捜索依頼と勇者
「マステさん。彼らが昨日あたりで受けた依頼は分かりますか?」
ミドリが放置されていた袋小路に入って何か探すそぶりをしていた数人の冒険者。
冒険者には迷宮の行き止まりには宝箱が湧くという認識ががあってそれを探しに来た可能性もあるのだが、明らかに挙動がおかしく、監視カメラの映像に要確認としてピックアップされていたのだ。
ちなみに彼らの身柄を押さえる為、既に城の兵士が向かっている。
おとなしく捕まってくれれば良いのですが…彼らが迷宮にいないことは迷宮の管理システムで把握しているので。
マステさんがメモを取って待機していたギルド職員に渡し、彼女はそれをもって副ギルド長室を出て行った。
僕の方で調べても良いのだが、ギルドのシステムを監視できると伝えてあるのはギルド長だけなので。
いろいろと制約があってギルドのシステムの概要を知る人間は各国にある王都のギルド長だけ。つまるところ5人ということだ。
ギルド長に万が一があれば副ギルド長の一人がギルド長へと昇格、魔導金庫に保管されている引継ぎ書類に目を通し、業務のすべてを受けるのだとか。
この制約の中には数百年前に交わされた地精霊との取り決めも記されており、決して口外してはならないと一種の魔導契約のようなものを結ぶことになるとか。
僕は殆ど事故のような感じでこの件…地精霊達が管理迷宮を束ね、年に何度か冒険者の生気を献上するようにと約束が交わされているのを知ったのですが。
精霊は本来何も口にせずとも大気中のエーテルを代謝して生存可能なのだが、ヒト由来の魔力はそれこそごちそうらしく。
木魔獣だったどりあーどさんはエリオ村から沐浴をのぞきに来ていたスケベ人間どもからのぞき料として魔力を徴収していたようだが、本人にはその記憶が無いという。
どうも木魔獣だったころの意識が希薄で人まねをすることで獲物をおびき寄せ、倒れない程度に魔力を吸うというプログラムで動いていたらしい。
今のどりあーどさんに魔力を吸われたら普通の人は数秒と持たず昏倒すると思われる。
理を外れた魔獣となった時点で規格外の力を手に入れ、その代償として燃費が非常に悪くなったと。
僕が居なくてもエーテル代謝でなんとかしのげるとはいうが、今もこっそり魔蔦を延ばし、魔力を吸われているのですけれど。
そんなどりあーどさんの魔蔦にちうちうされながら待つこと10分余り。
防音結界が張られたドアがノックされた。
声は通さないので何故かノックの音は通るという謎の仕組みは一体誰が考えたのだろう。
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「遺失物の回収ですか…」
5人が請け負ったのは迷宮内の忘れ物調査。
背嚢を置き忘れたので手付に200 R、大体2万円くらいの手当、さらに成功報酬として同額が上乗せされるという。
5人とも昨日のうちに依頼未達成の報告をしており、手付だけもらって帰ったという。
「その依頼は誰が…」
「個人のようですが…身元確認に商業ギルドカードが使われたようなのでお隣に確認しましょう」
名はカルロス。商業ギルドには雑貨商として登録されているらしい。
ちなみに今回の件に関して個人情報がばりばり出ているが、重要な事件ということで僕にも閲覧する権限が与えられている。
一応冒険者の個人情報は秘匿される決まりになっており、正面からこの人は誰でどこにいるのかなどと聞いたところで答えは帰ってこない。
最初の犬耳職員さんの対応はしごく真っ当なもので、ギルドに入り浸っている僕を知らなかったので当然と言えよう。
多分お隣に照会が行っても僕自身はそのまま乗りこめないので商業ギルドの対応待ちとなると思われる。
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「こちらが商会の所在地となります。商業ギルドからは先んじてお顔を出されないようにとの言伝を預かっております」
20分ほどでカルロス雑貨店のあらましが届いたが、こちらも確認待ちとなっている。
雑貨商というが取引の実体が殆ど無いにもかかわらず協会費はキチンと支払われており、会計に関しての書類も全く出てこないのだとか。
近いうちにガサ入れの予定があったといういわくつきのお店らしく、それを繰り上げる形となったようで。
ガサ入れといえばアコーギ商会にも行く話があったと思うので、職員には最低でもガスマスクの装着をしていただかないと。
あのペイントボム、迷宮罠を作るシステムに適当な指示を出して設置したのでどんな副作用があるのか全く検証してないんですよね。
ひとまず冒険者ギルドを後にし、商業ギルドへ再度顔を出すことにした。
背嚢回収を受けた冒険者の身柄確保は結果が分かり次第連絡をもらうことにしてある。
多分利用されただけと思うのですが念の為。
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「これを着て立ち入り調査を…」と難色を示すのは商業ギルド長。
酸素ボンベ付きのフルフェイスヘルメットに使い捨ての防護服。
これも存在Nからもらったものである。
B級のパニック映画あたりに出てくるウイルス研究者が身に着ける防護服だと思っていただければ。
アコーギ商会へ向かうという10人の職員に身に着けていただきたいと申し出たのだが、何故?という顔を。
またしても商業ギルド長のお部屋へと入り、防音結界を張ってもらった上で今回のペイントボムに引っかかったアコーギ商会の面々について動画をまじえて説明を。
「まさか置いた本人が釣れるとは思わなくて…」
商業ギルド長が渋い顔で僕を見つめる。
手を出すなと釘をさされていたにも関わらず、結果的に手出しをしたことになってしまい大変申し訳なく。
「ちなみに彼らは城門前で足止めをされているようですので」
迷宮を出て冒険者ギルドの出張所も通らずに王都まで戻ってきたのだろう。異臭を放つ彼らは多分王都内には入れないと思われ…。




