やや番外編「アコーギ商会の動向」
ところ変わって、王都に店を構えるアコーギ商会の会長室。
ここにはいつにも増して不穏な空気が流れていた。
「グリフ、例の荷物確かに指定の場所に置いてきたのだな」
「へい!間違いなく」
「だとすればこれは何だ」
アコーギが取り出した書面には所定の場所に荷物が無く、今回の取引を中断するという内容がしたためられていた。
「先方から荷受けが出来ず、今回の取引は無かったことにすると一方的に通達してきた。グリフ。まさかあの荷物を他に流したとは言わないよな」
「と、とんでもありやせん!会長の言いつけ通り、いつもの袋小路に。あそこなら他の冒険者も入ることは無いと」
「ならば何故荷物が無い」
「会長…」
グリフの後ろで話を聞いていた別の男がおそるおそるといった感じで進言を。
「なんだ?」
「もしかするとですが…迷宮に飲まれてしまったのでは?」
「そんなはずはない。これまで何度か試しをして少なくとも3ニールは飲まれることなく荷物が留まるのを見ている。受け渡しにも余裕をもって当たったのだぞ…それと誰かがあの荷物を運び出したのなら冒険者ギルドで騒ぎになっているはずだ。グリフ、何処に荷物を置いたのかこれから案内しろ。お前らもついてこい」
アコーギ商会の面々は装備を整え、南の平原迷宮へと移動した。
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「会長…ここです」
途中、出会ったほぼごぶりんは軽くいなして撤退をさせ、戦闘らしい戦闘もせずに問題の場所へとやってきたアコーギ商会の面々。
奥行きが30メーエルほどある袋小路の終点。そこに背嚢を置いたと主張するグリフ。
「なんだあれは…」
背嚢の代わりにあったのは大人一人がすっぽりと収まりそうな木箱が一つ。
「会長…」
「宝箱…にしては装飾も何もないな」
普通宝箱と言えば豪華な金銀の装飾が施され、それに似合った中身が入っているのだがここにあるのは王都の路地裏に積み上げられているような何の変哲もない木箱。
「グリフ、中身を調べろ」
「わ、わかりえした」
グリフは腰のショートソードを抜き放ち、おそるおそると言った感じで木箱へと近づく。
アコーギ会長は他のならず者を盾にするように後ろへ下がった。
迷宮の箱には程度の差はあれど何かしらの罠が仕掛けられているのが通常。
突然火柱が上がる。箱ごと爆発する。中から魔獣が飛び出す。もっと卑劣なものは毒を帯びた霧が噴き出し、あたりにいるメンバー全員を巻き込むことも。
グリフは一応罠解除のスキルを持っているが、初級の域を出ない為複雑な罠には対応できない。
箱の蓋の隙間にショートソードを差し込み、罠を発動させる仕掛けが無いか注意深く観察を…。
「会長、仕掛けはみあたりやせん。このまま開けます」
ぎぃ…と蝶番をきしませながら開いた箱の中には背嚢が一つ収まっていた。
「会長、背嚢がありえした!迷宮に湧いた箱に食われていたようで」
「中身を確認しろ。無事ならば別の闇奴隷商人を探して売りつけるとするか…」
グリフが背嚢の中身を改めるために皮紐に手を掛けた瞬間。
「ずばーーーーーーーん!」
「「「ぎゃああああああ!!!!」」」
背嚢は粉みじんに吹き飛び、中から激臭のする紫色の液体が辺り一面にぶちまけられた!
その場にいたグリフはもちろん、他のメンバー、そして後ろに下がっていたアコーギにもその邪悪な液体が降り注ぐ。
「これは何だ!て、撤退だ。目が!目が開けられない!息が詰まる!」
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副ギルド長との面会の為に冒険者ギルド内を移動していると、すまほーちゃんからアラートが上がった。
「南の平原迷宮で罠が発動?…あれ。何処かで見たようなメンツが」
罠が発動する数十秒くらい前からレコーダーが作動しており、トラウマトレーサーで確認したならず者の集団が迷宮罠に引っかかる所を送ってきた。
「もしかして自分たちが置いた荷物を探しに?」
今朝の段階でミドリが置かれた場所について判明しており、もしかしたら改めて荷物を回収に来るのではという考えで一つ罠を張っておいた。
実は荷物が消えた後で明らかに何かを探しに来ていた集団も確認しており、その者たちについても身元照会を依頼する予定で準備をしておいたのだが、まさか荷物を置いた人物が戻ってくるとは思わなかった。
決して言い逃れが出来ないようペイントボムを仕込み、2週間程度は色も落ちなければ匂いも消えないという極悪な塗料が半径20mほどにわたって飛び散るようにしておいた。
一応天然由来の成分で出来ているので人体に悪影響は無いのだがとにかく刺激臭が凄く、しばらくはどんな店にも入れないだろうというおまけ機能付き。
「商業ギルドの人にガスマスクを渡しておくかな…」
アコーギ商会へ調査に入るという話でしたので。何なら防護服も。
というか無事に王都まで戻ってこられるんだろか。
全身紫色に染まったまま城下に入ろうとすれば門番に止められるだろうし。
戻ってくるにしてもあの状態ではしばらく時間がかかるだろうと思い、念の為にドローンを何機かつけて様子を見ることにした。
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副ギルド長、名はマステさん。副ギルド長は数名いて今手の空いている方がマステさんだったという。
「お忙しいところすいません。ちょっと動きもあったのでその報告も一緒に」
迷宮内に誘拐され、背嚢に詰め込まれた少女が置き去りにされ、何者かがそれを探していたこと。
探していた人間の照会作業はすぐに終わり、今度はフリーの冒険者が何人か浮かび上がってきた。
特定のグループに属しておらず、ソロ活動専門らしい。
今の時間、定宿にいれば良いのですが…。
急ぎ身柄確保のため衛兵が向かうことになった。




