迷宮で保護したもふもふさまの目覚めと勇者
『サブロー!もふもふさまが目を覚ましたぞ!』
お屋敷にいるユークレスさんから直電が入った。
丸一日眠っていて大丈夫なのだろうか?
「勇者さま!すぐお屋敷に戻りましょう!」
顔の跡が消えてないですが大丈夫ですかね。
「母も様子を見に行きます」とオパール王妃も同行されることに。
執務は大丈夫なんでしょうか?僕を膝枕していて長い時間お仕事を中断させてしまいましたし。
日の出荘の最上階から急ぎ一階へと移動。その後はアヒルちゃんスクールバスで城下町を走ることになった。
今の時間、割と人通りがあるので安全運転…空を飛んだほうが早いかな。
地球と違って電線などは張り巡らされておらず、飛行に際して障害となるような存在は無い。
車輪を折りたたんで空中モードへ変形したスクールバスは1分ほどでお屋敷の上空へと移動を。
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「姫さま、先に様子を見に行ってください。僕は後から顔を出します」
本当に何度も言うが保護をした女の子から張り手やキックをもらったことは数知れず。
叩かれた痛みはそれほどでもないが心がしくしくと痛むのだ。
「勇者さまが保護されたのですから最初にお顔を見せてあげてください。私共は何もしておりません」
元々は佐々木社長が見つけた背嚢から出てきたので手柄と言えば佐々木社長になるのですが。
当のご本人は地球でお仕事中の為、呼び出すわけにもいかず。
僕の要望は受け入れられず、お尻を押されてゲストルームへと入ることに。
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「サブローです。失礼します」
「サブローよ、急に改まってどうした?」
「見知らぬ女性の寝室に入るのですから挨拶があって当然かと」
「そんなもの必要なかろう。この者にはあらましを説明したがおぬしの口からも状況をつたえてやってくれ。わしは現場にはおらなかったからな」
ということでもふもふさまとご対面である。
「改めて、サブローと申します。当家の家長です」
「ミ、ミドリと申します。命を救っていただいたのはサブローさまとお聞きしております。記憶が曖昧なのですが迷宮から救い出していただいたと」
「見つけたのは別の方なので顔を合わせる機会があればお礼を行ってあげてください。ところで何故迷宮のそれも背嚢の中に?」
「それなのですが…村に借金取りが来たところまでは覚えていて、気が付いたらこちらに。背嚢の中に押し込められていたと聞いたのですが全く覚えていなくて」
村に借金取り?
「はい。詳しくは分からないのですが村自体が大きなお金を借りていたことになっていたとかで…村長さんを探したのですが何処にもいなくて…私が村長さんの家までその借金取りの人たちを案内したところまでは覚えているのですが」
これはトラウマトレーサーの出番だろうか。
おそらく極度の恐怖から記憶が一部飛んでいる状態なのだろう。
しおれてしまった彼女のおきつねさまのおみみさまに自然と手が伸びてしまった。
「トラウマトレーサー起動」
視界が暗転し、彼女の深層意識へと自分の精神を飛ばす。
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「いい加減、借りたものを返してもらわねえとこっちも商売あがったりなんだよ」
あまり見た目が良くない冒険者崩れを数人引き連れ、その男は村の入り口で大声を張り上げた。
村人は何事かと様子を伺い、そそくさと自分の家に引きこもる。
村の外で野草を摘んで帰ってきたばかりのミドリはあっけにとられ逃げ遅れてしまった。
「そこの嬢ちゃん、この村の長はどこにいる?」
「そ、村長さんですか?あ、案内します」
ミドリは野草の詰まった籠を背負い直し、荒くれ者を引き連れた人相の悪い男を村長宅に案内する。
いつもなら村長宅で油を売っている頃合いだと思い、家に案内するが…。
「村長さーん!お客様です!」
開け放たれた戸口で何度か声を張り上げたが、家の中からは誰も出てこない。
奥様やお手伝いの女中の姿も無く、がらんとした土間に足を踏み入れてもう一度呼びかける。
「あれ?いないみたい?」
つい独り言のように声が出てしまったが、後ろにいた人相の悪い男の耳に届いたらしい。
「まさか逃げたんじゃねーだろうなぁ。おまえら。金目のものが無いか探せ」
「へい」「わかりえした」
後ろに控えていた荒くれどもがミドリの背後から家の中に押し入り、土足で部屋に上がり込むとあちこち物色を始めた。
「箪笥の中は古着しかありやせん」
「押し入れにもせんべい布団しかねーですぜ」
「金目のものを持って逃げたか…おまえ、村長の家族か?」
「いえ、遠い親戚にあたると…」
「親戚か。ならおまえに借金を払ってもらうしかなさそうだな」
ミドリは迂闊な事を口にしたと思ったがもう遅い。
「闇奴隷商に売れば利息くらいにはなりそうだな。おい、こいつをしばって連れ帰るぞ」
「いやあああああ!!!!」
ミドリは口をふさがれそのまま手足を縛られ、大きな背嚢に押し込められる。
「これでも嗅いでおけ」
異臭のする薄汚れた布を鼻に押し当てられ、ミドリの意識はそこで途絶えた。
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「なんて酷い事を…」
この子が荒くれ者に捕まるまでの経緯は判明した。だがどの村なのか、そもそも荒くれ者の正体は?疑問は残る。
「サブロー、顔色が悪いぞ。何があった」
「後で説明します。ここだと話しづらいので」
多分この子は荒くれ者に捕まった時の記憶を自分で封印しているのだろう。
出来れば思い出させたくないので別室でトラウマトレーサーの映像を見ながら説明するのが良さそうだ。
この謎のスキルを使うと精神的に疲れるのでいつもは封印しているのだが、今回のような事件の解決に役立つのであれば…。
「ミドリ、お腹が空いてない?」
ぐう。とかわいらしいかえるさんの鳴き声が。




