新たな恒星間移動船建造の話と勇者
月夜のテスト飛行、ショートジャンプは特に問題も起きずに終了した。
整備に関してはセルフチェックとメンテナンスボットで事足りるとの事で、当初はメンテ要員をつけない予定だったが、船の構造を確認したいという整備班からの要望により監視要員として人が何人か付くことに。
今回のテストに整備班の方も乗り組んでいたのでご案内を。
月夜のサブブリッジにメンテナンス用拠点があるというので僕もお邪魔することにした。
船内のチューブトレインで移動する事数分。
船尾近くにあるサブブリッジのドアを開けると数十か所あるコンソールに灰色の覆いがされた状態であった。
メインブリッジのコンソールに覆いは無かったのだが、ここは普段あまり使われない場所なのだろうか?
覆いを外し、コンソールに火を入れると船のメンテナンス用画面に切り替わる。
メンテナンスボットは初日に自働で稼働しているところを見ていたが、コンソールを見るとメンテに関するスケジュールがびっしりと表示されている。
これだけ大きな船ともなると一日では回し切れないのか?
外装のクリーニングは半日程度で終わっていたが内部点検に時間がかかるのかもしれない。
整備班の方々は早速コンソールへと張り付いてなにやらメモを取り始めた。
ここはお任せしても問題無いと思い、メインブリッジへと引き返すことにした。
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「タマヨさま。メンテ班をサブブリッジへ案内しました。僕は特に手を出せそうなところは無いのでお任せして戻ってきましたけれど」
「サブロー様、何から何まで任せきりとなってしまい…」
「僕としても有益な情報を得られるので問題は無いです」
「サブロー様は生まれ故郷に帰る方法を探しておられると…でしたら月夜を役立てていただければ」
「お申し出ありがとうございます。サブロニアと僕のいる星が近ければ月夜にも手伝ってもらえそうなのですが、位置関係が今一つ分かっていなので…」
すまほーちゃんを使った三角測量の件はそもそも基準となる星を何処にするかという問題すらクリアされていない。
いっそのこと今僕が乗り込める場所全てに位置測定用デバイスを持ち込み、互いに位置関係を割り出させるのも手かな。
信号を発することで何かしらの悪意を持つ第三者に傍受される恐れもあるのだが、双子がいうにはすまほーちゃんの通信は別次元を経由した特別なプロトコルを利用しているという話だったので大丈夫かな。
僕がこうしてサブロニアに顕現していられるのもその通信装置のおかげなのですが。
これで地球へと戻れれば良いのですけれど、地球には魔素が殆ど無い。
魔素で動く装置は電力から魔力を生成して動かしているのだが、大きなエネルギーを得るにはそれ相応の魔導陣を組み込んだ魔導具が必要となり、地球へと持ち出せるアイテムのサイズを超えてしまうので現状は無理となっている。
一つ謎なのが以前作った瘴気の浄化装置。見た目盆栽みたいなあれである。
地球に持ち出された同型の装置は何故か動いているのだ。
もしかしたら魔力は存在しないが、瘴気はあるのか?
今まで忙しすぎてその件をすっかり忘れていたのだが、今から確認をしてみるか…。
誰かのすまほーちゃんをリモートで触れれば良いのでひなちゃんに頼もうかな。
もしも地球に仮初の体を顕現できるほどの瘴気が満ちているのであれば大問題なのですが。
「タマヨさま、本日はありがとうございました。次のテストの日取りが決まりましたらお伝えください」
「サブロー様、あなたがいなければサブロニアは立ち行かなくなっていただろう。資源惑星への航路を確保できれば当面の資材不足も解消できる。それに未知の資源惑星の開拓も出来れば本星に戻るための新たな船の建造も」
未だ場所すら判明していない本星への帰還。
本星へ向かうには月夜サイズでもまだ小さいということで少なくとも10kmクラスの恒星間移動船が必要になると。
一隻だけでは無く随伴艦、戦闘艦隊も念の為に同行させるという。
「資源さえあれば1サイクルで準備を、その間に本星の情報を入手するつもりです」
大型船の建造ってそんなにすぐに出来るものなんですかね?
まずはジャンプゲートの設置が急務との事でこれから準備に入るという。
何なら資源惑星の軌道上に新たなドッグを建造し、そこを拠点にするという話も今こうして話をしている間に出てきている。
資源を運び出すタイムラグが無くなるのでそのほうが早そうですが。
良い時間となったのでサブロニアを辞去することに。
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「姫さま、ただいまもど。もが」
VRゴーグルを取ったら目の前が真っ暗でおまけに息苦しい。
「おかあさま、勇者さまが苦しがっています」
もしかしてオパール王妃の膝枕でダイブしていたのか?
「エイトさま、大丈夫でございますか?」
なんというかまた大きくなっていないですかね。オパール王妃の山脈。
心当たりがるとすれば魔力量の増大。つまるところ僕が干渉しているせいなんでしょうけれど。
「はい、ちょっとおどろいただけで大丈夫です」
癒しの空間から体を起こすと姫さまが近寄ってきて僕の顔を覗き込む。
「なにかありましたか?」
「勇者さまのお顔に赤い線のようなものが…おかあさまの胸当てのせいでしょうか?」
ブラの跡がつくほど押し当てられていたんですか。
いうのは何度目かになるが仮初の体に意識を飛ばしている間、体に触れられても何も感じない。
すこし残念に思いつつ、月夜の飛行データを集めて全体共有することにした。




