資源惑星へのショートジャンプ実施と勇者
月夜は順調に上昇を続け、窓から見える景色が急速に暗くなっていく。
『大気圏内用エンジン停止。これより大気圏外飛行に移ります』
ブースターから反重力を使った飛行に移ったらしく、船をはげしく揺らしていたエンジンが停止し宇宙空間用のエンジンに切り替わったようだ。
姫さまからは月夜の姿が一瞬で見えなくなったと報告があり、かなりの上昇速度でもって大気圏外へとたどり着いたらしい。
既にサブロニアシティははるか彼方となり、サブロニア全土が見渡せる高度に到達。
サブロニアは星一つが一つの国家であり、惑星全土に似たような規模の都市がいくつもあるという。
その中でもサブロニアシティが一番規模が大きく、主要行政機関の殆どが集約されているとの事。
当然各地にバックアップとなる機関が存在し、万が一にもサブロニアシティが失われるようなことがあっても星として存続できるだけの体制は整っているという。
「タマヨさま。試験飛行ですが行先をお聞きしていなかったと思うのですが」
「ジャンプ先はここから1サイクル離れた場所にある資源惑星にしていただきたい。まずは近距離のジャンプが正確に行えるかを試したく」
ちなみに海図は持ち込んでもらっている。
サブロニアは既に資源の殆どを消費しつくしており、星喰いに見つからないよう細心の注意を払って少し離れた場所にある資源惑星からごく少量の資材を得ていたという。
エネルギーはリアクターからもたらされるため枯渇する心配は無いが、何かを作り出そうとすれば当然資源が必要となり、それらは外から持ち込むしかない。
今目の前に浮かんでいる衛星は随分前に資源を掘りつくし、足場だけが残るがらんどうな姿となっている。
見た目は蒼い月なのだが近づいてみるとほぼ星としての体裁は無い状態。
「月夜、行先を資源惑星にセット、ショートジャンプの準備を」
『マスターサブロー。ショートジャンプセットアップ実行します。ジャンプエネルギー充填済み、ジャンプアウト地点設定完了。いつでもジャンプ可能です』
「ショートジャンプ開始!」
『復唱、ショートジャンプ開始。ブリッジを保護モードへ移行。エンジン出力120%。ジャンプゲート展開。スターター点火!』
ブリッジの物理窓にシャッターが降ろされ、視界はモニターに切り替わる。
一瞬星のきらめきが失われ、漆黒の世界が広がったがすぐに復帰した。
『ショートジャンプ完了。目的地に到着。ジャンプ誤差0.05%以内。前方に惑星を捕えました』
このジャンプ形式が何なのかは不明だが、ほんの一瞬で目の前の景色が変わり、眼下にはさっきとは異なる水色と褐色が入り混じる不思議な星が。
ちなみにジャンプ前から深緑の慈悲でブロードキャストを行っており、王族チャンネルと地球への配信は継続したまま。
「タマヨさま、あの星が資源惑星ですか?」
「間違いない。こんなにも早く来られるとは…。星喰いが存在していたころはショートジャンプも自粛していたのでな…」
ジャンプ時には大量のエネルギーを消費する関係であのオケラに見つかる確率が上がるというので通常航行でここまで来ていたらしい。
それこそ年単位の移動時間が必要だとか。
1サイクルの距離は通常航行で1年という認識で合っているのだろうか。
ちなみに資源惑星自体は生物の生存に適した環境では無く、衛星軌道上にステーションを建ててそこを拠点としているらしい。
何らかの理由でテラフォーミングの候補から外れ、材料を得る為だけの星になったようで。
ステーションは普段は無人で、資源を取りに来る時だけ利用をしているとの事。
今は資源採掘の時期では無く、誰もいないという事なのでステーションはスルーすることになった。
月夜が大きすぎてドッキングできるポートが無いということもありまして。
一応月夜の中には小型艇がいくつか存在しているが、今回はショートジャンプによる試験飛行がメインの為、小型艇の展開はこの次の宿題とした。
せっかく来たので資源惑星を一周し、映像に記録してからサブロニアへと戻ることにした。
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『ショートジャンプ完了。出発地点へ帰還しました』
資源惑星の滞在時間は1時間ほど。
月夜の能力の半分くらいは把握できたので本日の試験飛行を終了することに。
通常ジャンプについてはまた日を改め、有益な情報を持ち帰れる場所を選定するという。
資源惑星はここだけでなく、祖先から引き継いだ資料の中に数多く記されているというが、あのオケラの存在があってそれらを利用する機会もなく、出来ればその資料の通りに星が存在するのかの確認を行いたいと。
星美を使って航路を開き、今まで自粛していたジャンプゲートを設置すればより安全に資源の採掘運搬が可能になると。
ジャンプゲートそのものがオケラを呼ぶエネルギーを発するのでこれまでは使われていなかったが、眠らせていたゲートを起こして順次設置の予定だという。
「タマヨさま、お疲れ様でした。星美を大気圏に再突入させ、元の場所へ戻します」
全長1kmを超える大型船にもかかわらず、その辺りは割と自由な設計になっているのが不思議だ。
「サブロー様、ご協力感謝する。ここまで早く星海に出られるようになったのはあなたのおかげ。何を持ってこの御恩に報いれば…」
「気になさらないでください。ああ、でしたら境界の地…ライスリッチフィールドへお越しください。うちのこ達がタマヨさまと話をしたいと言ってましたので」
僕としても利益はあるのだ。VR機材の人柱。それも異なる世界からの訪問者となればまた違った情報が得られるのだから。
だんだんと発想が佐々木社長に似てきたけれど大丈夫か?




