従者の星の大掃除と勇者
「姫さま、僕はサブロニアへ顔を出してきます」
朝食を済ませてから従者の星へと全員で移動。
前回の遠征後から何も手を付けていない百畳敷きの集会場を掃除することになったのだが、一部に積まれた戦利品以外は特に手を出すべきところも無く。
無人の間に自走ロボによる掃除がされる仕組みが備わっており、みっちゃんさんのずぼら具合が垣間見られる設計となっている。
戦利品はハマトーメン村やカタハマ山頂神社で集めたアーティファクトの数々で、一部はお屋敷に持ち帰って飾ってあるが、大部分は従者の星に置きっぱなしとなっている。
そもそもがお屋敷に飾るスペースが無いということで新たに棚を都合してもらったのだがなかなか手を出せずにそのままに。
明後日ぐらいに一度戦利品の整理を行う事にして、今日のところは見える範囲で床以外の清掃を行うことにした。
僕は参加しなくても大丈夫というので2階の四畳半に籠ってサブロニアへと意識を飛ばすことにした。
膝枕担当、今日はココナが一番手となった。
今日は移動もあるのでサブロニアでの活動は最小限にしようと思う。
---
そんなわけで意識を飛ばしてやってきたサブロニアの隠し基地。
正式名称も不明らしく、単に基地と呼んでいるだけとの事で、一晩過ぎて内部の空気が完全に入れ替わった隠し部屋へと直行し、そのまま船内へとなだれ込む。
サブロニアの方々は念の為にスペーススーツは着用を。
船内を移動するチューブトレインに乗って船体中央から少し外れた場所にあるメインブリッジに移動。
昨日と異なるのは全コンソールに火が入り、動力も動いているような気配がする点か。
『キャプテンサブロー。船内の解凍作業が完了、セルフテストの最中です。全システムのチェックにあと6クロック必要です』
起動したばかりのころと違い、抑揚の付いた普通の喋り方をするメインシステムから進捗状況が報告された。
あと半日くらいで船が動くようになるというのだが、数千年も凍結されていたシステムがそんな簡単に動くなんてどんなシステム何だと感心したり。
緊急脱出用の船じゃないかなというのは案外あたりなのかもしれない。
残念ながら船のシステムには使用目的までは記録されておらず、ただここに止め置かれただけとしか分かっていない。
「管制システムでは呼びにくい。名前があれば教えて」
『キャプテンサブロー。当船、およびシステムは初期化時に船籍と名前を抹消されており名称は存在しません。ご不便でしたらキャプテンが新たな名称をあたえてくださるとたすかります』
「名付けは相談するので少し待って」
勝手に名付けるのもどうかと思い、隣にいたタマヨさまに相談を。
「サブローさまに決めていただければ。この件を議会に持ち帰ればいつ決まるか分からぬ」
どこのお役所も似たような物なんですかね。
名称決めるだけで半月とか掛ったら目も当てられないですし。
この前は星美を使ったし、宇宙に関する言葉の方が良いかな。
「月夜とかどうかな?」
ネーミングセンスのかけらも無いので行き当たりばったりである。
『ツキヨ…拝命いたしました。本船はこれよりツキヨ号と名乗ります』
ああ、語彙のレパートリーが欲しい。どこかの施設とかマシンドールの名前と被ってなかったっけ?
かといってフェニックス1号…はもう使ってるしなぁ。
船を監視しているドローンから船に変化があったと報告があった。
船首付近に「TSUKIYO」の大きな白い文字が浮かび上がったとの事。
そんな機能もあるんだと驚きである。
---
「月夜、この船はそもそも外に出せるの?」
『キャプテンサブロー。本船は格納庫ごと地上へ暴露が可能となっています』
このばかでっかい基地ごと地上へ出られるんだ…。
ちなみに外は何故か更地となっており、周囲にも建物はない。
何らかの意図が感じられるのですが、どうしてここが何の開発もされずに放置されていたのかも現在調査中との事で。
船に関して上部にある科学庁の不正造船所をどうにかする必要は無くなり、早ければ明日にでも船を外に出すことになった。
念の為に月夜からリフトアップ時に影響の出るマップを出してもらい、先にタマヨさま達に調べてもらうことになった。
今日の作業はこのくらいにして、ライスリッチフィールドへ戻ることにした。
宴会にタマヨさまを誘ったら来ていただけるだろうか。
さすがに今日は無理かもしれないが、各国首脳を交えた懇親会を近いうちにやるという話が出ているので仮初の体で出席いただければと。
接続深度の事前検証は必要ですが。
ファンタジー世界側のロスミアさんやハルミルさんにも声を掛けてみるかな。
---
「ただいま戻りました」
膝枕担当は何故か派遣メイドさんに変わっていた。
いつ抽選に組み入れられるようになったのだろう?
従者の星のお掃除をするというので何人かこちらへ派遣されたようで、僕の担当に割り振られたとの事。
「ありがとうございます」とおしっぽさまにお礼を。
よく見れば夕べユークレスさんからセクハラを受けていた銀色のおしっぽさまを持つ狐人の方でしたか。
「エイト、次はわしの番だからな」と2階の四畳半に押しかけてきたユークレスさんが膝枕を変わるようにと圧を掛けてくる。
「おばあさま、どこに行かれたのですか?こちらの遺物についてお尋ねを」
姫さまがユークレスさんを探している。まだ掃除の途中だったんですね。




