やや番外編「ひめたべラジオ突発企画 後編」
「しんこんりょこうですね。私も興味があります。ちなみにおかあさまはお父様とご結婚された後、ご旅行に行かれたのですか?」
「いえ、当時は二人揃って王城を長く空けることは出来ず、城下を1日散策したくらいですね」
マッスルキングは冒険者として長く城を空けることが多く、結婚を機に落ち着くようにと先代の王から直々に言い渡されたのだと。
そのため結婚直後は長く城を空けられず、1日だけ城下の名所を回るにとどめたという。
「エイトさまのおかげで夫と二人、海を眺めることが出来本当にうれしかったですわ」
オパール王妃が何度か訪れたことのあるハマトーメン村へは数回ほどマッスルキングも同行し、二人そろって海岸を歩けたのがよかったと。
「海を見に行くにはだーくほーすをどれだけ早く走らせても往復7日はかかりますし…」
馬車の場合は片道7日。それも天候が良く、何のトラブルもない場合の話だ。
勇者はこの世界の交通機関を入れ替えるつもりは無い。
やろうと思えばもっと速度の出る馬車の開発も可能だが、だーくほーすほどの経済性は出ないと思われるのと交通事故の増加を懸念しての事。
実はガソリン用の改質器も準備してあったりするが、自車が赤竜王へと変型したため不要となり、ガソリンランタンの燃料を作るために使用されている。
代わりに長く鮮度の保てる時間経過を緩くした特製の荷台を広めようとしている。
足の速い鮮魚、精肉、野菜などの運搬に使ってもらおうという魂胆だ。
これが広まれば内陸部では鮮魚が、海沿いでは生肉が手に入ることになる。
蓄えとしての保存食作りは残るだろうが、食材加工に掛ける経費は大幅に減るだろう。
本当に勇者はこの世界の何を救いに来たのか、本人も首をかしげている。
「私はしんこんりょこうで勇者さまの世界に行きたいと思っています。勇者さまがいろいろと調べてくださっていますが、大体片道100日ほどでちきゅーに到達できそうな気がすると」
勇者は星海に出るための手段をいくつか用意し、中でも最近見つけたばかりの40m級宇宙船で一旦星の外に出た後、過去の文明が遺したであろうスタージャンパー級と呼ばれるジャンプ機能を備えた船で地球へと向かうプランを検討している。
スタージャンパー級に積まれたジャンプ機能、シフトドライブと呼ばれる空間圧縮航法装置を使えば地球までの4500光年を大体90日前後、途中のジャンプの誤差を含めると100日で地球に到達できると試算。
これはナビゲーションピクシーによる大まかな航路設定によるもので、本当に4500光年離れていたらの話となる。
実際のところ、以前として地球の方角は不明であり、今後大掛かりな測量を実施して大体の方向を調べる予定となっているがそれも度重なるイレギュラーに対応するために伸び伸びとなっていた。
なお、地球に到達する方法の代替案として、精霊女王やシロが地球との往復に使った方法も見当されているが当の本人たちにその記憶は無く、どのように世界を渡ったのかは以前として不明。
勇者自身は大崩落と呼ばれる突発的な空間転移現象に巻き込まれてこちらの世界に来ており、この現象の再現性はほぼ無いと思われているため検証からは外されている。
「お兄さんの世界、本当に行ければいいなぁ。お兄さんのご両親にご挨拶したい…」
フィリーが勇者の家族に加わったことを報告したいと言い出した。
「そうですね。みきちゃんとも本来の姿でお会い出来ればと思いますし」
勇者の妹、未来は仮初の体をライスリッチフィールドに顕現させ、たまに遊びに来る。
滞在時間は当初30分程度だったが、今では半日を超えての滞在が可能に。
当の本人はこの場でラジオの公開録音に参加しており、「それじゃあお兄ちゃんの部屋を案内するね!」と乗り気になっている。
ちなみに勇者の実家は境界の地の砂浜に1/1スケールで再現されており、何も本物を見なくとも細部まで再現された部屋の様子を確認できる。
ちなみに妹が頻繁に部屋へと訪れる関係でありがちなベッド下のお宝などは存在せず、お宝はPCの中の鍵付きフォルダに収まっている。
双子はその存在を感知しているが、覗いてはいけないものだと手を付けずに放置。
勇者の性癖は暴露されずに済んでいるが、普段の行動からけもみみ属性に弱い事は既に明らかとなっている。
また見ぬ星、地球への話題が尽きないことから急遽地球の、それも日本の観光名所を動画で紹介する流れとなった。
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「私は前の両親に会えれば…」
幼くして命を落とし、この世界に転生してきた鈴は銀幕に投影される地球の名所を見ながらそうこぼす。
何をもって自身を証明できるのか。昔の面影などかけらも残らない金髪碧眼の少女は思い悩む。
そもそも自身が命を落とした時期とこの世界に生を受けた時期が違いすぎる。
十数年のブランクは何故生まれたのか。そして何故王族として、それもかなり訳アリな血筋として。
勇者の助けが無ければ今も王城に幽閉され、不当に借金奴隷を生み出す白紙の証書にサインをしつづけていたのかもしれない。
「えーにーには何度助けられたか…えーにーのご両親にもお礼をしなければ」
生前、入院していた鈴の下にほぼ毎日のように顔を出していた勇者。
鈴はどれだけ勇気づけられたか。最後は勇者に手を握られて意識を落とした。
気が付いたのは暴走する馬車の中であり、頭上からは大量の岩石が降り注ぐという絶体絶命のピンチだったが。
「それでは長期計画として勇者さまのご両親にご挨拶へ向かうというぷろじぇくとを起案いたします!」
星海を跨ぐという超巨大プロジェクトがここに発足した。
当の本人に知られぬまま。
「本ぷろじぇくとに関するあいであをお持ちの方は是非番組宛にお送りください。採用者には光のサブロー教特別ピンバッジをお送りいたします。本日紹介させていただいた匿名希望さんにも特製ピンバッジをお送りいたします。それでは時間となりましたので今夜はここまで。あでぃおす!」




