ドローンによる馬車追跡再びと勇者
「もぬけの殻でしたか…」
ドワル氏の邸宅に送り込んだ兵から連絡があり、使用人すら姿を消していたと。
大教会の捜索は殆どが空振りに終わる。
事前に情報が漏れているのかと思うのが多分正解なんだろう。
あちらには光の女神の名を騙る存在がおり、その人物から巫女と呼ばれる信者に対して言葉が降りてくるという。
すっかりうちの子になった十三夜ちゃんからその辺りのからくりを大体聞いており、僕達の行動が事前に分かるのだとか。
最初は内通者の線も疑ったのだがどう考えてもつじつまが合わず、なにかしらの方法で僕達の行動を見ている、あるいは予測していると思われる。
昨晩、邸宅から離れる馬車を見かけたという聞き込みの結果も出ているという話で、またしてもドローンを駆使しての追跡を行う事に。
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「邸宅を出た馬車は特定出来ました。今は経路を確認しています」
ドローンによる監視網は健在であり、ドワル邸もその監視下にあった。
前回のように馬車の特徴を調べて登録という作業は省けるので単純に通った道筋だけを追えばよい。
本来であれば馬車は夜間の移動を控え、野営地に入るのだがこの馬車は漆黒の闇の中をまるで道筋が見えているかのように進んでいく様子が浮かび上がる。
「何かに誘導されているようですね…」
普通であれば魔獣や夜盗への警戒を行うと思うのだが、一定速度を保ったままアトレーン郊外へと進んでいく。
馬車は明け方まで移動を行い、どちらかというと大森林に近い位置で一度止まったようだ。
その後、午後になってから移動を再開、今向かっているのはグランディオーラ方面と言ったところか。
「姫さま、逃走中の馬車の様子を見てきます」
「勇者さま、お一人で行かれるのですか!護衛を付けてください!」
一人で立ち上がったところで姫さまから待ったがかかった。
「シロもいくにゃ!」
「どりあーども」
追跡ならばアヒルちゃんワンボックスで良いだろう。
城詰めの兵士も同行をさせてほしいとラダさんからお願いされた。
選抜されたのは女性兵士が二人。
「もふもふさまじゃ!」
ユークレスさんが早速反応していらっしゃるが、今は緊急事態故に控えていただければと。
急ぎアヒルちゃんワンボックスを準備して容疑者の乗っていると思われる馬車を追うことに。
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『勇者さま。馬車が止まりました!』
姫さま達には問題の馬車を観測してもらい、不穏な動きが無いかのチェックをしてもらっている。
途中で馬車を乗り換えるといった事もなく、中身はドワル氏の奥方とその使用人であろうと思われるが、なにしろ大教会である。
どんなトリックを使われるか分かった物ではない。
「姫さま、ターゲットの直上に来ました。映像送ります」
目的地までは40分ほど。1日半で随分と移動をしたようだが大丈夫だろうか。
中の人が。
この世界で馬車を引くのはだーくほーすと呼ばれる半魔獣。
多分地球の馬よりははるかに頑丈で、荷馬車で交代するのは御者の方。
水分補給と食事さえ気を付ければ数日は走りっぱなしでも問題ないというのですから。
他の交通機関が発達しないのは多分だーくほーすのせいだと思われる。
赤竜車…赤竜王になる前の僕の車はそのだーくほーすなしで走るのでかなり驚かれましたが。
アヒルちゃんシリーズに関しても街中を流していると割とみられますし。
だーくほーすの代わりに巨大なアヒルの顔が付いた謎の移動物体を見かけたら見ないほうがおかしいといいますか。
「ひとまず逃げられないよう障壁を出してあの馬車を覆います」
魔力障壁は僕が使える数少ない魔導の一つ。
純粋に魔力を壁として変換し、何も通さない半透明の壁として顕現させられる。
止まっていた馬車を広く覆うようにして障壁を出すと、異変に気付いたのか馬車から人が下りてきて障壁を叩き始めた。
まぁ、その程度では破れることは無いので僕は馬車の近くにアヒルちゃんを降ろすことに。
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「馬車の持ち主に問う!ドワル氏の関係者、エルゼリアで間違いは無いか!」
アトレーンから一緒に来た女性兵士が障壁ごしに声をかける。
ああ、奥方のお名前はご存じだったんですね。僕知らなかったですが。
いちおう声は通るようになっています。それでないと会話が成り立ちませんので。
中の人は何が起きているのかといった感じでこちらの問いかけには応答がない。
6人乗りの箱馬車から降りてきたのは5人、そして御者が1人。
障壁に沿って歩き回り、どこか出られる場所は無いかと探している様子だ。
真っ赤なドレスで着飾ったご婦人が1人、黒っぽい侍女服姿の女性が3人、執事らしき初老の人物が1人、あとは中年男性の御者という感じだ。
「そうよ!私はエルゼリア!ここから出しなさい!これから光の女神様に会いに行くのです!邪魔をするようでしたら女神様の罰が下りますよ!」
みんな大好き女神様の罰。
この世界の人は罰を抱えたままでは光の女神様の御許へは行けないと信じており、悪人は死の直前に懺悔をするそうで。
「あなたにはドワル氏を操り、商業ギルド内を混乱に陥れた容疑が掛かっています。おとなしく投降を!」
アトレーンの事なのでアトレーンの兵士に任せることに。
僕が出ていくとたぶんろくでもない事になりそうなので。
「そんなことはでたらめです!何故私が商業ギルドへ口を挟むと!」
「本人の自供も得ています!あなたに操られていたことも洗いざらい話しました」
「どうして…大教会の指輪の力が効かないなんて」
ああ、ちょっとしゃべっちゃいましたね。
あの指輪、洗脳系の魔導が掛けられていたようでドワル氏は多分大教会の意のままにあやつられていたと思われる。
それ以前にも多分商業ギルド内で何かしらのトラブルを起こしており、そこにつけこまれた可能性も。
「話は王城で」
この障壁ごと運んだらダメですかね?




