ママチャリの実演をする勇者
「本日の初心冒険者引率完了報告に参りました。それと、珍しいドロップがありましたのでそれもあわせて報告を」
冒険者ギルドの出張所から既に通達があったようで、ギルド本部裏手に数名の職員が待機していた。
正面玄関から各種ドロップを持ち込むと混乱のもとになるのでいつも裏口搬入となっていますが。
お出ししたカラフルな大小の宝箱よりも奇異な存在にギルド職員の目が釘付けとなる。
「ママチャリ…じゃ通じないですか。僕の世界ではありふれた移動手段の一つとなります」
まぁこのママチャリ自体が魔導具で僕の知る自転車とは異なる存在なのですが。
「移動手段…」
「ダークホースのように跨って使う魔導具なのですが」
何ら危険は無いと分かっているのでスタンドをはらって後輪を地面につけてサドルに座る。
ペダルを軽くこぐと背中から押される感覚がありスムーズに走り出した。
普通の自転車であれば正面から風邪を受けることになるが、このケッタマシーンは雨風よけのシールドが自動展開し、強風に目を細める必要もない。
おまけに簡易空調もついているので汗だくでペダルをこぐといった自体にもならないのだ。
ギルドの裏手を一周して戻ってくると「車輪が縦に並んでいるのにどうして倒れない」「あのような細い車輪で大丈夫か?」などと心の声が聞こえてきた。
以前もママチャリを見た人から似たような感想が聞かれたが…たしかサバンナさんだったか。
「比較的近場の移動にはうってつけだと思います。長距離の移動は難しいかもしれませんが」
そういえばママチャリで日本縦断した人とかいたような気がする。このママチャリなら可能かもしれないが、残念ながら地球には魔素が殆ど存在せず、アシスト機能は働かないと思われるが。
「宮廷魔導士にも報告を!」
このママチャリ、魔導陣が書き込まれているのだ。
つまるところ古代遺物と認定され、それらは国へ要報告らしい。
僕の方からもオパール王妃に…と思ったら姫さまが既に動画付きで連絡していると。
僕が楽しそうにママチャリをこいでいるところを…。なんでこんなにも楽しそうなんでしょうか。
自分でも分からないのですが。
「勇者さま。こすぷれをして乗るのはどうでしょう。ちきゅーで流行っていると聞きましたが」
コスプレで自転車?いつどこからその情報を仕入れたのかそっちのほうが不思議ですね。
ひとまずママチャリはギルド預かりとなった。
忘れそうだが今日も箪笥サイズの虹箱が出ているのでそちらも引き渡しを。
ちょっと遅い時間となったがお屋敷に戻ってお昼ご飯を頂かないと。
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「姫さま、僕はこれから国営鉱山にこの前掘り出した鉱石を返しに行きますので」
「でしたらいつものように護衛をお付けください。鉱山といえども注意が必要です!」
また誰かしら拾ってこないかという心配をされている。
そう何度も人助けをするようなシーンは無いと…言い切れないのがくやしいですが。
『エイトさま。鉱石の件は商業ギルドから返却場所の指定がございます』とこの場に居ないオパール王妃から通信が入った。
ちょっと量が量だけに鉱山の奥に出来た空洞へ返そうと思っていたのだが中身が分かっているのなら集積場へ降ろしてほしいと。
ただ、インベントリの事はあまり知られたくは無いんですよね。
それもあって鉱山の奥を選んだのですが。
『人払いをするということでしたので鉱山の責任者にお尋ねを』
既に名前を忘れてしまったが…女性だったかな。
いつものようにシロさんとどりあーどさんを伴い、国営鉱山へと移動を。
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人前に出る際は正装を心掛けているのでいつものように深緑の慈悲を纏って鉱山へと顔を出すと責任者らしい人が待っていた。
「国営鉱山副管理者のバラードと申します。いまから集積所へご案内をいたします。そこで目にしたことは秘匿するようにとも」
今日はメインの方が不在との事で副管理者が直々に案内をしてくださるとの事で。
もふもふさまですよ。狼系ですかね。例によって名前と顔が一致しない呪いが発動しているので魔力紋を記録することに。
鉱山は山のふもとを切り開いて作られており、いくつもの坑道が口を開き手押し車や荷馬車がひっきりなしに出入りを。
僕達はすこし離れた場所にある集積所へと案内された。
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あるといっても300トンくらいなので取り出しても高さ数メートルの山が出来る程度。
このくらいならば突然増えたところで問題は無いだろう。
「では後ろを向いておりますので」
バラードさんは背中を向け、両耳も手で塞いで見ざる聞かざる状態に。
「では排出っと」
座標を指定した場所に忽然と姿を現した岩の塊。
表示は300トンとなっているがどう見てもそれ以上ありそうな。
もしかして中身が空洞だったりするんだろうか。
インベントリの中ではそこまでの観察は出来ないのでみすかすえっくすで確認を。
ちなみにバラードさんにはこちらを向いてもらっている。
突如として出現した岩山に面食らっている様子ではありますが。
「中に何かありますね…内容物の魔素量が多くて判別がつきませんけれど」
とりあえずオパール王妃に報告をしなければ。




