多次元世界について語る勇者
「勇者さま!お客さまとのお話は終わりましたか?」
ホワイトさん達を例のきんぴか扉から天界へ送り、施錠をして客間を出ると姫さまが待ち構えていた。
「とりあえず今日のところは…」
ちょっと話が深そうなんですよね。
まさか僕の手元にあるDSOVRのネタ武器が神の手による創作物だったとは。
まぁ、威力もおかしいし人を傷つけないという点がちょっと引っかかっていたのですが。
少し遅くなってしまったが夕飯を食べることに。
姫さま達は先に済ませるよう伝えてあったので問題ない。
僕とオパール王妃という珍しい組み合わせで。
お付きの隠密メイドさんたちもお誘いしたのだが交代で食事を取ると言って同席はされなかった。
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そんなわけでいつもの境界の地。
十六夜さんのおぱんてぃらさま、本日は何故か天使をあしらったものだ。
宗教絵画に出てくる幼児体形の天使で通じるだろうか。彼なのか彼女なのか不明だが今まさにラッパを吹こうとしているところの一枚絵。
特になにかのゲームから持ち込まれたものという感じもない。
今日のおぱんてぃらさまのチョイスはやはり存在Nなのだろうか。
「天界か…わが右目にはそのような場所があることすら映らなかったが」
世界のレイヤーが異なると十六夜さんの目には映らないのだろうか?
「いくつか判明したことがあるのでこの後温泉に入りながら説明を…」
十六夜さんのスカート下から這い出すとみなさんお揃いのようで。
「益田、天界とは一体なんだ!」と佐々木社長が詰め寄ってきた。
「詳しい事は分からないのですが、どこか別の世界を監視するための組織らしいということくらいしか」
僕のいる世界は天界総業の配下ではなかった。
ちなみに地球は一応天界総業の配下らしいのだが、その地球が僕の住んでいた地球かどうかは分からない。
「勇者さま、地球が地球ではないとは一体…」
姫さまが首をかしげている。
「その辺もお風呂に入りながら説明しましょうか」
のぼせないかな?
とりあえず薫先生と大学生のアルバイト組を迎えに行かないと。
今日は珍しく大学生組がログインしているというので。
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「世界のバランスを保つ組織か…」
佐々木社長に天界総業の事業概要を説明したのだが、いまひとつ伝わらないようで。
そもそもエネルギーの管理と言われても何のエネルギーかすら分からない。
人々が活発に活動し、神を崇めることでそのエネルギーは充填され、世界が成長するのだと言ってた気もする。
逆に平和すぎる世界は活動が停滞し、徐々に衰退するのだとか。
それと争いごとが過ぎる世界もエネルギーが少なくなると。
そういったエネルギーの枯渇した世界は周囲の世界から無くなったエネルギーを補充しようとするのでつまるところエネルギー収支のバランスが崩れるのだとか。
そんな世界にエナドリを注ぐような仕事、争いの火種をぶち込んで一致団結させるとか、危機に瀕した世界に救世主を送り込むとか。
天界総業の人材派遣について話すと社長がため息をつく。
「まさか地球の内戦はその天界とやらが絡んでいるのではないだろうな?」
「そういえば地球の話題って殆どでなかったですね。積極的にアプローチしているのであれば何かしら聞けたと思うのですが」
僕と似たような境遇の人がいるとしか聞いていない。どんな人なんだろう。
名前すら教えてもらわなかったけれど、匿名性の高い仕事をしているのか。
まさか僕の親戚筋とか…それは考え過ぎが。
ホワイトさんかブラウンさんに今からメッセージを送るのもどうかと思い、明日の朝にでも地球への関与を尋ねるつもりだ。
「勇者さま、先程話されていた地球であって地球ではないというお話ですが…」
「多次元世界とでも言いましょうか。異なる世界に似たような星がいくつも存在するという架空の理論なんですが…」
似たような文明を持つ星だがちょっと違う的な。例えば科学の代わりに魔法が発達している世界。鉄の代わりに異なる鉱物でもって進化した世界。世界の大半が海に覆われ、海中に適応した人々が暮らす世界…まぁ例を上げればきりが無いか。
そういった多次元世界の一つにある地球が天界総業の支配下にあり、僕の出身地は全くことなる地球である可能性もゼロではない。
一番良いのは派遣で雇われているという人物と接触し、地球の様子を尋ねることだろう。
許されるのであればの話だが。
「あ!そういえばひめゆぶにも並行世界からやってきたという魔王さんがいました!」
魔王を名乗る褐色ロリが地球に攻め込むも主人公にこてんぱんにのされ、すっかり従順になって主人公のハーレム入りをするというメスガキ即オチマンガ的な展開があるという。
ロリ枠は女教師がいるのでかぶっているのだが、その辺は作者的にどうなのかと。
ただ、作者は自分の右目に見える世界の事象を書き起こしているだけという話だったのでもしかしたら実際に起こっているのかもしれない。
ひめゆぶの主人公が住む地球もまた多次元世界の一つなのか、それとも作者の右目内でシミュレートされた仮想世界なのか。
それを確認する術がないのがなんとも。
なにしろ見ている本人がリアルなのか空想の産物なのか区別がつかないということでしたので。
今度作者さんにその辺を詳しく聞こうと思う。




