タマヨへの罰を考える勇者
僕はカブトムシ型の船から離れ、70m級のコクピットに戻った。
あれは遠隔操作で操縦を行い、タマヨさんの乗るシャトルへ向けて小惑星帯を突き進む。
しかしまあ、よくぶつからなかった…もしかしたら無意識のうちに弾き飛ばしていたかもしれないデブリの数々。
外から見ると密集しているように見えるけれど、中を飛ぶ分にはそれほど気にならないんですよね。
30分ほど低速で移動を続けると、ビーコンの反応が強くなった。
とりあえずタマヨさんと合流出来たのでそのままサブロニア星へと移動を。
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「シールド展開、減速用パラシュート準備」
タマヨさんのシャトルに続いて70m級も大気圏への再突入フェーズへ移行。
カブトムシはそのまま大気圏へ突入できるようなので児童操縦としておく。
こちらは手動なので計器の数字とにらめっこしながら機体の角度を維持。
ナビ画面は出ているのでクロスゲージをナビの光点に合わせるだけのお仕事なのだが結構気をを遣う。
ちなみに通信は電磁波とは異なる方式で行っているのでブラックアウトの心配はなく、タマヨさんの船と会話しながら徐々に高度を落としていく。
一番驚かれたのが人型の装置がそのまま大気圏へ飛び込めるという点。
僕もまさか可能だとは思っていなかったので驚いているのですが。
「パラシュート展開、減速開始」
空力も何もない物体なのでパラシュートで十分速度を落とさなくてはならない。
スラスターで姿勢を制御しつつ、サブロニアの宇宙港を目指す。
このあたりまで来れば自力飛行が可能な為パラシュートをパージして翼を展開。
ちなみにパラシュートは魔素で構成されているのでパージした後は空中で消滅する。
非常にエコな作りをしているのですが、いつ準備されたのかが謎のまま。
タマヨさんのシャトルから遅れること数分。
先程離陸に使った宇宙港のドッグ近くへと足を降ろした。
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「キューブ化!」
70m級は一旦3機のスーパーマシンへと変形し、それぞれが1辺が10センチほどのキューブへと戻る。
地上に落ちたキューブを拾ってインベントリへと収納。
シャトル近くで待っていたタマヨさんと合流を。
「サブローさま、本当に申し訳ない。今回の関係者には厳罰を課すつもりだ」
あとはあのカブトムシの予算がどこからねん出されていたのかも調べるという。
一歩間違えばまたあの忌まわしいオケラをこの世に生み出す寸前だったのだから。
ダメですよ自立モードで戦闘をさせるなんて。暴走するにきまってるじゃないですか。
あのオケラも元は相手側の戦力を奪うために作られたと聞くが、何を間違ったのか敵味方関係なく襲い掛かるモンスターへと豹変したのだ。
今回鹵獲に成功したカブトムシは一旦自立システムを取り外したうえで有人による運用に変えるという。
「関係者には無論私も含まれている。サブローさま。どうか私に罰を」
もしかしてこの世界の人も罰が好きなんですか?
「罰ですか…何か考えておきます」
今すぐに衆人環視の下で罰を下すわけにはいかないだろう。
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「ただいま戻りました」
あの後、議事堂へと移動。今回の首謀者を含め数十名が拘束されることになった。
タマヨさんには日を改めて罰を与えると約束し、日の出荘にいる自分へ意識を戻すことに。
「勇者さま!お怪我はありませんか?」
僕を膝枕している姫さまのお顔がドアップとなっている。
「深緑の慈悲があったので問題ないです。それに仮初の体にダメージを受けてもこちらには響きませんし」
魔素で作られた体は致命傷を負うことがあっても本体には何の問題もない。
仮想世界のアバターのようなものですし。
「それでも心配です。どうしてあのような無茶なことを!」
僕が単身でカブトムシ内に侵入し、行く手を阻む扉は全部粉砕しましたからね。
電子ロックを解除する時間も惜しかったというくらいの言い訳しかない。
深緑の慈悲のパンチは宇宙戦艦の装甲も軽く撃ち抜ける程度らしい。
通路を使わずとも外殻に穴をあけてそのまま侵入する方法も取れたのですが、被害を最小限に抑えてリユースできる道を選びたかったので。
あのカブトムシは気密ドア数枚を補修すればすぐにでも星海へ出られるというので。
ちなみに開発コードなどは存在しないらしい。本当に極秘に進められていたプロジェクトのようで、いつから作られていたのかすら分からないと。
サブロニアは単一国家で内戦などとも無縁。軍事力は主に星喰いへの備えをするだけとなっており、それが隠れ蓑になっていた可能性も。
『益田!今回のデータを大至急送れ!』と社長から突然の直電が。
あのカブトムシ内部はすべてスキャン済みで3Dぷりんたちゃんを使えば複製を作ることも可能。
今後、星海に出る際に利用しようと思っている。
社長は宇宙へ出るための手段としての利用価値が無いか確認をしたいという話でしたが、地球で小型の反応炉が作れるかというとちょっと無理な感じが。
カブトムシにも反応炉が搭載されており、いわゆるエーテルリアクターと呼ばれる無尽蔵のエネルギー源を動力に使え、半永久的に動作可能。
あのオケラにもエーテルリアクターが載っていたと思われるが、粉砕してしまったので調べようがないんですよね。
思わぬ方向に転がったサブロニアでの模擬戦は一応無事に終了した。




