迷宮内の遭難者救助と勇者
僕が少女を抱えて迷宮入り口にある広間に出ると、何事かという視線が飛んでくる。
いつもは大勢の冒険者でにぎわう広間だが、今はC級以上の冒険者しかおらず割と閑散としているが、集まる視線は尋常ではない。
「預言書の勇者様!」
広間に待機していたと思われる冒険者ギルドの職員が駆け寄ってきた。
「迷宮内で一般人と思われる少女を保護しまして」
「すぐに救護室へ!」
「僕が運びます」
何か身元が分かるものを持っていればいいんですが、そこは未調査なんですよね。
急ぎ迷宮から外に出て冒険者ギルド出張所にある救護室へと向かう。
この前来たばかりな気がするんですけれど。
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「では身元の調査も併せてお願いします」
ちなみに簡易チェックでは極度の疲労状態と示されたのみ。
怪我等はしていないようだが、何故迷宮内に居たのかが不明だ。
救護室のベッドにカーテンが引かれ、ギルド職員がてきぱきと処置を開始。
「身分証ありました。すぐに照会を!」
一人がなにやら木製の札のようなものを手にギルド出張所へと走って行った。
ギルド証じゃなさそうだよな。
「お任せしてしまって大丈夫ですか?」
「こちらの少女はギルド預かりとさせていただきます」
「何かあれば連絡をください」
一応連絡手段は渡してあるので問題は無い。
そういえばドローンでの異常検出は無かったんだよな。
戦闘などで傷ついた冒険者が出ればアラートが上がるようにはしてあるけれど、単に衰弱して倒れただけじゃ反応しないのか。
あまり判定を厳しくすると休憩しているだけの冒険者もピックアップされてしまうので閾値の設定が難しいのですけれど。
僕は与えられた任務を続行するために迷宮へと戻った。
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「ブロックの2/3をチェック完了、問題なし…」
想定外の遭難者発見によって若干の遅れが生じたが迷宮内の探索は1/4ニールほどの遅れ程度で進んでいる。
シロさんとどりあーどさんに僕の探索エリアの一部を譲渡し、遅れを取り戻してもらうつもりだ。
修正した探査マップを再同期し、全員で共有を行う。
さすがに二人目の遭難者発見などは無く、似たような風景の中をアヒルちゃんATVを飛ばす。
途中、どうしても冒険者を避けられない箇所があったのでそこは徐行しましたけれど。
あちらは一体何が現れたのかとパニックになっていた様子でしたが、ご容赦いただきたく。
ATVのエンジン音が結構響くんですけれど、かといって魔獣の密度が上がるわけでもなく。
前にも話したと思うけれど、迷宮内に放たれた魔獣はその時点でMPTの制御が外れ、完全に自立して動くようになる。
なので不注意でモンスタートレインを起こすこともあるのでそこだけは注意しないと。
「げぎゃ」
また一つキルマークを増やすアヒルちゃん。
いま倒したのははいはいこぼるとのようだ。既に魔素になっているので謎ですが。
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開始から2ニール半ほどで南の平原迷宮のほぼ全ての通路を確認したがイレギュラーに通じる何かしらは全く見つからなかった。
合流ポイントでシロさん、どりあーどさんの姿を確認。
「異常なしにゃ」
「どりあーども問題ない」
合わせてドローンによる索敵結果も確認。べあーむの発生は認められず。
「とりあえず報告に行きますか」
まずは冒険者ギルドの出張所へと探査記録を提出、出坑手続きの後でギルド本部への報告となる。
「サブロー、さっきの女の子はどうしたにゃ?」
「救護室に預けてそのままですが…そういえば連絡が無いですね。まだ目が覚めないのかも」
「ちょっと顔をみたいにゃ」
シロさん、そんなに興味があるんですか?
あ、そういえば法則が発動してしまったんですよね。
単独行動時の連れ帰り…。
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「迷宮内、異常はありませんでした。走破した地図を提出します」
さいせいくんRXに記録されたマップをギルドへ提出。
ここにもぷりんたちゃんがあるのでそのまま印刷してもらうことに。
一応、少女をピックアップした場所は記してある。何かの役に立てばよいのですが。
「先程救助していただいた少女の身元が分かりました。荷運びとして雇われていたようですが…」
雇っていた冒険者はまだ戻っておらず、迷宮内を探索中との事。
「雇っていたグループは分かりますか?」
「はい。無名の臨時グループですが構成メンバーは把握しています」
「そういえば低ランクの冒険者には退出通知が出ているんですよね?」
「彼女は荷運び名目で入っていますがC級の冒険者でして…」
あんな軽装でC級の冒険者?普段着で迷宮に入るなんて。それにギルド証が木片だったような。
「昇格したばかりで仮証を使っていたようです。荷物が無いのが不自然ですが」
一体何があったんだ?冒険者同士のトラブルだとしたら僕じゃなくて冒険者ギルド管轄になると思うのですが。




