新たなる境界の地との遭遇と勇者
「わが名は二十六夜。ここ境界の地を管理する未来予測装置の一つ。そなたの来訪はこの右目に見えていた。ようこそ、預言書の勇者」
またしても謎の空間に呼び出された僕。
二十六夜を名乗る女性…少女かな?
十六夜さんとは対極の甘ロリ仕様どでもいうべきか。
そういえば二十六夜って何か特別な意味があったんでしたっけ?
背格好は十六夜さんと余り変わらないように見える。
「どうも。初めまして。預言書の勇者エイト、もしくはサブローと名乗っていますが」
「では、サブローと呼ばせてもらおう。そのほうが良いと我が右目に」
ちなみに赤いセルフレームのメガネをかけており、これもまた十六夜さんとは正反対な気が。
「未来予測装置としての使命を終え、数万サイクルの間眠りについていたと思われる。いまこの世界は再び邪悪な力によって…?」
「何かありましたか?」
「いや、右目に映る悪しき存在が急に消えた。これは一体…」
先ほどまでの威厳はどこへやら。年相応といったら失礼かもしれないがロリータ服の少女が慌てふためく感じに。
「ちなみに悪しき存在とは?」
「悪食、暴食と呼ばれる天変地異のような怪物。ひとたび食らいつかれた星は二度と元には戻らぬ」
どこかで聞いたような。
「もしかして星喰いとか言われてませんか?」
「そのような名もついていた気がする」
「ああ、でしたら成り行きで倒しましたので」
「倒した?星海の守護者が束になっても太刀打ちできなかったあのサイアクの塊を?」
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すまほーちゃんにはこんな時の為に星喰い討伐のダイジェスト映像を保存してある。
坑道内での接敵からシールドマシン挟撃までを切り抜き動画風に編集したもので、大体5分程度であらましが伝わるようになっている。
もちろんまーちゃんさんがとどめを刺すシーンはきっちりと抑えておりますが。
「この醜悪な怪物、まさに悪食。我らが主の悲願が…」
「そんなわけで二十六夜さんの懸念事項の一つは消えていますので」
「懸念も何も、この星海を荒すのは悪食ただ一体のみ。他にも脅威は存在したが悪食がすべて喰いつくした…」
蟲毒っていうんでしたっけ。ツボの中で虫を戦わせて最後に生き残った一匹に残った怨念を使った呪術。
おそらく星喰いも多種多様な敵対種族を食い散らかしてパワーアップしていたと思われる。
「我はこの悪食の脅威を伝える為、この境界の地で長い間待ち続けた。まさか眠っている間に倒されていたとは」
十六夜さん達と違って二十六夜さんには明確な役割があったんですね。
というかこの境界の地とあちらの境界の地の関連性を尋ねてなかったのですが。
「十六夜のことか。同時期に作られた未来予測装置。しばらく一緒に過ごしたこともある」
ということでお知り合い確定のようです。
「これでようやく使命から解き放たれる。サブローよ。礼を」
「いえ、僕だけの力では到底倒せなかったですし」
「しかしこれから何をしよう。悪食の脅威が去った後の事を創造主からは聞いていない。創造主もアレが倒されることまでは考慮していなかった」
「でしたら十六夜さんたちと合流しませんか?今は無月さん、七夜さんという管理者の方も一緒に住んでいらっしゃいますし」
「無月?」
「はい。とある事情でナンバリングを外れ、無月と名乗っていらっしゃるようですが」
「誰だろう…興味がある。興味か。そういえば久しく何かに興味を惹かれることも無かったな」
久しくって何万年単位なんだろう。彼女達の人格が作られてからどのくらい経過しているのか彼女達自身も分かってないようですし。
「ちなみにこの境界の地は僕の制御下に入ったようですね」
すまほーちゃんに新たに増えたメニューに二十六夜さんのお名前が記されている。
「とりあえず無月さんの管理するサンセットビーチと接続してしまいましょう。環境設定は後からでも出来ますし」
この何もない空間に地球からVR環境をロードして過ごしやすい場所に帰ることも可能。
七夜さんのところは森に囲まれた大旅館となりましたが、さてどんな設備を増やそうか。
いっそのこと遊園地でも?その辺りは二十六夜さんにお伺いを立ててから。
天井と床以外何も存在しなかった場所に高さ20mはあろうかという金色の扉が出現。
「まだ誰か居るといいんですが」
ぎぎぎぎぎ…と音を立てて開く金色のドアの向こうに見知った砂浜が広がっていた。
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「十六夜さんいらっしゃいますか?」
本家境界の地はもぬけの殻。もしかして映画でも見にいってるのかな?
「なんじゃここは…」
「十六夜さんのスペースですが」
まぁ、カオス度が半端ないですけれどね。
何でも置いてあるショッピングモールでも言いましょうか。
どこの世界に戦車を並べているショッピングモールがと思うのですけれど。
「滞在時間は大丈夫かな…ちょっと待っている間に何か食べますか?」
「食事か…この体になってからはそのような必要は」
「まぁ、モノは試しと言いますし、手始めにお茶でも飲んでみませんか?」
二十六夜さんを自販機コーナーへ案内したらまた驚かれてしまった。




