魔物短歌
聞こえてくる
さみしい音色に誘われて
壊れたものが集まってくる
*眠る
蜂蜜を
スプーンですくい眠る子の
頬に垂らして聖句を綴る
手のひらから
零れていった大切な人の数を
かぞえて眠る
リウマチの
バレリーナ眠る新月の
夜にちいさな星が流れる
まっしろな
シーツに丸くくるまって
一分だけ、とつぶやき眠る
*カオス
ゆらゆらと
狭い視界が滲んでく
幸福なものへ変わるために
不可解な
夢のお告げに従って
ちいさなイモリをゴクリと飲んだ
親指を
ちぎって伸ばして蝶にして
天使の梯子を追いかけさせる
飽和して
溢れこぼれて沈んでく
怨みはさみしさ。ねえそうでしょう?
音なんて
みんななくなってしまえばいい
声さえなけりゃ騙せないだろ?
美しき
水彩溶かしたよな世界
嘘っぱちでも綺麗は綺麗
棄てられないものが
多すぎて
自分が大人になったことを知る
粛々と
虐げられるあたし達
切り刻まれて狗の餌になる
天を見る
マリアさまの足元で
遺体を重ねて十字を作る
鍵をかける
間違っても君が見ないよう
宝石箱に銃器を隠す
鍵をかける
決して外に出ないよう
鳥籠に少女を閉じ込める
ギイギイと
叫ぶ蝉を磔に
無垢の指先血に染まる朝
死にたくないが
生きていたくもない
だから私は霞となるのだ
ウットリと
盗んだ指輪と見つめあい
ついていた指を公園に捨てる
風に乗り
飛んだ帽子を追いかけて
車道に飛び出しグシャリ轢かれる
踏切で
プチリ脳味噌飛び散って
点々と猫がまだらに染まる
妹を
糸鋸でばらばらに
即席パズルでゲームを始める
懸命に
ゴシゴシからだを洗いすぎて
汚れと一緒に消えちゃった
絶望という名の壜に
入れられて
喉掻き毟って静寂に死ぬ
とびきりの
スクラップの山我が屋敷
家具と同様俺もガラクタ
厭わしき
どくろの丘では今もなお
ナザレの彼が悪魔と踊る
うつくしき
夜空にからだを投げ出して
幾万の星に紛れてきえる
蝶々の煌めく
幻影に浮かされて
彼女も闇夜の一部になった
憎らしい
写真の顔を塗りつぶす
もちろんソレは僕の顔です
いそいそと
屠殺場行の電車に乗り
皮を剥がれる空想に浸る
終わらない幻は
打った薬のせい?
それでもいいわ幸せだから
空洞の臓器に
水を注ぎ入れ
満たされたような錯覚に笑う
繊細なされこうべを
胸に抱き
虚ろな瞳で星を見上げる
耳澄ませ
殺されし恋を甘くうたう
悲劇にわが身を投影してみる
嬉々として
骸骨化してく少女たち
そんな不思議な「キレイ」に幸あれ
安っぽい
幻灯ショーに出演せし
キミとの悪夢に絶叫す
心ない
只の機械になれたなら
さみしさなんてなくなるのにね
でたらめに
ピアッシングした星空の
数滴こぼした血を拭いとる
お魚のように
じょうずに泳げたら
妾キット西へゆくのに
一目見て
ソウルメイトと確信し
またよろしくと口づけをする
進もうか?
悩み見つめて赤信号
青へと変わっておれを笑う
流れ落ちる
涙という名の罪悪に
またひとつ自分がきらいになる
責めるよに
俺を呼ぶよな耳鳴りに
狂える乙女の哄笑をきく
ゼロ、キュウ、ゼロから
はじまる絶望
お前にはきっと分からないだろ
きらきらと
涙の滲む眼球の
そのうつくしさにためいきをつく
上等な
お洋服に靴、鞄……
身につけ高価なものになりきる
鼓動なき
愛玩ロボット抱き寄せて
Love me……とつぶやき心で叫ぶ
ろくでもない
過去を適度に着色し
立派な人生演出してみる




