↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/7

魔笛短歌

聞こえてくる

さみしい音色に誘われて

歪んだものが集まってくる



  *電子


パソコンの

仮想空間のなかで生きる

わたしは果たして人間かしら?


カタカタと

震える指でキーを叩き

「ごめん」と呟きIDを消す


赦してと

一言メールに書いて送り

オーバードースの海へと沈む


  *記憶


大切な記憶は

ぜんぶ置き去りに

生きる為には重すぎるのだ


ソウあの日、

失ったのは何だった?

思い出さない出せない自分


みずいろの

記憶のプールに沈んでく

静かに音なく石のよに


「あなただれ?」

きみはすべてを忘却し

世界をみんな透明にした


  *食べ物


分割し

冷凍保存されていた

シロップで煮た心臓を食べる


壜詰で

棚に保存されていた

お砂糖漬けの胎児を食べる


愉しきは

乙女の腐肉の腸詰を

その恋人に料理せしとき


愉しきは

殺した仔猫の胃袋を

その飼い主に料理せしとき


貴重な

禁制品のクッキーを

犬に投げて一緒に食べる


あらゆる

チョコレートを禁止した

政府にデモの行進をする


甘ったるい

アイシングかけたクッキーを

山ほど作って壁に飾ろう


植物を

豚を魚を鶏を

殺してみにくい死骸を食らう


  *色彩


きらきらと

青いネイルの美しい

小指の爪を剥がして飾る


赤ペンで

頭骨に恋の詩を写し

可愛いひとにプレゼントする


盗まれた目の代わりに

チクチクと

青い釦を縫いつけてみる


虫よ虫

醜く震えるアノ黒い

貴兄の潰したそれが妾です


「ひかりあれ!」

うたう少女の足元で

赤き涙こぼす水脈


ほろほろと

おちるは涙の赤き色

溶けおちてゆくわが身とまじる


純粋な記憶を

黒く塗りつぶし

ウ、ラ、ギ、リ、モ、ノ!と叫び笑ウ


しあわせの

かたち模るミルクティが

血いろにみえるハレの夕べ


浮き上がる

あおい血管をそっと撫で

死の予感にあまく震える


  *虫


腐敗せし

あまい林檎は猶あまく

幻覚の虫を肥らせる


右腕で

虫を育てる夢を見て

柔らかなキャベツにかじりついた


バタバタと

もがき苦しむ虫摘み

泥臭い飯の端に添える


爪先から

ちいさな虫に変質し

ばらばらになって俺は消える


  *今はもう


今はもう

海に沈んだ極東の

キモノとスシの論文を書く


降りそそぐ

紫外線を浴びた子は

吸血鬼のよに焼け焦げて死ぬ


生まれない

子どものために仕方なく

クローンの自分をもう一人つくる


ただ一つ

昔からずっと変わらない

空の青さに涙を零す


人工の

正体分からぬ肉を焼き

何でもいいやと気にせず食べる


どこまでも

広がる緑の草原を

馬で駆けゆく想像をする


いつからか

労働という言葉さえ

古代語となり美徳は消えた


今はもう

写真にしか残らない

森林の存在記憶へ刻む


  *花


たおやかな

白百合のよなその首を

ナイロンの紐でぐいと絞める


腐乱した人差し指を

鉢に植え

牡丹が咲くようお祈りをする


花籠の花弁に

溺れてみえなくなる

透明なわたし狂ってゆくあなた


微笑する天使のパズルを

ばらばらに崩して

薔薇の根元に埋める


鉛筆で

画用紙いっぱいに描きだし

花びらひとつを遺作と名づける


青薔薇の

繁殖つづける死体ちぎり

小瓶に詰めてお金に換える


雨降れど

花を召しませ、笑いましょ

暗い顔など似合いませんわ


風流に

花占いと洒落こんで

スキで終わるよう小細工をする


強く香る

薔薇のポプリにダイブして

からだじゅうで幸せになる


夢のよな

バラいろの傷にくちづけて

壊れてく音に耳傾ける

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。