少女短歌
*あたし
明日死ぬと
思わなければ生きてけない
悪夢のなかであたしは笑う
絶望に
絶望と絶望×絶望で
あたしのいちぶは今日もまた死ぬ
聞こえてる?
あたしは孤独なんかじゃない
助けたいなんて馬鹿にしないで
何度でも
狂って壊れてしまえばいい
この世に救いは何処にもないの
謝っても
許してなんてあげないの
苦しんだ末に死ねばいいのよ
首を吊れ!
だれかが叫ぶ。けどだれが?
ナンダ解ったあたしの声か
そうよ今日
ビルの屋上から飛び降りて
あたしは天使さまになるの
*学校
さらさらと
リコーダー吹くおさげの子
聖者の行進祖母へ捧げる
厭らしい
おじさまの手から逃げ出すが
ポッケには掏ったブランド財布
ゆらゆらと
揺れるあの子のブランコが
ちぎれればいいとふと思う
みたことない
記号と単語ののたくった
問題用紙を破り捨てる
満点を
傲慢な顔で見せびらかす
あの子をすこし懲らしめてやろう
偏見に
汚染されてくわたしたち
いじめごっこはいつ終わるの?
*偏愛
大切なきみと
一緒にいたいから
頭部だけでもトランクに詰める
甘く光る
飛び散った血を啜り飲み
きみの一部を僕のものにする
すきなコの
電話の盗聴くり返し
やさしい声にウットリする
だいすきな
あたしの兄さんを奪った
女の顔をぐちゃぐちゃにする
きみ宛の
郵便物を盗み取り
差出人の名前を控える
こんなにも
あなたのことがすきなのに
どうして振り向いてくれないの?
*過食と拒食
すこし緩い
お洋服にベルト締め
当り前の顔し学校へゆく
知らぬ間に
尖った顎の痩せたコを
鏡に見つけ首をかしげる
折れそうな手で
鏡を撫でつぶやく
「だれがあたしを痩せさせたの」と
あたたかい
たべもの見ては吐きそうで
サプリメントをひとつ飲みこむ
苛立って
食べて食べてを繰り返し
ようやくあたしは正常に戻る
空っぽの胃壁に
異物を詰めこんで
吐いては詰めてをくり返す
もう私
なにも食べたくなんてない
1グラムだって肥りたくないの
豚のよに
丸々とした肉つまみ
切り落とそうと包丁を探る
*かなしきは
かなしきは
サナトリウムの兄さまの
望む聖母のふりする妾
かなしきは
妾を信用なさらない
酷いお人の邪気なき貌かな
かなしきは
堕天したいと嘯いて
さみしそうに笑う横顔
かなしきは
妹の地位に甘んじて
心死なせる少女の絶望
かなしきは
思い出にしか生きられず
破滅へ向かう妾そのもの
かなしきは
夢のなかでさえ背を向ける
非情なあなたの後ろ姿よ
*Girl named Alice
うさぎを追い
穴に飛び込みまっさかさま
楽しい地獄へどうぞWelcome!
短針を3に合わせて
電池を抜き
お茶会のための紅茶を淹れる
にやにやと笑って消える猫さんの
しっぽを掴んで
一緒に消えてみる
ひとくちで
小人や巨人に大変身!
そんなジュースを知りませんか?
ここは地獄
住人はみーんなキ印さ
あの人もおれも、きみだってそうさ
「Arrivederci!」
金切り声は誰の声?
ナルコレプシーのアリスよ眠れ
ハッとして
瞬きすればベッドのなか
夢だったのかしら? 人殺したのだけど。
*CUTTING-BABY
血に濡れた袖を捲りて
書を開き
Messiahの下に傍線を引く
腕に沈む
あまくゆがんだミルクいろの
リストカット痕にくちづけをする
「切らないで」
善意の言葉はいつだって
正しくって無責任なの
退屈な御婦人方よ
血みどろの
リストカット・ショーは如何か知らん
左腕
切れば切るほど胸に満ちる
この絶望をどうしたらいい?
学校のトイレに
篭って腕を切り
カッター片手に放心す我
青春を謳歌する
楽しげな少女たち
そのリストバンドの下には傷痕
知らぬうち
カツター切りつけほゝゑみぬ
痛む手首は血を流すけれど




