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大学編 第2話:「クリエイティブ・アーツ・プログラム」

第1巻 - 第2話 - [閲覧注意: MA26+]


[ナレーター:ある環境は、あなたに何を求めているかを率直に提示する。入り口に価格表を掲げ、「これがメンバーシップの対価であり、これが所属の条件だ」と。だが、もっと洗練された、巧妙な環境も存在する。そこでは、「所属」を「条件付き」ではなく「自ら勝ち取ったもの」だと感じさせることで、その対価を不可視にする。チェリー大学のクリエイティブ・アーツ・プログラムは、まさに後者だ。誰かが意図的に設計したわけではない。ただ、「条件付きの価値」によって形作られた誰かが、己の写し鏡としてその場所を作り上げ、それが文化となり、吸い込む空気となった。ここでは誰もが、それが空気の味だと思い込みながら、条件付きの自己価値を呼吸している。今日、リユラがそのプログラムに足を踏み入れる。サクランボ・ヒトミと正面から対峙する。そして、廊下での衝突が、ミヤカにある出会いをもたらす。ようこそ、クリエイティブ・アーツ・プログラムへ。自分自身も長年「演じられた温もり」を使いこなしてきた男が、50フィート先からその偽りを見抜くためにやってきたとも知らずに。]


第一部:オリエンテーション

オリエンテーション会場は、古い紙の匂いと新しいペンキの匂いが混じり合う講堂だった。歴史を重んじながら、常にその周囲をリノベーションし続ける教育機関特有の香りだ。


リユラは2列目に座り、部屋に入ってくる学生たちを観察(カタログ化)していた。自信に満ち溢れた者、自信がある振りをしている者、スマホに逃避する者。ジェレミー高校で学んだ「人が部屋に入ってくる時の挙動こそが、その人を最も雄弁に語る」という教訓が、ここでも彼の武器になっていた。


「またやってるな」隣に座ったジサツが言った。

「何を」

「観察だよ。部屋にいる全員を読み取らないと、自分の振る舞い方を決められない人間の目だ」ジサツは正確に指摘した。「安心しろ。俺も同じだ」


教職員が登壇し、「卓越性(Excellence)」という言葉を何度も繰り返した。そのたびに、リユラは室内の空気が張り詰めるのを感じた。


リユラの心の内: ジェレミー高校での合言葉は「生き残れ(Survive)」だった。だがここでは「卓越性」だ。この言葉は、まだ何も生み出していない学生たちの背筋を正させている。まだ誰も実力を見せていないのに、基準スタンダードだけが既に部屋を支配している。私は、ただ存在するよりも「卓越している」ことの方が安全だと理解して以来、ずっとこれを演じてきた。その対価がどれほど高いかを知っている。この部屋の誰もが、まだその代償に気づいていない。


第二部:プログラムの引力

最初の1週間、サクランボ・ヒトミという名前は、リユラが探さずとも向こうからやってきた。先輩たちの会話、教員のポートフォリオ紹介、カフェでの噂話。


それは、誰かがコミュニティ内で「美学の象徴」や「基準の代弁者」になった時に起きる現象だ。リユラはそのパターンを見逃さなかった。


最初のセミナー「ビジュアル・ナラティブ(視覚的物語)」。教授のタナカは鋭い審美眼を持つ人物だった。20分で1ページの漫画を描くという課題に対し、リユラは思考より先に手を動かした。描いたのは、門の前に立つ人物。過去を振り返りながら、まだ見ぬ前方を見据える姿。


放課後、タナカ教授はリユラを呼び止めた。

「これは『誠実』ね」教授は言った。「技術的には未熟だけど、あなたが何を感じているかが伝わってくる。それは技術よりも教えるのが難しいことよ。失わないで」

ジェレミー高校という文脈を抜きにして、ただの「1枚の絵」で自分を正確に見抜かれたことに、リユラは驚きを感じていた。


その直後、キャンパスで彼はついに、サクランボ・ヒトミと正面から対峙する。


ヒトミは、周囲の学生たちに「君は面白いね」という、相手を特別に感じさせる魔法のような注意力を向けていた。生存戦略としての「完璧な落ち着き」。彼はリユラと数秒間視線を合わせた。敵意でも温もりでもない、ただの「査定」の目。


「あいつだ」ジサツが囁いた。「お前を、計算すべき変数として見ていたぞ。気をつけろ」

「いつも気をつけてるよ」

「お前は、全員が逃げ出す方向に歩いていくタイプだろ。……褒め言葉だけどな」


第三部:ミヤカの出会い

2日目、ミヤカが到着した。彼女はリユラの顔を見るなり「より不確か(アンサーテイン)な顔になったわね。いい意味で」と言った。


二人がキャンパスを歩いている時、物理法則に従って衝突が起きた。ミヤカがぶつかった相手は、あの羽月サクラだった。


「ごめん! 17本も鉛筆が入ってる筆箱なんて初めて見たわ、重さでわかる!」サクラは笑った。

「16本よ。1本足りないから代わりを探してるの」ミヤカは答えた。

「私は羽月サクラ。文学部1年よ」

「ミヤカ。社会福祉学科1年。……あなた、急いで色んな場所に行き過ぎて、自分自身が追いついていない歩き方をしてるわね」


サクラは驚いたように目を見開き、そして大声で笑った。「ここ数週間で言われた中で、一番正確だわ! 私たち、友達になるべきよ。もう決めたから」


リユラは、二人が瞬時に「同類」として認識し合うのを、少し離れた場所から温かい気持ちで眺めていた。


第四部:最初の接触

その日の午後、芸術学部のコモンルーム。

リユラが自伝的漫画のネームを描いていると、ヒトミが向かいに座った。


「シコ君」ヒトミは言った。「タナカ先生が君の作品を『誠実だ』と言ったそうじゃないか。彼女がそんな風に褒めるのは珍しい」

彼はリユラの原稿を手に取った。門の前に立つ人物の絵。

「実に興味深い(Interesting)……。まだ形にはなっていないが、正しい方向に進めば、化けるかもしれない」


その言葉の選び方に、リユラの嗅覚が反応した。「面白い」でも「好き」でもなく、「興味深いが、まだ至らない」という含み。相手に「正しい方向」を仰がせ、自分の承認を求めさせる洗練されたテクニック。


「ワークショップをやっているんだ。非公式だが、君にも役立つと思う」ヒトミは微笑んだ。

リユラは、その微笑みの奥にある「管理された温もり」を見つめ返した。

「考えておきます」


ヒトミが去った後、リユラはヤカミラに電話した。

「会ったよ。……危なかった。60秒間、彼の承認が欲しいと思ってしまった。仕組みを知っている私ですら抗えないほど、彼の『人を特別に感じさせる力』は洗練されている」

「ハンサム以来の強敵だな」ヤカミラが言った。「どうするつもりだ?」

「ワークショップに行くよ。システムの内側に入って、その正体を見極めたい。そして、彼の目の前で『本物の誠実さ』をぶつけ続けて、彼がそれをどう処理するか見てやるんだ」


エピローグ:木曜日の夕方

パンさんのパン屋で、ミヤカはリユラにサクラから聞いた話を伝えた。

「サクランボ・ヒトミは、10歳の頃から妹のサクラを守るために、すべてを自分で引き受けてきたみたい。自分が『条件付きの価値』しか持てない環境で育ち、今は自分がその『条件』を課す側になることで、世界を支配しようとしている」


「支配か」リユラは黄色い星のヘアピンを髪に差し、赤い蝶ネクタイを整えた。それは武装ではなく、彼が彼であるための継続性の象徴だ。

「彼は、価値は条件付きだと学んでしまったんだ。そして、それ以外の世界を知らない人たちを集めて、自分の王国を作っている」


「救うつもり?」ミヤカが尋ねた。

「選択肢を見せるだけだよ。誰かが私にそうしてくれたように」


外では夜の光の中で桜が舞っていた。

新しい季節。誰も準備などできていない。だが、舞台は整った。


TO BE CONTINUED...

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