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ブラック企業に潰された俺が、異世界で‘’リライフ‘’する話~≪解析≫スキルがチートすぎる件~  作者: AI+


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【第七十四話】風の向こうへ

 森を抜けた瞬間、風が頬を撫でた。


 遺跡の調査を終え、リクたちは簡易拠点の方角へ向かっていた。

 背後には崩れた石造りの回廊、苔むした封印陣。そして、沈黙を取り戻した古き魔源体の残滓。


「……そろそろ、見えてくる頃だと思うけど」


 ミナが木々の隙間から空を見上げる。


「位置は合ってます。拠点は、この尾根の向こうに」


 リクは地図と魔素測定器を確認しながら答える。

 メイは何も言わず、歩を緩めることなく彼らの隣を進んでいた。無表情な横顔に、以前よりも確かな輪郭が感じられる。


 やがて、低く張り巡らされた結界の縁が見えてきた。

 あちこちに立てられた観測杭。簡易魔法障壁。そして小規模なテント群。――調査団本隊の拠点だった。


「……見つけた!」


 ミナが声を上げると、数名の団員が気づいて駆け寄ってきた。


「おい……! リク、ミナ! 無事だったか!」


 隊長もすぐに姿を見せた。数日の緊張を滲ませた顔が、ふっと緩む。


「怪我は? 生きててよかった……!」


「はい、こちら三人とも無事です。遺跡の魔源体反応は収束しました」


 リクが一歩前に出て報告する。敬語は、自然に口をついていた。


 隊長は息をつき、リクたちを順に見やったあと、静かに頷いた。


「詳しくは報告書を見せてもらうとして……よく戻ってきたな。本当に助かった」


「その、遺跡の中で色々ありました。でも、今は大丈夫です」


 ミナの言葉に、団員たちが安堵と驚きの混ざった表情を見せる。


「……メイ、と言ったか。お前も無事で何よりだ」


 「――はい」


 メイは短く答えただけだったが、隊長はそれで十分だと言わんばかりにうなずいた。


「さて――話を戻すが、調査団本隊としては、当初の目的地〈灰の渓谷〉への調査を再開する予定だ」


「〈風渡りの平原〉を抜けて、ですね」


 リクが応じると、隊長は苦笑を浮かべた。


「あのあたり、地形も開けてて移動には悪くないが……どうも“何か”が潜んでるっていう未確認報告がいくつか出ている。観測不能域、魔素干渉、幻聴……まあ、例のごとく妙な地帯だ」


「精霊信仰の痕跡もあるって、前に見た記録にありました。魔源体と無関係ではなさそうです」


 ミナが手帳をめくりながら言うと、隊長は頷いた。


「よし。じゃあ支度を整えろ。〈風渡りの平原〉を抜けるまでは、戦闘班・補助班ともに警戒を高めて進む。歩行隊列は分散しすぎるな。特に魔素異常の検知範囲をリク、お前に任せる」


「……はい、了解しました」


 その声には、以前よりも自信が宿っていた。


 


 数時間後――


 風の草原が、視界いっぱいに広がっていた。


 空は晴れ渡り、雲が高く流れていく。草は風に揺れ、まるで波のように大地を走っていた。


「ここが……〈風渡りの平原〉」


 リクが呟いた。


 十五名の調査団が、等間隔で隊列を組んで進む。

 それぞれの背には装備と希望と、そして少しの不安がある。


「地形、予測通り。だが……局所的に、風の流れが逆転している箇所がある」


 メイが魔素計を睨みながら言う。


「座標ズレも観測中。二地点間の距離が、測定と合わない。時空干渉の可能性あり」


「……やっぱり、ここも“普通の場所”じゃないか」


 ミナの声が、わずかに緊張を含んでいた。


 それでも、誰一人として歩みを止めようとはしなかった。


 


「リク、前方に丘。地形観測地点として適切かと」


 「うん、あそこで一度視野を取ろう」


 風が吹き抜ける。


 大地を渡る風。魔素と情報と、かつての記憶を乗せた風。


 その向こうに、何があるのか――リクたちは、まだ知らない。


 ただひとつ確かなのは、この風を越えた先に、次の“問い”が待っていることだけだった。

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