囮として①
「我々は国に奉仕するために徴兵されたのだ。これは決して罰ではなく、むしろ褒美であることを自覚しろ。」
魔道補助用杖を背中に背負い、胸ポケットに勲章をたくさんつけた、いかにも偉そうな男性が声を上げた。
ウィラスは内心、何度も何度も聞いたこのセリフに飽き飽きしていた。
『『『Yes,Sir!!』』』
「車に乗れ、移動する」
『『『Yes,Sir!!』』』
飽き飽きしながらも、同意を強要される。
単調な返事しか許されない、今の仕事が嫌いだ。
†
車に揺られ続けて大体1時間がたった。
ずっと同じ体勢ばかり続けていたものだから、お尻が痛い。
車内には鉄と油のにおいが充満している。
ほかの兵士は震えている。
今からの惨状を想像したら確かに震えは止まらない。
だが、こんな空気になれている自分が嫌いだ。
膝に魔道補助用杖を乗せ、足を肩幅くらい広げ、帽子が頭から落ちないように常に気を配った。
国旗が印刷された帽子が落ちたら国家への侮辱とし、その場で速攻で処刑される。
俺の同期も帽子を落とし、そして死んだ。
速攻で殺される今の職場が嫌いだ。
「降りろ。ついたぞ。」
上官がこちらに声をかけてきた。
ああ、終わりだ。
今日は、祈る側か祈られる側か、どちらだろうか。
†
作戦が説明された。
俺らが所属している隊、ドラゴ部隊は最前線での、遊撃し、後続の部隊が進軍しやすいように暴れる。
用はおとりだ。
暴れまわって、本来の任務を遂行するための部隊を隠せば良い。
捨て駒だ。
穏やかな死に方ができないのは確かだ。
辛い。
†
「配置につけ。」
上官の静かな声が聞こえる。
ああ、始まるのか。
「いよいよか、」
隣のやつが呟く。
「作戦の前に肉でも食っとけばよかったぜ」
「ああ、そうだな、一緒に生き残ってチキンでも食おうぜ、」
「ああ、そうだ―――」
何かが弾けた。
気づいたら隣のやつの頭が消えていた。
作戦の開始の合図なんてなかった。
どこからか叫び声が聞こえる。
動け動け動け...
自分の胸を叩き、動こうとする。
魔道補助用杖をローレディの姿勢で構え、奔る。
「うあ゛ーーーーッ」
誰かが叫んだ。
それだけで、状況を察する事が出来た。




