↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/32

第6話 遠征

「球人……お前はなんで全く眠そうじゃないんだ?」


現在時刻は朝5時。原野にとっては早い時刻ではない。


「野球部は朝3時があたりまえだったからな」


ただ、バレー部の面々には早い時刻のようで、死にそうな顔をしている。バスに乗ると、原野と運転手を除いた全員が眠ってしまった。ただ、原野はやることがあった。バレーボールのルールを覚えるということである。そのため、ルールブックを読んでいるのだが……


「難しすぎ……」


チームでボールを触っていいのは3回までで、3回以内に相手コートに返さなければならないことや、サーブ権が相手から自分に移ったら、ローテーションと呼ばれる時計回りにポジションを移動することや、ブロックは1回に含まないなどなど……


「まあ、やってるうちにわかるか」


そう言っているが、原野にルールを理解できる日はやってこない。


ーーーー


「ここが算橋先生の友人が監督をやってる高校かー」


朝5時に出発して着いたのは、岐阜県にある『高坂(たかさか)農林水産(のうりんすいさん)高校(こうこう)』である。


「着いたぞー」


朝7時だというのに、運転手と原野以外は熟睡している。結局、全員を起こすのに10分程かかってしまった。最後まで起きなかったのは歌川である。


「ここに来るのも、1年振りですね」


算橋先生は一切迷うことなく体育館へと歩いていく。


「原野くんを除く皆さんは、去年も来ているので知っていると思いますが、高坂農林水産高校はバレーボールとバスケットボールがとても強い高校です。去年、どちらの部も全国大会に出場しています。ですから、皆さんにとって良い経験になるでしょう」


算橋先生は眼鏡をクイっとあげる。


やがて、巨大な体育館が見えてくる。


「絶景かな〜絶景かな〜」「あっぱれあっぱれえぇ」


原野は自分に、気にしない気にしないと念じる。歌川や白混は騒いでいるが、他の4人はなんだか緊張しているようだ。なぜか、出場できない折田が最も緊張している。


原野は前日に、バレーボールシューズを買っているが、ユニフォームは当然間に合わなかった。そのため、原野のみ服装が違うのである。親善試合ということで、お咎め無しということになったらしい。こういったところは、算橋先生がしっかりと手を回している。


そして、葉央高校バレーボール部の面々は、巨大な体育館に入っていく。


ーーーー


原野の見た、高坂農林水産高校バレーボール部の第一印象は『でかい』である。身長189cmの原野が『でかい』というだけあって、全員の身長が2mを超えているのだ。


「さすが、入学条件に『身長』の項目を設けているだけはあるな」


道二はすっかり感心している。


「おーい、さいとーう」


あの2m軍団の中でも頭一つ抜けている長身の男が、原野らに向かって走ってくる。


「高山(たかやま)、久しぶりだな」


斎藤と高山は知り合いのようだ。


「なんだかんだあって1年振りかー。今年こそは、お前の初見殺しを防いでやる」


「それは無理だな。お前、また身長伸びたか?」


「うーん……今はたしか、2m34cmだったかなー」


「あんまり伸びてないな。たしか去年は2m33cmくらいだっけ?」


「そのくらいだったな。もう、身長は伸びないだろうと言われてな」


「そうか……」


「あの頃はもっと夢があったよ。ぐんぐん身長が伸びていたからな」


「県選抜のときから、すっかり変わったな」


「ああ。もう一度、味方としてバレーをしたかったよ」


道二とあれこれ話した高山は、2m軍団の元へ戻っていく。


「アイツは一体だれだ?なんだか親しいようだったが……」


「ああ、アイツは高山(たかやま)頂(いただき)で、中学生の頃の県選抜で一緒だったやつだ」


原野は、「ふーん」と言って特に気にも止めていない様子だ。


「さーて、アップでもしますか」


といっても、葉央高校バレーボール部のアップは、個人アップである。全員が同じアップを行うのは、自らの力を最大限に発揮できないという考えのためである。


ーーーー


葉央高校バレーボール部は、選手の自主性に任された部である。そのため、キャプテンの斎藤道二が、基本的には全てを仕切っている。そのため、スタメンも道二が全て決めているのだ。


「はい、これが今日のスタメンだ」


前衛

レフト:歌川伎舞和

センター:斎藤道二

ライト:原野球人

後衛

ライト:白混朱雀

センター:古寺僧治

レフト:手貫刀衛門


ここで、原野は素朴な疑問を覚える。


「なんで前衛はレフトが左、ライトが右にいるのに、後衛はレフトが右、ライトが左にいるんだ?」


「同じポジションの選手を対角線に配置することで、どちらか一方が常に前衛にいるようにするためだな」


「ふむ……同じポジションの奴が同時に前衛や後衛にいたら、スペースがなくなってしまうということか」


「まあ、そんな感じだ。それじゃあ、今日の作戦を伝える」


道二がそう言うと、一瞬にして空気が張り詰める。


「今日の相手は、全員の身長が2mを超えている。よって、ブロックが全く意味をなさないと推測される。だから、今日はブロックのことを忘れてくれ。あとはいつも通り、俺がなんとかする」


「「「「「「了解!」」」」」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。