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第27話 竜頭万

竜頭(りゅうがしら)万(ばん)


今や『万能人(パーフェクトマン)』や『自己完結型選手(ワンマンプレイヤー)』としてその名を全国に轟かせる選手である。


しかしそんな彼にも苦い過去が、いや、今の彼を創り上げた過去があった。


ーーーー


竜頭が小学校6年生の頃、彼はいじめに遭っていた。


理由は簡単


あまりにもで(・)き(・)す(・)ぎ(・)て(・)い(・)た(・)からである。


勉強も運動も成績は常にトップ、おまけにそれを他人に自慢しない謙虚さも相まって、多くの者の妬みや反感を買っていた。


しかし、靴を隠されたり筆箱を隠されたりといった「物を隠される行為」に対し、竜頭はなぜか異常に強かった。


持ち前の頭脳のおかげだろうか、隠された場所をピタリと当て、平然と振る舞うのである。


落書きや「死ね」などと書かれた手紙を送るといった行為に対しても、常にエタノールやシュレッダーを持ち歩く用意周到さで、なんなく無力化していた。


もちろん、いじめている側が不要物持ち込みを訴えるなんてことはできない。そんなことをすれば、悪事が一気に露呈してしまう。竜頭も犯人たちに対し、気づいているというサインを送っており、「いつでも言えるからな」といういじめっ子たちに対しての脅迫も時々行っていた。


しかし、事件は起きた。


竜頭の通っていた小学校の地域には、バレーボールクラブのようなものはなかった。小学校3年生の頃からバレーボールが好きだった彼は、放課後のグラウンドで毎日1人でバレーボールの練習をしていた。自分でトスを上げ、自分でスパイクを打ち、自分でレシーブをする。完全に独学であったにも関わらず、彼は理想的な、まるでお手本のようなプレーを身につけた。彼の天賦の才、類まれなるセンスのおかげか、プロの選手のビデオや本を見て、それを難なく身につけていくことができたのである。


いつものように放課後のグラウンドで練習をしていると、十数人の男子がやってきた。そして、リーダー格と見られる者が、一言


「お前……ムカつくんだよ」


その一言を皮切りに、壮絶な喧嘩が始まった。竜頭であれば、一対一なら歯牙にもかけない連中だが、数の力には勝てなかった。竜頭は立つのもやっとな程、ボコされていた。相手が武器を使ってこなかったのは、不幸中の幸いだったであろう。


そこに、一人の少年がやってきた。


「そんなことして、何が楽しいの?」


いたって正論。しかし、暴力の支配するこの場においては、正論など意味はない。竜頭をボコした連中は、標的を彼に向けた。


しかし、ものの数秒で、少年は彼らを片付けた。竜頭の目にも、何が起こっているのかわからなかった。ただ、さっきまで自分を殴り、蹴ってきた相手が、地面に倒れ伏しているのである。


「あ……ありがとう……」


「……」


竜頭の礼には反応せず、少年(救世主)は消えるように立ち去ったのである。


しかしその後、少年は学校に来なくなった。いじめの標的が彼に向いたのだ。竜頭のように無力化というわけにはいかなかったのである。


自分を助けてくれた恩人が、自分を助けたせいで不登校になる。この経験は、竜頭の性格を変えた。


他人に頼らず、全て自分で解決する


中学校に進学すると同時に、引っ越しをした。いじめに遭った地域の中学校に進学などできなかったのである。


中学校(新天地)に進学すると、竜頭は念願のバレーボール部に入部した。そこでは、今まで妬みや反感を買っていた才能が、竜頭をチームの救世主へと押し上げた。


そして竜頭は、チームを全国大会に連れて行く。そこで、その万能さを帝調高校のスカウトに評価され、帝調高校へと入学することになる。


そこで彼は才能に磨きをかけ、今ではプロ注目の選手になったのである。


しかし、竜頭は今でも彼のことを考えるのである。


忍田(少年)は今何をしているのだろうかと。


ーーーー


(他人に頼るのは俺の性分じゃねえだろうが)


「任せろォォ!」


天井から落ちてきた渋川のサーブに対し、1人で立ち向かう。


不規則に変化するボールに対し、自らも動きながらなんとか対応していく。そして、渋川のサーブに対し、ついにまともなレシーブを見せる。


「ウオォッ!」


柿野原4−2帝調


竜頭の渾身のスパイクが決まり、やっと帝調に点が入る。


帝調ベンチでは、1人の男が腰を下ろした。それを見て、竜頭も一息つく。


(出てきてくれれば良かったのにな)


渋川は表情を一切変えず、そんなことを考える。


「ドンマイダァ!渋川!」


大南(パイナポー元帥)は相変わらず元気である。


竜頭は、大南と渋川のコンビに若干苦戦しながら、第1セットは進んでいくのだった。

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