第22話 力と高さ
試合を終え、特にやることがなくなった斎藤道二は、とある試合会場へと足を運んでいた。
そう、高坂農林水産高校の初戦を観に行くためである。
(たしか、アイツの初戦の相手は剋谷高校だったよな……)
身長234cmの巨人で、斎藤とは中学愛知県選抜でともに戦った男、高山頂
初戦は軽く突破するだろうと、斎藤は考えていた。
そう、剋谷高校との試合が決まるまでは
初戦の相手が剋谷高校だとわかった時点で、斎藤は思った。
高山にとっては分の悪い戦いになると
そしてその予想は的中する。
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ドオォォォン
斎藤が会場に到着した時には、既に試合が始まっていた。そして、ある男が床に仰向けになって倒れていた。先程の音は、ある男の倒れた音である。
(あれは高山か……こうなるとはわかっていたが……)
高坂16−20剋谷
高山は立ち上がり、相手コートを一瞥した。正確には、高山を倒した男を一瞥したのである。
その男の名は
熊力山雄
彼の特長を一言で表現するならば、『筋肉の塊』である。
ズドォォォン
高坂17−20剋谷
高山のスパイクが決まる。いくら『筋肉の塊』と言えども、高山の高度4mから放たれるスパイクには触れることはできないようだ。
ドガァァァン
高坂17−21剋谷
熊力が高山のブロックをぶち破る。
今まで、その高さから圧倒的存在感を発揮し、マウンテンブロッカーとも称され、スパイクをためらわせてきた男にとって、ブロックをぶち破られるということは、屈辱であった。
今まで、そのパワーから圧倒的存在感をし、ベアーパワーとも称され、ブロックをためらわせてきた男にとって、一歩も引かずに勝負してきた男は、高山が初めてだった。
そして、圧倒的な高さもしくは力を武器に、アタックとブロックを行って場を制圧してきたがために、アタックしか決まらない両者は、互いをこう思うようになった。
好敵手だと
それをチームメイトもわかってか、トスを2人にしか上げないようになっていた。
高さと力の真っ向勝負。しかし、高坂農林水産高校にはこの状況は致命的であった。
なぜなら、高山の後ろには決してボールが飛ばないという考えが染み付いていたからだ。
剋谷高校にとっては、特に問題はなかった。
なぜなら、熊力の後ろにボールが飛ぶという考えがあったからだ。
『熊力の上は越されることがある』という考えを剋谷高校は持っていたからだ。
それはまさに、経験の差であった。
高山の後ろにボールが飛んだことがない高坂と、熊力の後ろにボールが飛ぶことがある剋谷の、決定的な差であった。
故に、剋谷は高山のスパイクを何本か拾い、熊力のスパイクに繋げ、それが点差となって現れている。
逆に、高山の後ろにボールが飛んだことがない高坂は、熊力の高山をぶち抜くスパイクを、拾えないでいた。
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第1セット
高坂21−25剋谷
第1セットは、剋谷の勝利であった。




