第20話 葉央高校VS七階堂商業高校
春高本戦一回戦
葉央高校VS七階堂商業高校
試合開始前から、会場全体は異様な雰囲気に包まれていた。
「本当に150km/hのサーブを打つのか?」
「サーブがものすごく曲がるらしいぞ」
「ドーピングしてるんじゃないの?」
「この動画見てみろよ」
会場は、敵味方関係なく原野の話題でもちきりだった。
ー試合開始ー
第1セット
「いいか、気持ちだ!絶対に気持ちでは負けるなよ!」
七階堂商業高校の木村監督が、選手たちに叱咤激励する。
「根性論が役に立つのは実力が近いときだけだ。それに、精神力ならウチの古寺が最強に決まってんだろーが」
原野はつぶやく。その目は無機質そのものであった。これから始まる作業を予感させている。古寺は、うんうんとうなずいている。
「失敗を恐れるんじゃないぞ!」
木村監督はサーブを打つ選手に声をかける。
バシャッ
葉央1−0七階堂
サーブがネットにかかり、葉央高校に1点が入る。もちろん、サーブ権も葉央高校に移る。
「ナイストライだぞー!」
木村監督は相変わらず誰よりも声を出している。
ピンチサーバーとして、原野球人が投入される。
「蹂躪を始めようか」
バゴオォォォォン
葉央2−0七階堂
「ヒュウッ」と原野は息を吐く。球速表示は150km/h。もちろん、七階堂商業高校側のメンバーは何もできず、呆然とするしかなかった。
原野は息を吸う。それは容赦ない蹂躪の前奏曲を表していた。
バゴオォォォォン
葉央3−0七階堂
「ヒュウッ」た原野は息を吐く。その吐いた息には哀れみが含まれている。
バゴオォォォォン
葉央4−0七階堂
150km/hのサーブが、徐々に会場を支配し始め……
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第1セット
葉王25ー0七階道
「………………………」
第1セットが終わる頃には、熱血漢と呼ばれていた木村監督も含め、誰もが黙っていた。静寂こそが、原野球人のホームフィールドである。
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第2セット
全く覇気のなくなった七階道高校は、あっという間にサーブ権を献上してしまう。
葉王1―0七階道
もちろん原野が登場、再び蹂躪の時間が始まろうとしていた……が、突如ブーイングが巻き起こる。
「高校生なら、もっと正々堂々勝負しろ〜!」
「高校生らしくないぞー!」
「卑怯者ー!」
原野球人のあまりの無双っぷりに、清々しい高校生の戦いをみたい観衆が怒り出したのである。
「そんな安い挑発に乗るようなヤワな精神力だと思うなよ?」
しかし、原野の怒りは溜まっていた。
そう、身勝手極まりない観衆に対して
いつもの、「蹂躪を開始する」とは違った言葉がつぶやかれる。そこにはいつもにはない、殺気が少し含まれていた。
「屠るぞ」




