第17話 メディア
「なんてこった……」
道二は、朝のニュース番組や新聞を確認して落胆した。
「球人がものすごく注目されてるじゃねーか」
あたりまえである。愛知県の平虎上高校以外の全ての高校に棄権せざるを得ないと判断させた異常な人物が、注目されないわけがない。
道二は深いため息をつく。が、その直後、不気味な笑みを浮かべる。
「こうなったら……徹底的にやってやる……」
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「来たぞー!」
原野が葉央高校の正門に向かうと、張り込んでいたであろう記者たちが一斉に原野に殺到する。その数はおよそ20人。ただ、原野の姿を見た記者たちは、驚きの表情を浮かべる。
「これは……明日の新聞のトップ……いや、号外だ!」
ある記者が思わず叫ぶ。なぜなら……
「俺、骨折してるんで、道を開けてもらえますか?」
道を塞いでいた記者たちがそそくさと道を開ける。原野は、脚にギプスを付け、松葉杖をついて登場したのである。
「怪我人の俺を取材しても、何も出ないですよ」
原野はさっさと正門を通過し、校舎に入っていく。動揺する記者たちをあとにして。
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1時間前……
「どうした?」
道二から電話がかかってきたのである。
「球人、今からギプスを届けに行くから、まだ家にいてくれ。」
「ギプス?俺は骨折してないぞ」
「球人、今やお前は日本中から注目を浴びているんだ。だから、それを逆手に取ってお前が骨折しているという偽の情報を日本中に報道してもらうんだ」
原野はすぐな理解する。
「なるほど。俺が春高に出れないかもという情報を与えるだけでも、かなりの揺さぶりになるな」
「そうだ。あとは、お前のサーブがこれ以上メディアに露出しないためだ」
「わかった。車の手配はしてくれるんだな?」
「もちろん、それも想定内だ。じゃあ、すぐ行くからな」
電話が切れる。その10分後、道二が迎えに来る。ちなみに、なかなかの高級車である。
「ギプスと松葉杖だ」
「これをつけていけばいいんだな?」
「そうだ」
原野はギプスをつけ、車に乗り込む。
「このことは誰にも言うなよ?俺とお前だけの秘密にしておけよ?」
「そんなに念を押さなくても大丈夫だ。敵を騙すには味方からとよく言うしな」
「そういうことだ」
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「原野!大丈夫か?」
教室に着いた原野は、そこでも大注目される。ある意味記者以上である。
「ああ。大丈夫だ」
(クラスメートを騙すのはあまり気分の良いことではないな……)
心労が溜まってしまう原野だった。
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その後も、原野は骨折を演じ続け、かれこれ1ヶ月が経過し、これ以上の骨折は不自然ということで、『偽骨折』は終了したのである。




