第16話 未知の領域
「やっと温まってきたか」
原野は久しぶりの感覚を楽しんでいた。本気のサーブをある程度打ったため、体が熱を帯びてきているのである。
原野は本来スロースターターである。ただ、今まで戦ってきた相手との実力差のために、誰もが原野はスロースターターであるとは思いもしなかったのである。つまり……
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第2セットは葉央高校のサーブで始まるため、最初から原野がサーブを打とうということになった。平虎上高校が本気で完封しにくると道二が予想したからである。
「蹂躪を始めようか」
原野はつぶやく。
バゴオォォォォォォン
葉央1ー0平虎上
「ヒュウッ」
原野の息を吐く音がコートを支配する。
「?」
会場の誰もが疑問を持った。
球速表示が158km/hと表示されているのだ。
「第2ギアといったところか」
スロースターターである原野は、当然ながら体が温まると能力が上昇する。すなわち、ただでさえ規格外の能力を持つ原野が、試合の後半になるにつれどんどん強化されていくということである。
バゴオォォォォォォン
葉央2ー0平虎上
球速表示は159km/h。誰一人として反応できない。
スパァン
葉央3ー0平虎上
球速表示は115km/h。ただ、先程までとはボールの軌道が全く違った。厳密には、変化のキレと量が比べ物にならない程向上しているため、全く違う軌道に見えるだけである。
バゴオォォォォォォン
葉央4ー0平虎上
球速表示は158km/h。原野は、先程までとは別人のようになっていた。まるで、「愛知県の絶対王者など俺からすれば大したことはない」と言わんばかりの表情と雰囲気である。
「これは……どうすればいいんだ……」
平虎上高校の監督も、完全に諦めモードに入っている。選手たちは言うまでもない。
バゴオォォォォォォン
葉央5ー0平虎上
球速表示は158km/h。無慈悲なる原野のサーブは、選手を、試合を、会場を、完全に支配していた。この試合の支配者は、表情一つ変えずに、淡々と、誰一人として抗えないサーブを打ちこんでいき……
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第2セットも、原野はサーブによって平虎上高校を蹂躪し、葉央高校の勝利となり、葉央高校の春高本戦出場が決まったのだった。




