第14話 予選急展開
「うーむ……」
道二は悩んでいた。
「早くも原野のサーブがネット上で公開されているなぁ……」
1回戦は原野の大活躍のおかげで勝った葉央高校。しかし、原野のサーブが公開されてしまったのである。
「ま、手抜きサーブくらい見せたってなんにもならないか」
絶対王者、平虎上高校には本気を出させる予定である。それまであと3試合を手抜きで勝たなければならない。
「アレの使用も決勝戦から解禁として、あとは……」
原野のサーブの動画が拡散しないよう、祈るだけである。
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いつものように原野のサーブをレシーブする練習をしていたところ、算橋先生が道二を呼び出した。
「悪いしらせじゃなきゃいいが……」
道二は難しい顔をして算橋先生の話を聞きに行く。
「斎藤くん、落ち着いて聞いてください」
算橋先生がやけに改まった雰囲気で話す。
「平虎上高校以外の全ての高校が棄権しました」
「……はあ!?」
「これは当然ながら前例のない事態です。理由はおそらくですが、原野くんのサーブでしょう」
「あまりの速さに骨折でもするんじゃないかってビビったんでしょうね」
「あと、石関高校の人たちが原野くんのサーブを他校に言い回ったそうです」
「そうですか……」
道二はかなり気落ちする。できれば今後のためにも、周知は控えてもらいたかった。
「日程が大幅に変更されて次の日曜日に決勝戦があるそうです」
「ん?……それって…………」
道二は気づいてしまった。
「原野をあと一回見せれば全国大会ということか……!」
こんなにも原野が他人に見らることなく全国大会に出場できるとは、道二は思ってもいなかった。もっとも、まだ全国大会出場は決まっていないのだが。
「それでは、あとは任せましたよ」
そう言うと算橋先生は小走りで職員室の方へと向かっていく。
道二は原野に話しかける。
「次の試合は日曜日だ。アレも使って確実に相手コートに落とせ」
ドアノブを捻るように手首を捻りながら言う。
「もう使っていいのか?」
「ああ。お前のサーブにビビって平虎上高校以外の全ての高校が棄権したせいで次が決勝だからな」
「あの程度でビビるとは、愛知県のレベルも大したことないんだな」
「いや……」
140km/hのサーブなんて、プロでも打てないのにと思う道二であった。
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「原野、今日は本当に頼むぞ」
日曜日、試合当日となって気合いの入った道二が原野の左肩を軽く叩く。
「本当に決勝なんだな?」
「間違いない。大会組織委員会に何度も問い合わせたからな」
「じゃー遠慮なくやっちゃいますか」
原野は右肩をぐるぐる回す。
愛知県予選決勝、原野の力が解放される。
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葉央高校VS平虎上高校
平虎上高校のサーブで試合が始まる。
フワッ
誰が見ても強烈なサーブを、いともたやすく完璧なレシーブをする。球速表示は107km/h。
道二が相手コートに背を向け、ボールの落下に合わせて跳ぶ。
スパァン
葉央1ー0平虎上
トスを上げると見せかけ、誰も反応できない背面ツーアタックを決める。気合いが入っているのか、いつもよりもかなりキレがある。
「原野、出番だ」
サーブ権が葉央高校に移り、ピンチサーバーとして原野球人が登場する。
「本気でいいんだな?」
バゴオォォォォォン
ヒュウッ
原野の息を吐く音が、静まり返った会場に響き渡る。
葉央2ー0平虎上
平虎上高校の面々が目を見開く。まるでこんなのデータになかったと言わんばかりの表情。球速表示は150km/h。
「ちょっと嫌な感じだな」
原野は薄々感づいていた。相手が反応しているということに。
バゴオォォォォォン
葉央3ー0平虎上
原野は確信した。直球を続けていればまぐれでも一回はレシーブされると。それだけ原野のサーブを対策してきたということだ。
「本当にアレを使ってもいいんだな?」
原野は道二に尋ねる。
「やむを得ん」
原野はニヤリと笑う。
「完全なる蹂躪というものを見せてあげよう」




