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第13話 無双開始

原野はいつものようにネットに対して横を向いて構える。そして、ボールを真上に投げ上げると同時に左足を上げ、ボールの落ちてくるタイミングに合わせて左足をエンドラインの手前につく。身体をひねっていき、手を振り下ろし、ボールの上部を軽めに叩く。


バゴオォォォォン


葉央1ー1石関


ボールは相手コートに突き刺さり、会場全体が静まり返る。


ヒュウッ


原野の息を吐く音が響く。会場にいる誰もが、何が起きたのかわからない様子である。


「『ォ』が1つ少ないな」


球速表示は140km/h。葉央高校バレー部のメンバーのみ、平然としている。


バゴオォォォォン


葉央2ー1石関


原野は、顔色1つ変えずサーブを打ち込む。石関高校側のコートに立つ6人は、1歩も動くことができない。監督さえも、ア然としていた。球速表示は141km/h。原野はチッと舌打ちをする。


「1km/h速いか」


バゴオォォォォン


葉央3ー1石関


球速表示は140km/h。石関高校など原野の眼中になかった。所(・)詮(・)愛(・)知(・)県(・)ベ(・)ス(・)ト(・)4(・)である。甲子園で全試合完全試合を成し遂げた男にとっては、たとえ競技が違えども、取るに足らない相手である。


バゴオォォォォン


葉央4ー1石関


バゴオォォォォン


葉央5ー1石関


バゴオォォォォン


葉央6ー1石関


バゴオォォォォン


葉央7ー1石関


……


原野は、容赦なくサーブを打ち込んでいき、石関高校は誰1人としてボールに触れることすらできず、第1セットは葉央高校が獲得した。原野は、2球目以降は全球140km/hでスピードガンを固定した。


ーーーー


「……」


石関高校ベンチでは、誰1人として声を発することができないでいた。いきなり出てきて試合を完全に支配、いや、石関高校を蹂躙したあの男のせいである。


石関高校バレーボール部関係者は、絶望に満ちていた。それは、観客席の石関高校の生徒たちやOBたちからもつたわってくる。 


コートの中から、外から、勝てるわけがないという雰囲気が石関高校を襲う。


ふと、石関高校の誰かが呟いた。


「勝てるわけがない」


ーーーー


第2セットが開始された。


石関高校のサーブから始まるが、選手全員に全く覇気がない。


フワッ


難なくレシーブし、道二がまたも背面ツーアタックを決める。


葉央1ー0石関


サーブ権が葉央高校に移る。


バゴオォォォォン


葉央2ー0石関


するとついに、観客席の方で動きがあった。カメラで原野のサーブを撮影する者が現れたのである。道二がチッと舌打ちをする。


「加工だと思ってくれる人が多いことを祈るしかないか」


バゴオォォォォン


葉央3ー0石関


バゴオォォォォン


葉央4ー0石関


バゴオォォォォン


葉央5ー0石関


……


「もう終わりか?」


第2セットも原野が全球140km/hのサーブを打ち込み、石関高校を蹂躙した。石関高校の生徒たちは、最後まで原野のサーブに指一本触れることすらできず、終わりごろには無気力の塊と化していた。監督も例外ではなかった。


こうして、原野球人にとって初の公式戦は、単調な原野の完封で勝利を収めたのだった。

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