第12話 予選開幕
「おいおいマジかよ……」
抽選の結果、葉央高校は明日試合となってしまったのである。しかも、明日の対戦相手がそこそこ強い高校で、さらに、初戦なのである。
算橋先生は早くも連絡を始める。こういうことに関しては、かなりデキる先生なのである。
「では、帰りますか」
算橋先生は全く動じていない。それどころか、明日試合になることを予想していたかのような雰囲気が漂っている。
「明日は土曜日か……」
道二にはある懸念があった。予選はテレビで放送されるとはいえ、テレビ局の都合上深夜に放送される。そのため、原野のサーブが露見するとはあまり考えてはいなかった。注目を浴びるのはそこまで早くないと考えていた。しかし、観客席に人がたくさん入ると話は変わってくる。スマホで撮影され、ネット上で拡散されると、あっという間に原野のサーブが全国に周知されてしまう。それを見た名だたる強豪校が、対策を講じないわけがない。そうなると、日本一は遠ざかってしまう。なので、注目の集まりやすい初戦はなんとしても避けたかった。
「さーて、ここが腕の見せどころってわけか」
元中学校愛知県選抜の正セッターの斎藤道二は、昔からこうであった。逆境をいかに乗り越えていくか。それを考え、実行することが好きでたまらなかった。だからこそ、バレーボールでは無名の葉央高校に入学したのである。そして全国大会出場を実現しようとした。自らの腕前で。
(最善は原野を使わずに勝つことだが…)
そうはいかないだろう。なにしろ愛知県には、絶対王者が存在するからだ。
ーーその名も、平虎上高校
愛知県においてはここ10年無敗を誇る愛知県最強の高校である。目立った選手はいない。全員の総合力で勝つチームである。
野球の葉央高校とバレーボールの平虎上高校
愛知県においてこの2校はとても有名な高校なのだ。
(まあ、原野の力加減と秘策次第か……)
原野に頼っている以上、原野次第で試合の勝敗は決まる。
(原野、頑張ってくれよ)
ーーーー
ーー試合当日
葉央高校バレーボール部全員は、かなり大きな体育館に来ていた。テレビカメラもあり、土曜日ということもあってたくさんの人が観戦に来ていた。
原野のユニフォームやメンバー登録もなんとか試合に間に合い、問題なく試合に出場できる。
葉央高校の初戦の試合相手は毎年県ベスト4には入る強豪校、石関高校。
「球人、今日は絶対に本気を出すなよ」
「アレも使っちゃダメか?」
「あ、た、り、ま、え」
アップも終わり、いよいよ試合開始である。ちなみに、今年から全国の予選全試合がテレビ放送されるため、全国の予選全試合が2セット先取で行われる。ちなみに、本戦は全試合3セット先取ということになっているが、これは大会組織委員会とテレビ局でかなり揉めた末に、大会組織委員会がテレビ局を押しきる形で決まったことである。
葉央高校VS石関高校
第1セットは葉央高校のサーブから始まる。
手貫が抜刀サーブでボールに強い回転をかけて打ち上げる。打ち上げられたボールは、かけられた回転によってスライスしていく。
「「「「「「あ」」」」」」
回転が強すぎたためか、ボールがスライスしすぎてアウトになる。
葉央0ー1石関
サーブ権が石関高校に移る。鋭いサーブが放たれる。が、それは観客席から見ている人からすればの話である。そのサーブの球速表示は100km/h。原野のサーブとの球速差は50km/h。
ーー遅すぎるーー
フワッ
音のない、完璧なレシーブ。道二が相手コートに背を向けて跳び、トスを上…
スパァン
会場にいる誰もが目を疑った。道二が、トスを上げると見せかけ、背面アタックを決めたのである。
初見では絶対防げない背面ツーアタック。これは、道二が中学生の頃から使っており、初見での成功率は100%である。2回目以降の成功率は保証されていない。故に、『初見殺し』
さらに、1セットにつき必ず1度は決まる必殺技である。
サーブ権が葉央高校に移る。
「球人、出番だ」
ピンチサーバーとして原野球人が登場する。
「さーて」
原野はボールを受け取り、誰にも聞こえない小さな声で呟く。
「蹂躙を始めようか」




