第11話 春高予選に向け
ボォン
特訓を始めて1ヶ月、原野のサーブを各人毎日50球以上受け続けた葉央高校バレー部の面々は、ついに原野のサーブをまともにレシーブできるようになっていた。最初のうちはボールに触れることすらままならなかったが、やっているうちに平然とレシーブできるようになっていた。
「それでは、今後の予定を通達する。もうすぐ春高の予選が始まるのは知ってるな?」
道二が葉央高校バレー部の面々に言う。全員うなずく。
「俺たちは日本一になることを目標にしてきた。そして今年は球人の加入によってそれは確実となった」
自信満々てある。
「むしろ、原野球人がいるのに負けるほうが難しいだろ」
(俺に期待するのは構わないが、さすがに過信しすぎだろ)
「なにか秘策を用意してくれているみたいだし」
「秘策と言うよりはピッチャーならできて当たり前のことなんだが」
原野はあきれているが、バレーボールのサーブにおいてこれができる者はほとんどと言っていいほどいない。
「それと、今年から春高の予選の日程が全国統一になって、予選の全試合が深夜放送されるらしい」
「「「「「え!?」」」」」
原野と道二以外の5人が驚きの声をあげる。
「それは想定外だったな」
原野は道二の発言の真意を理解する。
「ああ。全国大会の前に原野のサーブがお披露目されてしまうとは思ってもいなかった」
道二はかなり残念そうにしている。
「まあ、予選で手を抜けば良いだけの話だ。140km/hくらいなら見せても問題ないだろ」
その場にいた全員が苦笑する。手抜きで全国大会に出場できるという現実を、目の前にいる男が表しているからだ。
「これは急遽決まったことで、俺は今から抽選会に行ってくる」
道二以外の全員の頭の上に?マークが出現する。
「もしかしたら明日、試合になるかもしれないから、今日は早く帰って休んでくれ。抽選の結果は連絡するから大丈夫だ」
未だに頭上の?マークは消えない。
「全国の予選が全試合テレビで放送されるわけだから、早めに予選をやらないといけない、大人の事情らしい。俺はもう行かないといけないから、また連絡する」
そう言うと道二は颯爽と去っていく。
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一方そのころ、金計大喜はある人物と電話をしていた。
「まさかこんなに早く動いてくれるとは思ってもいなかったですよ」
「あんな動画を見せられてしまっては、強権発動しないほうがおかしいですよ。で、なにか見返りとしての要求はありますか?」
「いえいえ。私は旧友として当然のことをしたまでですよ」
「そう言っていただけるとこちらとしてもありがたい」
「では、せいぜい予選で負けないよう、頑張りますよ。まあ、頑張るのは選手たちですが」
「本当に予選敗退とかやめてくださいよ?」
「まあ、そうなったらそうなったで次の策は用意してありますよ」
そう言って金計大喜はある人物との電話を終えたのだった。




