第27話 華麗なる交渉(強制)
ギルドマスターであるオルトは目の前の人物…エレノアが薄く笑っているのを見て内心生きた心地がしなかった……。
「…何かな?私の顔に何かおかしな点でも?」
薄く笑っているその顔が怖いですとも言えずに黙っているオルトだったがそうしている訳にもいかないと思いきって本題を切り出す。
「エレノア軍団長、貴女は私を処刑しに来たのでは無いと仰りましたが…では何故貴方ほどの人がこの街へいらしたのですか?」
どこからか取り出したティーセットで紅茶を淹れはじめたエレノアは口を開く。
「…そうですね、…まず最初に私はもう軍団長ではありません。魔族の王であるルシウス陛下と戦闘になりましたので…まぁ所謂反逆者ですかね」
エレノアの言葉に驚くオルトだったがエレノアがカップを差し出して来たので受けとる。
「…美味しい」
「それは良かったです」
エレノアが目を閉じて紅茶を味わっているのでオルトは黙って自分の紅茶を飲む。
「………」
「………」
「さっきの反逆、というのは本当の話ですか?本当だとしたらエレノア団長程の人が何故?」
薄い笑みを崩さないエレノアがゆっくりと口を開く。
「…私は昔からあの魔王を殺そうと思っていましたよ?…アルデバラン、あなたは『ノード平野の惨劇』を知っていますか??」
ノード平野の惨劇…たしか魔王軍の将軍が反逆の罪で包囲された後、その場全ての人を残らず殺し尽くしたっていう…
「学校で習った程度ですけれど…」
エレノアはそれに頷く。
「私もその場にいたのです。当時最強の将軍と言われていた親友…リーニア=スカーレットと共に」
驚くオルトだったが更にエレノアは続ける。
「学校では一方的な虐殺だった、反逆者は多大な犠牲を払い魔王陛下が討ち取ったと教えているのは知っています………ですが…」
表情を変えること無く薄い笑みを浮かべていたエレノアだが彼女から一瞬だけ膨れ上がった殺気にオルトが身を縮める。
「…すみません、当時の出来事を思い出すだけでもこの有り様なのです」
それから暫くエレノアから語られた真実にオルトは呆然としていた。
「…という訳で私もお尋ね者です。暫くはこの街に潜伏しようと思いあなたに助力を請いに来たのではすよ」
…助力を請いにというか強制ですよね??と、言える訳も無いのだがそう考えていたオルトにエレノアは一言…
「私が居ればあなたに迫る追手は手を出せないと思いますよ?なんせこれでも実力はありますから」
ん?
「それは、エレノア団長に味方すれば貴女が俺を助けてくれる…ということですか!?」
「そうなりますね、今なら二人ドラゴンレイスもついてきますよ。私でも戦えば無事では済まないレベルの二人です」
これで…追われる事が無くなるのか…!
オルトは人族からすれば強者だが魔族からすれば圧倒的強者とは言えない程度の実力…魔族に集団で囲まれれば普通に殺されてしまうのだ。
だがエレノアが居ればまず間違いなくその辺の魔族では太刀打ち出来ない。そんなエレノアが守護してくれるというのだ、これ以上ない条件である。
「是非!ぜひお願いします!俺に出来ることであれば何でもやりますので!」
オルトがそう言った瞬間、エレノアはオルトに悟られないように笑みを深めた。
「決まりですね、では早速。まずは家を用意して下さい、4人程が住める規模の家が良いですね。次にリストを作りますからリストにある品の調達、周辺の情報を収集して報告、私の信頼している部下を集めますのでそちらとも連携して下さい。…それとあなたは少し怠けているようですね?私が鍛えますから明日から夜は時間を開けておくように。良いですね?」
次々と出てくる要求だったがオルトは頷いていたが最後に出た鍛える、という部分で自身の勘が"やめろ!断るんだ"と訴えた様な気がしたが拒否権は無いので頷く。
エレノアに無理ですと言ったとして実力は天と地程も違うのだから当然である。
「…よろしい。では暫くは"春風亭"という宿に滞在していますので家やその他の案件で何かあればそこへ知らせを送って下さい」
立ち上がったエレノアは扉を開いて出ていこうとしたが、不意に振り返ると
「…フィリアに変な依頼を押し付けないように。あなたが今回出した依頼でフィリアは深い傷を負いました。今回は私達もフィリアに再会出来たので我慢はしますが…次に何かあった場合…少なくとも3人は暴れるでしょうね。…それを忘れないように」
"フィリアの様子と今回のあらましをしっかり把握しておくように"
と残してエレノアは去っていった。
エレノアが去った後、オルトは緊張が途切れてソファーへと深く腰を下ろす。
「まさかエレノア軍団長が来るなんて…俺の周りは一体どうなってるんだ……?」
だが気になる事を言っていた。フィリアが深手を負った?あの最強と言われた黒騎士が?
今日は夜も遅いから明日フィリアを訪ねてみるか…




