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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
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第25話 黒騎士、暴走する


『……………ユルさナい…』


ユラリと立ち上がったフィリアは逢魔を引きずりながらルシウスに近づく。


「…なに…?貴様…まさか」


ボタボタと血を垂れ流しながら逢魔を引きずるフィリアを見てルシウスは顔をしかめる。


「執念で動くか…ならば存分に殺しあえ…行け!」


ルシウスの合図で周囲にいた影が一斉にフィリアへと飛びかかるが…


『…じゃマを……スルなァァァァァァ!!!』


最初に飛び出してきた影の剣を兜で受け影の顔を掴むと力任せに地面へと叩きつけ、次に背後から来た影を逢魔で両断するフィリア。


振り抜いた逢魔を力任せに引き戻しさらに近づいてきた影2人も両断しルシウス目掛けて跳躍するフィリアに魔術を放つルシウスだが…フィリアはそんなものは関係ないとでもいうかのように逢魔を振り上げてルシウスに斬りかかり剣で受けたルシウスごと物凄い勢いで近くの岩へと激突する。


「…ぬぅ!?馬鹿な!どこにこの様な力が…!」


『殺ス…コロす…コロセ殺すコロ……!!』


逢魔でルシウスの剣を抑え、反対の腕でルシウスの首を掴むフィリアにルシウスは得体のしれない何かを感じて咄嗟に叫ぶ


「こいつに止めを刺せ!これは命令だ!」


ルシウスの声に反応してベルがレーヴァンティンを構えフィリアへと駆け出すが…それと同時にフィリアが掴んでいたルシウスごとベルに向かって走り出す。


「ぐぬ…!?離せぇぇぇ!!」


ルシウスはフィリアへ向けてダークランスを連続して放ち全てがフィリアを貫くが尚も止まらぬフィリアに驚く。


『おまえサエイナケレバ…!』


フィリアはルシウスをベルに向かって投げつけ、こちらに向かってきていたベルとルシウスは吹き飛ばされ岩壁へと叩きつけられた。


『…!?』「ぐは!?」


フィリアは動けないルシウスとベルに向かってゆっくりと逢魔を振りかぶり……


『ケシトベ…!!『ダークネスブリンガー』』


「やめな!!」


レーヴァンティンの魔力刃よりも更に禍々しい一撃を動けない二人に放とうとしたが、割り込んできたエマのブラッディスキレットで剣の軌道をずらされた。


二人から逸れたダークネスブリンガーは岩壁を丸々削りとって消滅すしたがすぐにフィリアは逢魔に魔力を込め始める…だが逢魔は魔力を込める度に刀身が崩壊を始め…崩壊していく逢魔は悲鳴にも似た唸り声を上げて魔力を渦巻かせていく。


『キョウスケ!拘束して!あれ以上撃ったら彼女死ぬよ!』

「わ、わかった!『光輝縛鎖』」


キョウスケの放った魔術でフィリアの足元から無数の光輝く鎖が飛び出しフィリアを完全に拘束する。


『グ…ハナセェェェ…………!』


「…まずい。長くは拘束できない…!!おい!魔王だったか!?さっさとその人を連れて帰れ!」


キョウスケの叫びに驚く一同。


「なにを馬鹿な!今ここでこの魔王を逃がしたら…」


エレノアがふざけるな!と叫ぶのに対してキョウスケは首を振る。


「その人がフィリアの大事な人っていうのは理解した、だがこのままじゃフィリアも死ぬしその人もフィリアの手で殺してしまうことになる!」


「…しかし!」


「いや、エレノアちゃん。ここはそうした方がいい…ベルとフィリアが生きていたんだそれが分かっただけでもいいだろ?このままじゃ二人とも死ぬ」


ゲイルの言葉でエレノアは唇を噛み締めながらも頷く。


「…ふん、余が見逃される立場になるとはな…だが、その選択…必ず後悔することになると思え…」


ルシウスの周りの空間が歪みルシウスとベル、二人の姿がゆっくりと消えていく。


「……行ったか」


『そ、それより!こっちどうするの!?』


光の鎖を引きちぎっていくフィリアだったがベルが消えた場所へとボロボロになった手を伸ばす


『……待って……よ……ベル………!』


置いていかないで……と弱々しい言葉を最後にフィリアはその場に崩れ落ちた……


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「…ふぅ。とりあえず傷は塞がったが…」


『傷口は…ね。後は彼女が目を覚ました時どうなるか……もしかしたらキョウスケ…殺されるカモ…』


うっ!…だ、だよなぁ。フィリアからしたら最大の敵と助けたかった人を俺が逃がしたんだから。


「……所でよ、あんたは誰だい?途中からそれどころじゃなくなったから聞きそびれたけどさ」


エマの問いにエレノアが口を開く。


「…帝国が呼び出した勇者ですよ…フィリアを最初に刺した男です」


「ちょ!なんか変な誤解を受けそうな言い回しをしないでくれよ!!ほら!なんか殺されそうな勢いで睨まれてるじゃないか!?」


エマとゲイルから殺意の篭った視線を受けて慌てるキョウスケにエレノアは口角を吊り上げて続ける。


「…あの魔王を逃がした事を怒っているのがフィリアだけだとでも……?出来るなら私も今すぐ…」


その美貌を妖しく歪めて笑うエレノアに寒気を覚えたキョウスケはジリジリと後ずさる。


そこへエマが手をパンと叩く。


「…エレノア、冗談はその辺にしときな。話が進まないったらありゃしないよ」


あ、あれは冗談だったの……か??


一抹の不安を覚えつつも一先ず安心するキョウスケだったが…次の瞬間エマのフライパンがキョウスケの頭に炸裂した。


「ただまぁフィリアを刺したのには変わり無いからね!1発は殴らせて貰うよ?」


もう殴ってますよね!?しかも滅茶苦茶イテェ?!


ぐおぉ!と言いながら蹲るキョウスケにゲイルはポンっと肩を叩くと


「…ウチのかみさんは口も早いが手はもっと速い。諦めろ」


「…あぁん?なんだって?」


「いや!何でもないぞ!ははは」


それからはフィリアを動かす訳にもいかなかったので夜営の準備を始めたのだが…


「…そういえばコレ…どうします?一応破片は集めておいたんですけど」


キョウスケは袋に入れておいた逢魔…の残骸をエレノアに渡す。


「…元々刀身がひび割れていたみたいですしフィリアの全力に耐えきれず崩壊したのですね。ある意味それでフィリアは助かったのかもしれません……もしあのままもう一度あの技を放っていたら…」


確かに。あれは彼女が自分の魔力残量を無視して刀身に魔力を集めていた。あれをもう一度放てば足りない魔力を生命力から削って放つ事になっていただろう。


それにしてもあの時の彼女には恐怖を感じた。前に戦った時とは別の次元の強さだった…


「………」


『キョウスケ…あなたが考えてる事は正しいよ。あの時戦ったフィリアはもうボロボロだったでしょ?私が勇者として戦っていた時はキョウスケの時とは比べ物にならないくらい強かったからね……とはいえさっきの彼女は完全に暴走してたからなんとも言えないけど』


獣染みた動きをしていたからな…あんなのと戦ったら殺される未来しか見えないぞ。


「…一先ずこれは私が預かりましょう。フィリアが目を覚ましたら渡しますので」


「お願いします」


エレノアが立ち去った後……


「……俺…無事に生き残れるかな…?」


『さぁね。彼女が怒って無いことを祈るしかないと思うよ?』


だよなぁ……………。


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