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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
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第20話 エレノアの叫び


それは数日前の出来事だった。


家の扉がノックされたので出てみたら…意外な人物がそこに居た。


「突然失礼。…お久しぶりですね、ゲイルさん」


透き通るような青髪に整ってはいるがどこか冷たさを感じさせる相貌…魔族軍内でも軍団長しか着ることを許されない黒の制服の肩には幾つもの勲章が輝きを放っていた。


「…あぁ、久しいな。エレノア」


「ええ、あの時以来ですね…」


「立ち話もなんだからな、入りなさい」


エレノアはお邪魔します、と言ってゲイルの後ろをついていく。


「そこに座って待っててくれ。いまかみさんを呼んでくる」


テーブルの近くにあった椅子に腰かけたエレノアは近くの棚に飾ってあった1枚の写真を見つける。


「…ふふ。フィリアは可愛かったなぁ…」


写っていたのは幼いフィリアとリーニア、ゲイル夫妻にベル…それとエレノアだった。


「リーニア達の両親が亡くなる少し前だったっけ?両親が遠征中でつまらないって駄々を捏ねたフィリアをゲイル夫妻が近くの湖に連れていってくれたんだっけ…」


満面の笑みを浮かべてベルに抱き付いているフィリアと抱きつかれて迷惑そうにしているベル、それを見て微笑むリーニアと私。ゲイル夫妻もにこやかだ。


写真を眺めているとガチャっと音がして扉が開き、恰幅の良いおばさん……エマさんが入ってきた。


「…エレノアちゃん!本当に久しぶりね!」


「お、おばさん…もうちゃんづけはやめて下さいよ…私ももう良い歳なんですから」


人間換算でいえばもう私は30手前だからね。さすがにちゃんづけは恥ずかしい。


「なーに言ってんだい!私達からすればまだまだ子供みたいなもんじゃないか!」


敵わないなぁ…人柄も、実力も未だにエマさんには追い付けない。


「…それで、どうしたんだい?私達が見つからないようにわざと距離を空けてたエレノアちゃんが俺達を訪ねてくるなんて」


…言わなきゃ。


「………」


フィリアの事を伝えなきゃ…駄目なのに。


「…………」


「…よっぽどショックな事があったんだね…ゆっくりで良いから話してごらん?」


「…でも、これを伝えたらおばちゃん達が…」


悲しむ。あれだけフィリアを可愛がってきた人達だから。


だけど私は伝えないといけない。


今まで伝えないといけなかった事を全て。


リーニアやベル君が本当は生きている事、フィリアが二人を人質に取られて魔王に隸属させられ黒騎士をやらされていた事…そして…


フィリアが勇者を道ずれに死んだ事。


ぽつり、ぽつりと語り出すエレノアに二人は終始黙って耳を傾ける。


そしてエレノアが最後に取り出したのは記憶水晶。


それはフィリアの最後を記録したモノだった。



「これが…フィリアの……!」


駄目だ…これ以上言葉が出ない…私も認めてしまうみたいで…


「……そうだったのか……」


「………」


ゲイルさんは一言そういうともう一度フィリアの最後の姿を再生する…


「…エレノアちゃん……辛かっただろうによく教えてくれたね」


エマさんのその一言で私の中の気持ちが溢れ出す。


「…ご…ごべんなざい!…フィリアをまもれながっだです……!!なんびゃくねんもみできだのにぃぃぃ」


リーニアから凍らされた後、私はすぐに抜け出して城に向かった。でも間に合わなかった!私が辿り着いた時にはリーニアとベル君は凍りつき、ボロボロのフィリアは無表情な人形の様になって魔王の横に立たされていた。


「どうにがしだがっだ!でも……」


私じゃ魔王には勝てない、殺されるしか道はない。


だけど行くしかないと思って剣を握った時、リーニアの声が聞こえた、『フィリアを守って』って。


それからの私はひたすら感情を隠して実力を磨きつつ、フィリアを助けてきた。


絶対にフィリアを死なせるものかと死に物狂いで動いた。


だけどフィリアが所々の記憶を弄られるのを止められなかった。


それでもリーニアやベル君の事を助ける手掛かりを探り、フィリアが強くなるまで影から助け…この何百年ずっと……!


「…辛かっただろう…、だけどねエレノア!もっと早く相談しに来な!!…あんたも私達にとっちゃ大切な家族なんだよ…!」


エマがエレノアを力一杯抱き締める。


「…おばざんぅぅ!…ごめんなざいぃぃ…!!」


いつまでも泣き止まぬエレノアをずっと抱き締めていたエマだったが…不意にゲイルの方を見る。


「あんた、どうやらまた客みたいだよ…」


「…あぁ、今度はちと物騒な客みたいだがな」


二人の会話を聞いてエレノアも泣いてはいるが少しだけ落ち着きを取り戻す。


「……囲まれてまずね」


まだ鼻声のエレノアに二人は笑うとエレノアに


「エレノア、お前は地下に隠れてろ。俺達と一緒に居るところを見られるとマズイだろう?」


「…いや、もう私は…」


どのみちこのまま魔王軍に残っていてもリーニアを助ける事は出来そうにないからここに来たのだ。


それに…あの氷を溶かしてリーニアとベル君を救う手掛かりは得た。


エレノアは涙を拭って二人に話す。


「私は…リーニアとベル君だけでも救いたい。その為には…まずドレイクの復活と人族の勇者に協力を取り付けないと駄目なんです…」


「…何か方法があるんだな?」


「はい…まだ確実とは言えないですけど…」


「それで充分だよ!…あんた!久しぶりに暴れるよ!」


「まかせろぃ!」


むん!!


ゲイルの掛け声と共にゲイルが着ていた衣服が弾けとび、筋骨隆々な上半身が露になる。


「……そのシャツは自分でなんとかしなよ?あたしゃ縫わないからね?」


「…まじかよ」


「大体ね、あんたは暑苦しいんだよ!…ただ筋肉見せたいだけじゃないか!解放するなら余計な事せずにさっさとやりな!」


エマはそう言うと愛用のフライパンをどこからか取り出すと『解放』と呟く。


すると光に包まれていき今まで恰幅が良く、気のいいおばさんといった見た目から一転して竜人の特徴である紫の髪に金色の瞳…妖艶な色香を放つ美女へと変わっていた。


「…久しぶりに見たがやっぱ俺のかみさんは世界一だな!今夜辺りどうだ?久しぶりに燃え上がるか?」


そう言ったゲイルの頭を手に持ったスキレットでスパーンと叩くエマ。


「恥ずかしい事いってんじゃないよ!…全く…でもまぁアンタが久しぶりに格好いい所見せてくれるなら考えないでもないねぇ」


「お!…ならいっちょ真面目にやるかよ。『解放』」


「…あ!馬鹿!…エレノアちゃん!そこの写真を!」


エマがそう叫んだのでエレノアが写真を掴んで亜空間へと入れると同時にゲイルの身体が光に包まれていき……


『グオォォォォォォォ!!!!』


雄叫びをあげるその姿は…漆黒のドラゴン。


巨大な身体で家が粉砕されていく…


『うぃぃぃ!やっぱ竜体はいいねぇ!!どうよ?惚れ直しただろう!!うははははは!』


「…あんた…荷物も何もかも瓦礫の下になった事に対する言い訳は後で聞くからねぇ?」


『………』


「…ゲイルさん………」


『ち、ちくしょーー!!』



「貫け…『ブラッドランス』」


そんな声と共にゲイルさん目掛けて放たれた魔術を私は慌てて弾こうとしてエマさんに止められる。


「大丈夫、あの程度の魔術じゃ………ほらね」


飛来した赤錆色の魔術の槍をゲイルさんは尾を凪ぎ払う様にして散らす。


『あぁん?何だ?この程度の魔術で俺に挑むのか??』


ゲイルが見下ろす先にいたのは…黒ずくめの集団がいた。


「あれは…影か!」


魔王軍の中でも諜報から暗殺など様々な汚れ仕事を行う集団……『影』


こいつらが動いているのなら…私の行動はある程度バレていると見たほうがいいな。


『影だか黒だか知らねぇが…台所の黒い奴みたいにウジャウジャでやがって…全員消し炭にしてやんよ!』


ゲイルが牙だらけの口を開くとその口から暗黒のブレスが吐き出されて目の前の有象無象を焼き尽くす。


『ざまぁみろってんだ!』


「アンタ!後ろだよ!!」


『?!』


咄嗟にゲイルは大木のような尾を振り背後から仕掛けてきた何かを弾き飛ばす。


尾の直撃を受けたソレは盛大に土煙を上げながら吹き飛ばされていき、数十メートルほどの所で岩に激突して止まる。


暫くして土煙が晴れた時…エレノア達3人は驚きに目を見開く。


「…う、嘘……」


「どういうことだい…?」


『ありゃあ…本物か…?』


彼らの視線の先には…


『GYooooooooo!!!』


雄叫びを上げたのは漆黒の全身鎧に包まれた……


黒騎士だった。


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