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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
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第16話 黒騎士、夢の終わり


「お姉ちゃん!?」


「フィリア!来ては駄目!」


鎖で繋がれたリーニアを見てフィリアは剣を抜く。


「私に剣を向けると言うことがどういう事になるか…わかっているのか?」


「家族がこんな扱いをされたら誰でもこうしますよ!」


「…愚かな。…だがまぁいい。暫く遊んでやるとするか」


ルシウスは玉座の横に立てた歴代の魔王のみが使う事を許された剣…『覇王剣ダインスレイフ』を握るとその場で軽く振り抜いた。


軽く振り抜いたにも関わらず刀身から放たれた衝撃波でフィリアは切り裂かれながら壁へと激突した。


「ガハッ!」


「おっと…まさかこれも耐えられぬのか。脆すぎるな」


血塗れで倒れたフィリアに更に衝撃波を飛ばして弾き飛ばす。


「もう止めて!!!フィリアが、フィリアが死んでしまう!私ならどうなっても良いから!フィリアだけは…」


「ほう?…だが却下だ。お前は心を折らねば私に反逆することは目に見える。今ここでお前の妹には死んでもらわねばならんな」


三度目の衝撃波を浴びてフィリアは完全に動かなくなった…


「あ、ああ……あ…フィリ、ア…?」


ピクリとも動かないフィリアを見てリーニアは…


「…許さない…」


「…なんだ?その有り様で何が出来ると…」


言いかけたルシウスはリーニアの様子がおかしい事に気付く。


リーニアを拘束していた魔力の鎖が凍りついて(・・・・・)いる事に…


「殺してやる……!」


バギンっ!


魔力の鎖が音を立てて弾け飛ぶとリーニアはルシウスへ向かって剣を走らせる。


それをガードしたルシウスだがそんな事は関係ないとばかりに強引に振り抜いたリーニアによって壁へと叩きつけられた。


リーニアはルシウスに一瞥をくれるとすぐにフィリアへと駆け寄る。


「フィリア!フィリア!?」


抱き起こしたフィリアはぐったりとしているがまだ微かに息をしていた。


「…良かった…だけどこのままじゃ…」


「舐められたものだ…あの程度で俺が倒れると?」


すぐ背後からの声と共にリーニアの腕を貫く剣…


「邪魔を…するなァァァァァァ!!!」


貫かれた方とは別の腕をルシウスへと振り抜くと巨大な氷柱がルシウスへ襲いかかるがルシウスはそれを剣で斬って分断する。


「さぁ!妹を庇ったままでどこまで戦えるかね!」


何度も衝撃波がリーニアを襲うがフィリアを庇っているリーニアは全てを自身の身を盾にして耐える。


「………」


「もう喋る気力すらないか?ならば…姉妹仲良く死ぬがいい…!俺をコケにした事…輪廻の環で深く反省する事だな!!!」


ルシウスの叫びと同時にリーニアへと今までとは比べ物にならない程の衝撃波が迫る。


「…フィリア…ごめん…お姉ちゃん…ここまでみたい…」


「…お姉、ちゃんは…やらせ……ない」


目前に迫った衝撃波に目を閉じようとしたその時、リーニアの視界に今まで動かなかったフィリアがふらつきながら飛び出した。


逢魔を盾にしたフィリアに更にもう一人衝撃波の前へと飛び出した者がいた。


「俺が守るって約束した!!二人はやらせねぇ!『ストームウォール』」


激しい嵐と衝撃波がぶつかり威力が大幅に減少した衝撃波を乱入者…ベルハルトはリーニアから貰った剣…レーヴァンティンで切り裂き散らす。


「…ベル………?」


「リーニアさん!フィリアを連れて早く逃げて下さい!俺じゃ時間は稼げない!」


レーヴァンティンを構えたベルだが


「…羽虫が一匹増えた所で何も変わらぬ」


距離を詰めたルシウスがダインスレイフを振り抜きベルを切り捨てる。


「…これで邪魔は居なくなったが…「まだ…だ!」」


ルシウスの足にしがみつくベルは叫ぶ。


「フィリア!リーニアさん!は、早く…」


「…訂正しよう、貴様は羽虫よりは骨があるようだ…だが…無駄だ」


ルシウスはしがみついていたベルごと足を振り抜きフィリアとリーニアの方へとベルを吹き飛ばす。


「リーニア、貴様は強かった。だが今回は私の勝ちだ…」


リーニアの前まで歩いてきたルシウスはリーニアに手を伸ばしたがリーニアに手を弾かれた。


「…私達の両親を殺し、卑怯な手段を使ってしか勝てない小者の分際で私に触るな…!こんな奴の為に剣を振ってきたかと思うと反吐が出る…!」


「なんとでも言うが良い。どのみちお前に選択する余地はない」


ルシウスは剣の切っ先をフィリアへと向ける。


「……」


「さぁ、どうすればいいか分かるな?」


「……わかっ「…駄目…お姉ちゃん…!」」


「…ほう?その身体でまだ動くのか…やはり血は争えぬと言うことか…」


血塗れのフィリアが立ち上がってルシウスへと剣を構える。


「…ッ。…ベル!アンタもまだやれるでしょ……!」


フィリアの声に反応してベルも剣を支えにして立ち上がる。


「勿論…あの程度で…くたばる訳がねぇ…」


「死に損ないが3人になった所で何も変わらん『ダークフレア』」


立ち上がったフィリアとベルを闇の炎が襲うが二人は構わずに剣を振り上げルシウスへと駆ける。


黒い炎が全身を這い回るようにしてフィリアとベルを焼き続けるが二人はルシウスに何度も斬りかかる。


フィリアが振り抜いた逢魔は弾かれベルは切り込む前に魔法で吹き飛ばされる…だがその度に二人は立ち上がりまた剣を構えて走り出す。


「「ハァァァァァァ!!」」


渾身の力を込めて十字に斬りつけた二人とそれを受けた魔王…倒れたのはフィリアとベルだった。


「…死に損ないにしては良くやったほうだな。服が少し切れたぞ…?」


ルシウスは二人の所まで歩くとベルを蹴り飛ばしフィリアの髪を掴んでリーニアの前まで歩く。


「幾らお前が強かろうと…無謀な妹を持つとそれが弱点となる…守るべきモノがある者は強いというが…そのような事は無かったな」


ルシウスはフィリアの首筋に剣を当てると亜空間から首輪を取り出してリーニアに投げる。


「それを付けろ。妹の命が惜しければな」


隷属の首輪…


「…これを私が着けるならフィリアとベルは見逃すのですね?」


ルシウスは不敵に笑いながらも頷く。


「約束しよう」


リーニアは首輪を自らの首に嵌める…すると地面に魔方陣が出現する。


「リーニア=スカーレット、貴様は余に永劫の服従を誓うか?」


「……誓います」


リーニアが誓った瞬間リーニアの隷属の首輪から魔力が迸る。


「ふは、ふははははは!やっとだ…やっと手に入れたぞ!リーニア、これで貴様は俺のモノだ」


「…はい。…ではフィリアとベルを…」


「…そうだったな…」


ルシウスはフィリアを掴んだまま倒れたベルの元へと向かうと…


「約束通り解放しよう…」


ザシュ!!


「…!」


ベルの身体をダインスレイフで貫いた。


「ベル!…ベル!?」


髪を掴まれたまま叫ぶフィリアを見てルシウスは更に口を開く。


「お前は殺すには惜しいな。姉妹そろって俺に仕えるといい…喜べ、俺が直々に隷属契約を…っ!」


「…………我が力を司りし精霊よ……」


「リーニア!詠唱をやめろ!命令だ!詠唱をやめろ!」


リーニアの全身を焼けるような痛みが駆け抜けるがリーニアはそれに構わず詠唱を続ける。


ベル君もフィリアも巻き込むけれど…この男だけは生かしておくわけにはいかない!


「…我が身の魔力を糧とし…」


「何故止まらぬ!それ以上やれば貴様は…!」


「全ての時を止める氷塵を為せ!」


「…馬鹿な男…両親を殺したり、妹を人質にしたり…卑怯な手段なんて使わず真っ直ぐに気持ちを伝えてくれてれば……なんてね。…さようなら、フィリア、ベル、そして愚王ルシウス…『アブソリュート・エンド』


周囲全てが凍りついていく…刺されたベルもフィリアを掴んでいたルシウスも、そしてリーニア自身(・・・・・・)も。





凍り付いた謁見の間に静寂が戻った…かに思えたがパリィンという音と共にルシウスとフィリアを包んでいた氷が割れる。


「…く、くははは!まさか隷属の首輪を着けた状態でここまでの戦略級魔法を発動させるとはな!!…だがそれも無駄だったな。俺が何の対策も講じていないわけが無かろうが!」


凍り付いたリーニアを見ていたルシウスは未だに掴んでいたフィリアへと視線を向ける。


「リーニアが手に入らぬのなら、妹を貰うまでだ…」


嫌…


「永劫の時を余と過ごそうではないか…フィリア」


嫌だ…


「…嫌か?ならばこのリーニアとお前の友人は死ぬ。このまま古代竜の住まう火口に投げ入れるしかあるまい?…お前が私に従う限りはこの二人の命は保証するが…どうする」


絶対に約束を守らないと分かっているのに……それしかない……


「…わかりました…だから…」


「勿論、約束は守ろう。では今日から貴様は俺のモノだ…いいな?」


フィリアが頷くと腕が熱く焼けるような感覚がした次の瞬間にはフィリアの腕に隷属の紋章が現れて契約が完了する。


高笑いするルシウスの声が遠くなっていくのを感じながら…フィリアはゆっくりと目を閉じた……。


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