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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
15/32

第15話 黒騎士、夢の続きを見る


「リーニア!!敵が来る!」


土煙と怒号に支配された戦場…彼女らは懸命に戦い続けていた……


「エレノア、もう良いです…あなただけでも撤退しなさい!」


「何を!?私はまだっ!?っ!この…!」


迫ってきた魔族(・・)を斬り捨ててエレノアは叫ぶ。


「いいえ、もうあなたは限界です。引きなさい…敵の狙いは私ですからね…」


「いたぞ!リーニア将軍だ!!魔王様に仇為す逆賊だ!」


「誰が…逆賊か…!リーニアがどれだけ魔族の為に働いてきたと思っている……!!」


近寄ってきた魔族をまた1人斬り捨てたエレノアにリーニアは首を振る。


「エレノア、無闇に殺してはいけない。彼らは命令されているだけよ」


「しかし……!」


リーニアに迫ってきた魔族の青年の首筋に剣の鞘で打撃を与え意識を刈り取るとリーニアは叫ぶ。


「…私は!!魔王様に反逆するなどという愚かな事はしていない!!これ以上の交戦は無意味だ!即刻戦闘を中止しなさい!…私の声が聞こえるか!!私の部下には手を出すな!手出ししなければこちらは手を出さない!だが!これ以上私の部下を傷つける場合は私はこれより修羅へと化ける事になるだろう!!」


凄まじい気迫の篭った叫びに戦場は凍りついたように時が止まる。


「……エレノア、私はこれより魔王様の下へ向かいます。……後は…頼みますよ……」


踵を返し歩き出すリーニアにエレノアが駆け寄ろうとした時…


「…魔王様の敵は…殺す」


「…リーニア!?」


「!?!」


リーニアは自らの体から生えた剣を見下ろし、次の瞬間には刺されたのを自覚した。


「リーニア!!!」


エレノアが駆け出すよりも速くリーニアは刺した魔族の青年の服を掴み全力で投げ飛ばす。


「エレノア、私は大丈夫です。だから…彼は悪くありませんよ…」


言いながらリーニアは刺された剣ごと魔法で傷口を凍らせる。


「リーニア!止めても無駄ならせめて私も一緒に…!」


エレノアの叫びにリーニアの部下である者達も俺も!と声を上げる。


「…駄目、と言っても聞いてはくれないのですね…まったく…あなた達まで罰を受けても知りませんよ?」


「構わない!この様な理不尽が許されてたまるか!!」


そうだ!!と周りの部下達も叫ぶ。


「…本当に…馬鹿な部下ばかり…でも…」


ありがとう…


小さく呟いたその言葉を聞き取れたのが何人いたか…


『氷壁…アイシクルウォール』


リーニアの一言でリーニアの周囲は一瞬で氷の壁に覆われ壁の中にはリーニア以外の全てが残された。


「リーニア!!何で!!」


「…フィリアを、妹をお願い。あの子だけでも無事なら私はいいから」


お願いよ…。そう言って自分の飛竜を呼び寄せると乗り込んで飛び立ったリーニアをエレノアは拳を握り締めて見送るしか無かった…


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「……嘘。ねぇ、ベル?お姉ちゃんがそんな事をするわけないよね!」


「いいから来い!リーニア将軍は反逆した。家族である貴様も捕らえろとの命令だ」


フィリアに伸ばされた手から庇うようにベルが割って入る。


「おい、フィリアに触るなよ!リーニアさんが反逆なんてする訳…「邪魔だ、どけ!」」


フィリアに手を伸ばした男が途中でベルを殴り倒すとフィリアの腕を掴む。


「ベル!!……このっ…離せ!!」


フィリアは掴んだ男に肘打ちを食らわせるとベルを抱き起こす。


「馬鹿!アンタは…「フィリア、に、逃げろ…俺が時間を…」嫌よ!さぁ、立って!行くよ!」


フィリアはベルを抱き起こすと未だに倒れている男に一瞥をくれてベルと共に家の窓から飛び出す。


「逃げたぞ!?追え!!」


数人の男がフィリア達を追いかけようと走り出す。


「ベル!自分で走って!」


「分かってる、大丈夫だ…殴られて少し足にきただけだ」


「…良かった…行くよ!」


街中を走り抜ける二人に街の皆はまたかと騒ぐ。


「フィリア、ベル!あんまりリーニアさんを怒らせんなよ!じゃねぇとリーニアさんの怒気で街の男連中のナニはみな縮み上がるからよ!!」


「うっさい!今はそれどころじゃないって!皆!何か言われても私と関係ないって言ってよ!」


「待て!おい!そのガキどもを捕まえろ!」


追いかけてきた男達が街の住民に向かって叫ぶが…


「おい、フィリア達が何したって言うんだ?幾ら悪ガキどもだからって大人の男から…」


「お前らは黙って協力すればいい、私は魔王陛下の親衛隊だ。お前ら市民は黙って従う義務がある」


剣の柄に手をかける男にその場の雰囲気は一気に険悪になる。


「…この街でリーニアの家族を害するたぁ分かってねぇな」


ガタイの良いオジサンが腕捲りをしながら前へと出てくるのに合わせてフライパンを持った恰幅のいいおかみさんまで出てくる。


「…ベル、アンタはフィリアを連れて裏から行きな!ここはウチの馬鹿旦那と私達が何とかするから」


おかみさんの言葉にフィリアは首を振る。


「駄目よ!そんなことしたら皆まで…」


そんなフィリアの頭を優しく撫でるおかみさんは豪快に笑う。


「あはは!…フィリア、この街に戦いの出来ないグズは居ないって知ってるでしょ?忘れたのかい?ここは『傭兵の街ドレイク』だよ、皆あんたの親父や母親、リーニアちゃんに助けられた連中ばかりさ!」


「おばさん…でも!」


「いいからお行き!!…ベル、アンタはちゃんとフィリアちゃんを守るんだよ?良いね?!」


ほら行った行った!と言いながらフィリアとベルのケツを叩く。


「分かった、任せてくれ。…そっちも気を付けて」


フィリアはベルに引っ張られつつ何度も振り返りながら走っていった。


「…行ったか?」「行ったよ、アンタ。後はコイツらを何とかしなきゃだねぇ」


「お前ら…こんな事してタダで…ぶべら!?」


最後まで言う前に男の顔にフライパンが直撃して吹き飛ばされた。


「煩いんだよ!そんなに暴れたいならアタイとこの…『ブラッディスキレット』が相手になるさ!」


「おぉ…怖ぇ…。お前ら終わったな?ウチのかみさんのフライパンはマジでいてぇぞ?昔はそのフライパンでドラゴンをしばき倒した事も…」


「アンタもいつまでそこで突っ立ってんだい!さっさと行きな!!」


おかみさんの掛け声と同時に街の住人全てがそれぞれの獲物を構えて親衛隊の面々へと飛び掛かる。


「どうせ後には引けねぇんだ、精々暴れてやろうぜぇ!!傭兵団『ドレイク』復活だ!」


オォォォ!!!!


雄叫びと共に暴れ回る街の住人…親衛隊の彼らは入ったばかりで知らなかったのだ、ドレイクの街の住人はその全てがその辺の一般兵など相手にならない強者揃いだということを。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「…皆大丈夫かな…」


「大丈夫さ、俺達よりも皆強いのは知ってるだろ?心配しなくともいい…それよりもフィリア、君に渡すものがある」


走るのをやめたベルは亜空間から一振りの大剣を取り出してフィリアに渡す。


「これ…なんでベルが?」


「リーニアさんからフィリアに渡してくれって…多分リーニアさんは予感してたんだと思う。こうなるだろうってさ…魔王陛下に勝ったって言ってただろ?それは本来魔王の交代を意味するからな」


多分リーニアさんには既に…


「お姉ちゃんを助けに行かないと!」


「駄目だ。俺達が行って何になる??足を引っ張るか殺されるのがオチだって!」


「ならベルは逃げなさいよ!私だけでも行くから!…っ!離してよ!」


激昂するフィリアの腕を掴むベルに更にフィリアは叫ぶ。


「行かせるわけにはいかない!!…好きな子をむざむざ死なせるような事は出来ねぇ!……好きなんだ、フィリア。君の事を愛してる!」


突然の告白にフィリアは一瞬頭が真っ白になったがすぐに持ち直す。


「…ば、馬鹿!今はそれどころじゃ…」


「聞けよ!!…お前は昔から色気は無いし、生意気だし、言うこと聞かないし…リーニアさんから一緒に怒られた事も数知れず…だけど親が死んだ俺を最初から受け入れてくれたのはフィリア、君だけだ。…だから…」


「……………文句をいうのか告白するのかハッキリしなさいよ…この馬鹿…」


「わかっ…むぐ!?」


フィリアはスッとベルの口に口付けを交わすと全力でベルの腹を殴った。


「かはっ!?な、…フィリ、ア…」


ドサッという音と共に倒れたベルを木の影へと運んだフィリアは


「…ごめんね。嬉しかった…本当に。ヘタレのアンタが告白してくれただけで私は充分だよ。…ファーストキスだったんだから…それで許して」


フィリアは背中に背負っていた剣を腰に提げ、背中には『逢魔』を背負うと最後にもう一度ベルに口付けをして走り去った。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「魔王様…私は反逆したつもりは無いんですが、これが貴方のやり方ですか?」


冷えきった眼で睨むリーニアに相対した魔王…ルシウス=アーデルハイトは不敵な笑みを浮かべた。


「リーニア、私は欲しいものは全て手に入れないと気が済まない質でね…今回は搦め手でいかせてもらっただけさ」


「……」


「…それにな、数日前…私は良いものを見たのだ…あれは美しくなるぞ?お前の妹…名はフィリアと言ったか?」


フィリアの名前が出た瞬間、濃密な殺気と共に周囲の温度が下がり、リーニアの周辺は凍りつく。


「…いくら魔王様といえど…フィリアに手を出すならば…」


ゆっくりと剣の柄を握るリーニアにルシウスは更に続ける。


「ふむ、素晴らしい家族愛だな?まるでかつての君たちの両親を見ているようだな」


ピクッとリーニアが反応を示したのを見たルシウス。


「あいつらも馬鹿だったよ。娘を私に差し出していればあの様な死に様にはならなかっただろう」


「…まさか」


「そうだ、お前らの両親はこの私が殺した。リーニア、お前を差し出さなかったからな!」


「貴様ァァァァァ!!!」


一瞬で距離を詰めたリーニアは剣を抜き放ちルシウスの首を撥ね飛ばそうとしたが突然空中から出現した無数の鎖によって四肢を絡め取られ動けなくなる。


「くっ!!」


「ははははは!!こうなってしまえば『氷結の魔将』も形無しだな!」


リーニアに近づいていくルシウスは剣を抜いてリーニアの服を1枚ずつ斬っていく。


「………」


「どうした?最後まで抵抗しろ、でなければ面白くないだろう?」


「……」


「黙りか…ならば趣向を変えるか…」


ルシウスが指を鳴らすと空中に鏡が現れ、何かを写し出す。


「…!フィリア!?」


それは魔王城の中を走るフィリアの姿だった。


「心配するな。城の者には手を出すなと言ってある…もうじきここへとたどり着くだろう」


「何を企んでいるのですか…!」


「さてな…それは彼女が辿り着いた時に分かる」


フィリアにとって忌むべきその時まであと…少し…


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