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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
14/32

第14話 黒騎士、夢を見る


倒れたフィリアにルッツが駆け寄り抱き起こす。



「こりゃ魔力切れみてぇだな。…見た感じ黒騎士と互角以上に戦ってたみたいだったが…」


「あんなすげえ戦い初めてだ。なんか美人だけど嫌な奴って思ってたけど…すげぇ奴だったのか」


カイトはフィリアを見てそう呟く。


「これ…フィリアさんがさっき使ってた武器…」


アイカが地面に刺さっていた建御雷神(タケミカヅチ)を引き抜いて近くに落ちていた鞘に納める。


「それちょっと見せて貰っても良い?」


リュータがアイカにそう言うとアイカは首を振る


「フィリアさんが気絶してるのに私が良いよって言っても意味無いでしょ?起きるまで待つべきよ」


「見るだけならいんじゃね?減るような物でもないだろ?」


「…うーん、起きたらフィリアさんにちゃんと一言言うなら…でも…」


アイカが悩んでいる間にカイトが後ろから近づいて建御雷神(タケミカヅチ)をヒョイっと取り上げてリュータに渡す。


「あ、コラ!駄目だって!」


「……?!?こ、これ………!」


リュータがこちらの世界(・・・・・・)に飛ばされた際に手に入れたスキル…『鑑定EX』を発動して見た瞬間、驚きで目を見開いた。


神刀建御雷神(タケミカヅチ)


レアリティ EX+


破壊不能属性 紫電雷鳴 神滅領域


古の時代の武具の1つ。和の国の古き神の武器であり一度振れば紫電が空を裂き山をも穿つだろうと言われ、封印されていた武具。



「……こんな武器を持ってるなんてフィリアさんって何者なんだ…??」


そこへルッツが歩いてきてリュータからタケミカヅチを取り上げる。


「リュータ、冒険者になる上で俺が教えた事を忘れたか?『冒険者の素性は探るな』これは絶対守れ。じゃないとあれこれ詮索する奴は長生き出来ねぇからな?」


「すみません、気を付けます…」


「…まぁいい、とりあえず早めに森を抜けるぞ。この分だと街までたどり着くのは夜になりそうだが…夜営するだけの準備もねぇ。急ぐぞ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


フィ…ア…………フィリア……


…ん…


「もう朝よ、今日は軍の入隊試験でしょ?早く支度しないと!」


「…あともう少し寝かせ……ふぎゃ!?」


布団ごとベッドから放り出されたフィリアは床に顔面から落ちた。


「フィリア、あなたが私の軍団に入るって言ったから推薦したのですからね?私の顔に泥を塗るのかな?」


ゾワッ!


「ひっ!?ご、ごめんなさい!!お姉ちゃん!今すぐ支度するから!」


バタバタと洗面台まで走るフィリアをフィリアの姉……リーニアはため息を吐きながら眺めていた。


「さて、私も支度をしないと」



暫くして支度が終わったフィリアが朝食を食べているとドアがノックされる。


「おーい、フィリアー?準備出来たかー?」


「あらら。もう来ちゃった!…待ってー!まだご飯食べてるからー!!とりあえず入って待ってて!」


そう返事を返すとドアが開いて入って来たのは背の高い金髪の青年でフィリアと同じ服を着ていた。


フィリアが着ている服は士官学校の制服で彼…ベルハルトは士官学校の同級生で幼なじみだ。


「…まーた寝坊かよ、しかも飯が優先とか…本当にお前って色気より食い気だなぁ。いくら体が育っても色気が感じられねぇ…」


「うっさい!ベルにそんなこと言われても気にならないし。別にモテたいとも思ってないもんね!」


んべ!っと舌を出すフィリアにベルハルトはいつも通りにため息を吐く。


「そんなんじゃリーニアさんも安心出来ないぞ…リーニアさんはお前がいるから結婚しないんだからな?」


「あら?ベルハルト君、それは違うわ。私が結婚しないのは私より強い人が居ないからよ?知ってるでしょ、私のスキル」


「リーニアさん!おはようございます!…ってそれならリーニアさんと結婚出来る奴なんていないと思いますよ…『氷結の魔将』に勝つなんて魔王様位しか…」


「残念だけど…魔王様も振っちゃったのよねぇ…魔族って実力が全てでしょ?だから私に負けたのは内緒にしてるからバラしちゃだめよ?」


「うへぇ…そんな情報聞きたく無かったですよ…魔王様が勝てない様な人に俺が勝てるわけ無いじゃないですか」


「あら?私に挑むつもりだったの?…どうしましょ…?ベル君だったらわざと負けても「駄目!!」」


バンッ!とテーブルを叩いてそう叫ぶフィリアにリーニアはニヤニヤと視線を送る。


「どうしたの、フィリアは私が結婚するのをいつも勧めてたじゃない?なら…」


「駄目なの!ベルハルトがお姉ちゃんと結婚したら私が妹になっちゃうでしょ!!そんなの嫌!」


フィリアの言葉にリーニアとベルハルトは二人同時にため息を吐く。


「……ごめんねぇベル君。この子って本当にお馬鹿さんだから」

「…いえ、分かってた事ですから。いつもすみません」


「な、なによ?何で二人して私を哀れなモノを見るような目で見るのよ!」


「さぁ?なんでかしらねぇ。それより早く行かないと遅刻するよ」


「わかってる!じゃあねお姉ちゃん、行ってきます!!行くよ、ベル!」


フィリアが勢い良くドアを開けて出ていった後、ベルも出ていこうとしてリーニアに引き止められた。


「…ベル君、頼みがあるんだけど」


「どうしました?」


リーニアは亜空間から2振りの剣を取り出すとそれをベルハルトへと差し出す。


「…それはまずひとつが魔大剣『逢魔』っていう魔剣でね、私達姉妹の父…『黒翼公』が使っていた武器よ…そしてもうひとつが魔剣『レーヴァンティン』私が父から受け継いだ剣のひとつで家の家宝よ…逢魔はフィリアへ、レーヴァンティンはベル君が持ってて」


「…そんな凄い物をなぜ?」


「……ベル君がフィリアを守ってあげてね。こんな事をフィリアに言うとね、顔を真っ赤にして怒るからベル君に渡しておこうと思ったの。…そうそう、フィリアはあんな風にしてるけどベル君の事は満更でも無いみたいだからね?…本当にお願い。もし私に何かあった時はフィリアを宜しくお願いします」


現魔族軍最強の『氷結の魔将』に頭を下げられた事よりも自分の想い人の家族に頼まれた事が何よりも嬉しい反面、嫌な予感がするベルハルト。


「…分かりました。必ず何があろうともフィリアは俺が守ります」


ベルハルトの言葉に満足したリーニアはゆっくりと頭をあげてから


「さ、早く行ってあげて?じゃないとまたあの子怒りだすわよ?」


「はい!行ってきます!」


行ってらっしゃい…。


「さて、これで心残りは無くなったかしら…」


リーニアは自室に戻ると引き出しから手紙を1通取り出してフィリアの部屋に向かう。


「…フィリア、あなたに話せば絶対に一緒に行くって聞かないから手紙を書いたの。ごめんね…」


リーニアはそっとフィリアの机に手紙を置くと部屋を後にした。



「ベル!早く!」


「早くって…お前が寝坊するからギリギリになるんだろ!?」


二人は街の中を駆け抜けて試験会場である郊外演習場へと向かう。


「でもこのペースなら間に合いそうよね」


「…ギリギリに着いても怒られるだけだろ…もっとペース上げるぞ!『アクセル』『ブースト』」


「あ、ズルい!なら私も『アクセル』『ブースト』『フィジカルバースト』」


少し前に出たベルをフィリアは爆発的な加速で抜き去るとニヤリと笑う。


「どっちが先に着くか競争ね!」


「上等!!『フィジカルバースト』『エアステップ』」


ベルは空中に風の足場を作ってそれを蹴って加速する。


「負けるかぁぁぁぁ!!」


「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」







「馬鹿野郎!!!遅刻ギリギリだったから走ってくる途中競争に夢中になって起こした騒動がこれか!!?」


今現在フィリアとベルハルトは二人して正座で説教を受けていた。


「夢中になりすぎて前を見ていなかったから魔王様(・・・)の馬車に危うく激突しかけたなんぞ言語道断!お前らは…」


「よい、余は怪我もしておらぬ。未来ある若者が、元気なのは良いことではないか…許してやれ」


馬車から降りてきた漆黒のマントを羽織った男性…現魔王陛下であるルシウスがそう言って止めた。


「しかし…」


「よいと言ったはずだ。2度言わせるな…所でお前…名はなんと言う?」


ルシウスはフィリアに視線を向ける。


「は、はい!フィリア・スカーレットです!ルシウス魔王陛下!」


「ほぅ、スカーレットか。ならばリーニアの…」


「はい、リーニアは私の姉でございます!」


「そうかそうか。姉妹揃って美しいのは良いことだな…お前たちも今日の試験を受けるのか?」


「「はい!」」


「うむ、ならば急いで向かうがいい。余も向かう予定なのでな…お前達がどれほどなのかしっかり見極めてやろう」


魔王様の馬車が行った後、二人は立ち上がる。


「危うく試験どころか牢屋行きかと…」


「だな。まぁもう間に合いそうだし普通に行くか」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「おはようエレノア。準備は出来てる?」


「勿論。今日から1ヶ月の予定だがなるべく早く片づけたいんだろう?フィリアが寂しがるからな」


「…そうね、まぁでもフィリアの事はベルハルト君に頼んできたから心配はないかな」


「彼か…フィリアもリーニアに似て美人だからな。ベルハルト君が惚れるのも無理は無いか!」


二人は第2軍団の団長室から出ると飛竜舎へと向かう。


「今回は激しい戦闘になると思う。だがリーニアがいれば大丈夫かと思うがね…頼りにしているよ『氷結の魔将』」


「あら、私にも楽をさせて頂戴な『魔蒼の薔薇』さん」


「まぁ、お互いに生きて帰るとしようじゃないか」


「そうね、まだ決着も着いてないし」


「「先に結婚するのは私だ」」


二人は笑いながらそれぞれの場所へと向かっていく…それが最後の穏やかな一時になるとも知らずに………。


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