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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
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第12話 黒騎士と少女



「やめたほうがいいんじゃないかな。ルッツさんも絶対に来るなって言ってたじゃない」


断られた三人は一旦借りている宿の部屋へと戻って準備をしていたが、アイカがぽつりと呟く。


「…アイカ、お前はルッツさんが心配じゃないのかよ!?」


「心配じゃない訳ないでしょ!だけど…」


「二人ともやめよう。僕達が出来ることをやるしかないじゃないか…この世界で唯一僕達を助けてくれたルッツさんを見捨てるなんて僕達はしたらいけない。絶対に」


準備の手を止めたリュータがそういうとアイカは更に言い募る。


「…………わかってるけど……死んじゃうかも知れないんだよ?!わかってるの?!」


「んなこたぁわかってんだよ!じゃあどうしろっていうんだよ!?ギルドに頼んでも断られただろ!なら俺達でいくしか…」


カイトはアイカに怒鳴るがそれをリュータが止める。


「やめろって!………アイカ、ごめん!『スリープ』」


リュータはアイカに向けて謝ると睡眠の魔法をかける。


「…な、んで………」


倒れるアイカをリュータが受け止め、ゆっくりとベッドへと寝かせる。


「カイト、これで…よかったのかな…?もし僕達が死んだら…アイカは1人だ」


「…そうならねぇようにするしかねぇよ。どのみちアイカを守りながらじゃ無理だ…それこそ3人まとめて死ぬことになる」


ベッドで眠るアイカを暫く眺めた後、二人は部屋を出た。


「必ず帰ってくるよ、アイカ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━


「……………う、うぅん……」


何だろう……何で私はこんな時間から寝て………


「リュータ!カイト!!?」


思い出したアイカはベッドから飛び起きて部屋を見渡すが当然二人は居ない。


慌てて部屋を出ると宿の主人に


「私の仲間はいつ頃出ましたか?!」


慌てるアイカに主人はカウンターから袋を取り出してアイカに渡す。


「…お嬢ちゃん、君の仲間がこれを。嬢ちゃんが起きたら渡してくれってさ」


袋を開けるとそこには皆で貯めたお金と手紙が入っていた。


『アイカ、君が起きたら宿の主人にこれを渡すように頼んでおいた。…言いたい事はあるだろうけどそれは帰ってきたら全て聞くよ。……もし、僕達が帰らなかったら…』


アイカは手紙を途中まで読むとグシャっとして袋に仕舞う。


「…少し出かけてきます」


「……悪いこたぁ言わん、追いかけるのはやめときな。それが嬢ちゃんの為だ」


宿の主人が走り出すアイカに声を掛けたがアイカは振り返らず行ってしまった。


「…死ぬんじゃねぇぞ……」



街を走り抜けるアイカは目指す場所が視界に入ったのを確認して更に走る速度をあげる。


「絶対…助けて……もらわないとっ……!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「じゃあ、これから寄る場所があるから帰るね」


フィリアはエリーにそう言うとギルドの入り口に向かう。


「明日もよろしくお願いしますよー?」


ヒラヒラと手を振ってギルドを出ようと扉に手を掛けた瞬間………勢いよく扉が開く。


ガンッ!!


「ふぎゃ!?」


勢いよく開いた扉はフィリアに直撃してフィリアを弾き飛ばした。


「…いたた。んもぅ!一体な……「助けて下さい!!」


倒れたフィリアに更に勢いよく飛び込んできたアイカが倒れこむ。


「……やっぱり、行ったのね。………そうなるだろうとは思ってたけど」


立ち上がったフィリアは荒い息を吐くアイカをヒョイっと抱えると近くの椅子へと座らせる。


「置いていかれたのね?」


「…はい……魔法で眠らされてしまってその間に二人は…」


目に涙を溜めて話すアイカの目元を拭うとフィリアはアイカに


「…助けてあげる。だけど条件がある」


フィリアの言葉にアイカは頷いてから


「私に出来る事は何でもやります…!だから…」


「分かったよ。…じゃあ行こうか」


アイカをまた抱えるとギルドから出るフィリア。


「あ、あの…自分で歩けますから」


「これから向かう場所まで背負っていくからそれまでは休んでていーよ。その後は休みなしになるからね」


フィリアはアイカを背負って街中を駆ける。


暫く走って辿り着いたのは昨日立ち寄った武具屋だった。


「いらっしゃ……あ!」


「こんにちは、昨日の今日で悪いんだけど一旦剣を返してもらえるかな?」


「丁度その事でお話があったんですよ!……あの剣は僕1人じゃちょっと修理が難しいんですよね。軽く請け負ったあげく出来ないとは武具屋としてお恥ずかしいですが…」


申し訳なさそうに頭を下げる店主にフィリアは


「いいですよ、…それに1人じゃ出来ないって事は何人か居れば出来るって事ですよね?」


「ええ、まず僕の師匠なら魔鉱石を鍛える事が出来ますから。後は剣自体に何らかの術式が組んであるみたいなのでそれを担当してもらうのに僕の知人を呼ぼうかと…」


「お金はありますからそれで。とりあえずまた後日来ますからお願いしますね?」


店主は店の奥から預かっていた大剣…『逢魔』を持ってくるとフィリアに渡す。


「…ふぅ。こんなに重い剣は久しぶりで…では師匠達が到着したらお呼びしますからお名前と宿を教えて貰えますか?」


「フィリアです、宿はこの先にあるハベルさんの酒場で…」


そうしてフィリアはしばし話すと受け取った剣を亜空間へと仕舞って店を出た。


少し歩いて路地裏に入るとアイカへと向き直る。


「よし、じゃあとりあえず行こうか。…アイカさんだったっけ?今からその二人を強くイメージして」


そう言いながらフィリアは腰に提げたイマジンブレードを引き抜く。


今回は少し真面目にやらないと。まずは…


「イメージは大丈夫?」


フィリアの問いにアイカは頷く。


「おっけ。なら行くよ『輪転する闇の門』」


フィリアの言葉と共に目の前のアイカを闇が包む。


「え?!」「大丈夫。とにかく二人をイメージして…」


続いて目の前に出現した扉にイマジンブレードを差し込むと扉が消えて歪んだ空間の向こう側に森が見える。


「…少しだけ我慢してね」


アイカを再び抱えるとその空間へと足を踏み入れるフィリア。


完全に二人が入ると入り口は閉じて後には何もない裏路地に戻った。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ギィン!!


「くそ。これ以上は村に近づかせる訳にゃ行かねえ…」


オーガが振り下ろした斧を盾で受け流すと素早く距離を取る。


「ルッツ!お前だけでも逃げろ…お前が助けたあの子達を残して死ぬ事はない!」


「馬鹿いってんじゃねぇコリンズ、ビルもケイティも殺られたんだぞ?!俺だけ逃げる訳にゃ行かねえよ」


ノックスの街から南の森の中でとある冒険者パーティーは全滅の危機に瀕していた。


「しかし…!」


「うるせぇ!とにかく今は目の前の……っぐあ!」


ほんの少しの隙をついたオーガがルッツを殴り飛ばす。


「ルッツ!?」


激しく木に叩きつけられたルッツは血を吐いて倒れこむ。


「……ぐっ!…くそ…力が入らね…」


「待ってろ!今…」「来るな…逃げろ…!」


抵抗出来ないと悟ったオーガがゆっくりとルッツに近づく。


「…どうやらここまでか。…リュータ、カイト、アイカ……すまねぇ」


目の前に来たオーガを睨みながらそう呟くルッツ。


振り下ろされる斧を見て死を悟ったルッツが目を閉じようとした時、横の茂みから影が飛び出す。


「ルッツさんはやらせない!!」


飛び出してきたリュータがオーガの斧を剣で受け止めるが完全には受けきれずに弾き飛ばされた。

だがそこに続けてカイトが飛び出してオーガに飛び蹴りを当てて吹き飛ばす。


「ルッツさん!?……『ヒール』」


リュータの唱えた治癒魔法で少し回復したルッツをカイトが抱き上げる。


「リュータ君にカイトか!助かった!君たちはルッツを連れて離れろ!ここは俺が防ぐ」


コリンズがそう叫ぶとリュータ達は頷いて走り始める。


「コリンズさん!少しだけ耐えて下さい!ルッツさんを離したら戻りますから!!」


「分かった、なにもう4日も耐えてるんだ。後少しくらい何ともないさ」


言いながら剣を繰り出してオーガを牽制するコリンズ。


「…バカ野郎。なんで来た……!あれだけ…」


苦しげな表情を浮かべながらそう言うルッツにリュータは走りながら答える。


「僕達は命の恩人を見捨てるなんて選択はしたくなかった!それだけです!」


「……馬鹿な事を…だが…ありがとよ。俺は大丈夫だからコリンズを助けてやってくれ…三人居れば逃げるだけなら何とかなるだろう」


ルッツを木にもたれ掛からせるとリュータはもう一度ヒールを唱えた。


「わかりました、少し待っていて下さい!すぐに戻ります…いこう、カイト!」


「おう!コリンズさんがやべぇからな!」


走りだそうとした二人だったがルッツが待てと声を掛けた。


「…アイカはどうした?」


ルッツの質問にリュータが首を振る。


「街に残して来ました。魔法で眠らせたので暫くは目を覚まさないと思います」


「……バカ野郎。それじゃアイカは…いや。なら絶対に死ぬな。そしてちゃんと帰ってアイカに謝れよ。じゃねえとアイカにキレられて飯食えなくなるからよ」


「…はい!必ず帰りましょう」「死ぬつもりなんてねぇな」


二人が走り去った後、ルッツはゆっくりと息を吐く。


「どうやら俺は帰れそうにねぇな…」


リュータが唱えたヒールはルッツの時間を少し伸ばしただけだ。


「………まぁ、最後に…アイカは居なかったが…二人の顔を見れただけマシか…………」


暗くなっていく視界だったがその時、目の前に奇怪な現象が起きる。


目の前の空間が突然裂け始めたのだ。


「…今度は…なんだよ…もしかして、死神が迎えにきた…のか…?」


そう呟いた瞬間、裂けた空間から禍々しい剣が突き出されると空間が更に裂けていく。


「……まじかよ…」


空間の裂け目から現れたソレをみてルッツは驚く。


漆黒の全身鎧を不気味な靄が包み込むそれは……


「……黒騎士…だと…?まさか…本物か…?」


ルッツは目の前に現れたソレが放つ存在感に肝を冷やすが、ふと黒騎士が何かを背負っていることに気が付く。


「…!?アイカ…!?」


ルッツの声に反応して背負われたアイカが目を覚ます。


「…え?」


『…ハイヒール』


黒騎士がルッツへむけて治癒魔法を唱えるとルッツの怪我は見る間に回復していく。


「ルッツさん!!」


「アイカ…こりゃ一体…」


「実は…『アイカ、約束を忘れるな』」


喋ろうとしたアイカに黒騎士が釘を刺す。


『…貴方も助かりたければ余計な詮索はしない事だ。………アイカ、あなたが約束を守る以上は私も約束を果たそう』


黒騎士はそう言って何も無い空間に手を入れるとゆっくりとその手を引き抜く。

手に握られていたのは背丈ほどもある大剣でそれを肩に担いだ黒騎士が振り向く。


『ルッツ、といったか…?貴方も約束してほしい。私の事を口外しないと…』


有無を言わさぬプレッシャーを当てられて頷くしか出来ないルッツ。


そして黒騎士は頷くと踵を返す。


『オーガ狩りの時間だ』


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「カイト!右に回りこんで!僕が隙を作る!」


リュータはそう叫ぶと持っていた盾でシールドバッシュを繰り出す。


シールドバッシュで少しよろけたオーガに右からカイトが蹴りを叩き込む。


「ガァァァァァァァァ!!!」


咆哮をあげて怒るオーガだが更にコリンズが魔法を撃ち込む。


「よし、下がるぞ!無理はするな、必ず攻撃した後は下がれ!」


三人はオーガを相手に善戦していたがそれは長くは続かなかった。


「「「グガァァァァァ!!」」」


新たに森の奥からオーガが姿を現すと三人を取り囲んだからだ。


「…そんな……」「まじかよ…」「ここまでか…」


三人はじわじわと追い詰められていく。


「一か八かやるしか無いな…リュータ、カイト、俺があのオーガに仕掛けるからお前達は全力で走るんだ」


「ですがそれじゃコリンズさんが…」


「なぁに、これくらいの修羅場は何度も潜ってきたさ。大丈夫だ、とにかく俺が隙を作るから全力で走れ!……いく…っ!何だ?!」


コリンズが動き出そうとした瞬間、オーガ達が何かに怯えるように騒ぎだした。


「一体何が…」


リュータもカイトも何が起きているか分からず辺りを見回す。


「…!?」


コリンズはオーガが怯えて見ている方向を見て固まる。


「コリンズさん?どうしたんですか!?」


「おい、リュータ…あ、あれ!」


カイトも気がついてリュータにある方向を示す


「…え?」


リュータもその方向を向いて固まった。


そこには……


「…オーガなんか比にならねぇ化物が現れやがった………」


ガシャン、ガシャン。と鎧が立てる金属音を響かせてそれは森の奥から現れた。


「なんで魔族が……なんで黒騎士がこんな場所に……!?」


巨大な大剣を肩に担ぐ漆黒の騎士……人族の子供なら誰でも一度は言われる『悪い子は黒騎士が斬りにくるぞ』と語られる化物がそこにいた。


「…ガ…ウガァァァァァァァァ!!!」


圧倒的強者の気配に耐えられなくなったオーガが3人を無視して黒騎士へと襲いかかる。


『…………』


黒騎士は肩に担いだ大剣を最初に向かってきたオーガへと一閃して上半身と下半身を斬り飛ばす。


仲間が殺されたのも構わず更に次のオーガが襲いかかるがそれもただの一振りで両断する黒騎士。


『向かってくるからそうなる。『イビルスラッシュ』』


放たれた黒い斬撃は残りのオーガに当たった瞬間、オーガの身体を文字通り爆砕した。


「…あんなに簡単にオーガを…」


コリンズの呟きと同時に黒騎士はそのフェイスガードから覗く赤く揺らめき光る双眸を3人へ向ける。


『…人族よ、さっさと去れば生かしてやる。この先にいた人族と共に失せろ』


「…何で俺達を生かす…?」


『……お前らを生かすのは気まぐれ……だが、しいて言うならば……ある人族の少女に頼まれたからだ。『何でもするからお前達を助けて』とな』


その少女に感謝するがいい……。


そう言って黒騎士は森の奥へと消えていった。


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