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二十五


「クゼ、お前、うちの前で掏摸(すり)をするなと散々言っていただろう。役人を呼ばれたいのかい?」


「げっ」


クゼは苦虫を噛み潰したかのような表情になる。


(サチだけだったから大丈夫だと思ったのに!)


一番バレたくない人にあっさりバレてしまったようだ。

コウの表情が見る見るうちに怒りに染められる。


「おサチが言っていたよ。顔を隠した小柄な男子(おのこ)。お前さんだろう? あれ程言ったのに、うちの前で掏(す)りやがって。しかもおサチの目の前! グルだと思われたらどうしてくれるんだい!」


サチと言うのは、コウの末娘だ。齢(よわい)十六となる綺麗な娘であった。この茶屋の看板娘である。

鬼のような形相で、コウは再び叩く気だろうか、おたまを高く抱える。震えるコウの手が、沸々と湧き上がる怒りを伝えていた。クゼの顔色が青ざめていく。


「悪かった! 謝るよすまん! もうしないから! だから――」


「お前がうちに出入りしている事を隠すので精一杯なんだ。おサチにバレでもしたらただじゃおかないよ!」


「わ、わかった! わかったから! お願いだからそれを下ろして!」


クゼが必死にコウを止める。クゼは唯一コウにだけは頭が上がらなかった。


「問答無用!」


「いだっ!!」


クゼの説得も虚しく、本日二度目の制裁が下された。


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