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ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第四章

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50 フリアの想い

『医療』のバストン侯爵嫡女、フリア・ロペスは、ぼんやりとその様子を眺めていた。 

 

 睦まじく寄り添うアルドーとクリス。

 二人を支えようと決意する三人。

 

 フリアはクリスをとても眩しい存在だと思っていた。

 引っ込み思案で『医療』の知識ばかり詰め込んでいる自分とは違って、明るく成績も優秀で、しかも手先が器用なクリス。

 王子と男爵令嬢が結ばれるのは少女の夢物語のようで、とても輝いて見えた。

 

 自分も全力であの三人と同じ様に協力したい。

 だが、『医療』の足枷がフリアにはある。

 

 

 

 フリアは知っていた。

『内務』の先代公爵ジュゼッペ・ガルシアが謀叛を企てている事を。

 父や『医療』の一族が王家に不満を持っている事も。

 

 だからなるべく不干渉に徹していた。

 クリスに思いを寄せているアルドーの事も『医療』の誰にも話していない。

 話せば今の素敵な空気が壊れてしまいそうな気がして。

『私も』と言えたらいいのに、と胸が痛んだ。

 

「ロペス嬢」

 

 目の前に夜空と同じ色が広がった。

 不思議に思い顔を上げると、アルドーの友人のフラッハ・フェンが立っていた。

 

「我慢してる?」

 声を潜めてフリアに囁く。

 

 ──え? フラッハを見返す。見透かされている、そんな気がした。

 

「フェン様?」

「フラッハでいいよ。ペールと紛らわしいだろう? 『医療』の君はどこまで知ってる?」

 

 ニコニコ笑っているのに何故かどんどん凍らされていくような、そんな微笑。

 

「他の役員たちがわざわざ資料室に入って話し合ってるのに、君は何も聞いてこないよね。誰にも」

「っあっ、あのっ。私はっ」

「大きな声で話してはだめだよ。⋯⋯大丈夫。『医療』が今の扱いに納得していない事は、国王陛下も知ってる。君自身はどうなの?」

 

 

 

 確かに今の扱いは『医療』にとって弊害でしかない。

 対症療法ばかりで、根治治療の研究や、新薬の開発は制限されている。

『科学』と共同で開発したくても、建国以来の科学を捨てるという理念に反する為に何も出来ない。

 

『科学』は『内務』についたらしい。

 何故かはフリアは知らない。

「不満を持ってはいるが、それだけだ」と父のバストン侯爵は言う。

 

「もっと良い治療をしたいです。それには『科学』との連携は必要だと。でも、『内務』に付くのは父も反対です。それに何より、あのお二人の幸せを壊したくないのです」

 

「へえ。良い事を聞けた。『医療』に謀叛の意思はないんだ。さて、『科学』だけどね、『内務』に弱みを握られてる」

「えっ!」

 フリアは驚愕した。

 

「びっくりした? どう? 私たちに協力しない? 大人たちの思惑なんてぶっ潰したくない? アルドー様はね、ずっと大昔に決められた事を、今でもズルズル続けているのが不満なんだよ」

 

 ──なんて大それた事を。

 そう思う反面、とても魅惑的に思えた。

  

「ああ、王太子に取って代ろうなんて思ってないよ。サピエンティア公爵になって支えるつもりでいるからさ。アンバーブロウ嬢に惹かれるのも無理ないよ。爵位が低くても毅然として頑張ってるんだから」

 

 ──そうか。みんな、ただ可愛いと思って側に置いたんじゃなかったんだ。

 やっぱりクリス様のすべてが気に入っていたんだ。

 

 そう思ったら、何だか心が軽くなった。

 

「私で出来る事なら何でもします」

 

「ははっ、まーた同じ事言ってる」

 後ろからエミリオの声がした。

 振り返ると以前とは違う、柔らかく明るい表情。

 

「女の子は苦手じゃなかったんですか?」

 フリアは笑う。

 

「言うようになったなあ」

 エミリオはバツが悪そうに頭を掻いた。 

 

 

 

 クリスの唇に触れた瞬間、アルドーは自分のしでかした事に慌てた。

 

 ──公衆の面前ではないか!

 

 恐る恐る顔を離すと、触れただけのくちづけに驚いて、顔を真っ赤にしたクリスと目が合った。

 

「⋯⋯つ、つい、嬉しくて」

 言い訳すると、クリスは「ふふっ」と笑った。

 

 ふわりと空に舞う天燈を、二人はずっと何も語らず見つめる。

 しばらくして天燈は燃え尽き、暗闇に消えた。

 

 クリスは生徒会役員の姿を探して、頬を染めた。

 

「みんなこっちを見てますよ。⋯⋯見られちゃいましたね」

「あぁ、恥ずかしいな。でも、何だか、みながいい雰囲気だ。エミリオが笑ってる」

 

 クリスがアルドーの手を引いた。

 

「行きましょう、()()()()()

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