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ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第四章

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42 リカルドの告白 1

 エミリオは帰宅するなり、学園での高揚した気分が一気に下降した。

 

 居間からドンという音と共に、叔父リカルドの悲鳴が聞こえてきたからだ。

 家令の方へ顔を向けると「大旦那様がお呼びです」と無表情に告げた。

 

「ただいま戻りました」

 

 家令の手によって開かれた扉の向こうで、ジュゼッペがリカルドを杖で突き飛ばそうと腕を引いていた。

 止める間もなくリカルドの腹に杖は当たり、蹲るように昏倒した。

 

 

 

「帰ったか。どうだ? 『お披露目』で面白いものが見られたじゃろう?」

 

 エミリオに詳細は知らされていなかったが、裏で糸を引いていたのが祖父だという事がすぐに理解できた。

 

「『聖女コンテスト』の事ですか?」

 

「そうだ。コルデラ侯爵の女を唆してやったわ。これで王家は『内務』より『芸術』に目が行くだろうよ。で、お前はキアラの娘が泣くのを宥めてやったのか?」

 

 ほんのひと月前に手出ししないと言っていたのはどこの誰か。

 そもそもキアラが王家に色々と証言していると思わないのか?

 エミリオはどうにも理屈が通らない気がしてならなかった。

 

 どう答えたものかと思案していると、リカルドが弱々しく立ち上がりジュゼッペの胸ぐらを掴んだ。

 

「まだキアラを追い込むつもりなんですか!? もうやめて下さい。ああ、僕が彼女に見入ったばっかりに⋯⋯」

 

 ──どういう事だ? リカルド(叔父上)の意思で後妻にした訳じゃない?

 

 

 

「お祖父様、ミニュスクール公爵令嬢が二着用意していたので、計画は失敗に終わりました」

 

「なんて事だ! ああ、忌々しい。リカルド! 離せ! お前が女なら王妃になれたものを。お前もだ、エミリオ。どいつもこいつも男に生まれおって」

 

 もう一度リカルドを杖ごと押しのけ、ジュゼッペは息も荒く酒をあおる。

 理不尽な物言いにエミリオは辟易した。

 エミリオはひたすらこの老人をどう宥めすかすか考えていた。

 

「大旦那様、お身体に障ります。お部屋に戻られた方が宜しいかと」

 

 家令がリカルドをソファに座らせ、ジュゼッペに杖を渡す。

 怒りを滲ませたが、酒が回っているのだろう、部屋へと去って行った。

 

 

 

「キアラの娘は無事?」

 

 エミリオが声のした方を向くと、リカルドがソファの上で腹を擦っていた。

 医者を呼ぶかと聞いてみるも、「昔ほど力も強くないんだよ」というが、額に脂汗を滲ませている状態ではそうもいかない。

 どうしようかと扉を振り返ると、母サラの侍女が音もなく居間に入って来て小声で告げた。

 

「貴き方と繋がっています。リカルド様の保護を頼みました」

 

「⋯⋯殿下?」

 

 侍女は頷き、人さし指を口元に寄せた。エミリオはアルドーの周到さに驚く。

 それから家令に、エミリオの代わりに医療施設への馬車を呼んだ事を伝え、到着までリカルドの世話を申し出た。

 

「叔父上、医療施設にお連れします。お気を確かに。ああ、アンバーブロウ嬢は無事です。」

 

「良かった。アンナとキアラを間違えてから、全部が悪い方向に転がってどうしていいかわからない」

 

 リカルドはソファの肘掛けに首を置いて仰向けになり、何処とも言えない空を見つめて言った。

 

「間違えた?」

 

「アンナに初めて会ったのは、婚約式の数日前の夜会だ」

 

 そう切り出したリカルドだが、じわじわと腹の痛みがあるようで、ゆっくりと語り出した。

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