40 ドロテ
「殿下、よろしいですか?」
入口から一人の教師が走り寄る。
『お披露目』終了後に、クリスとセーレナを学園長室に連れてきて欲しいと教師は言う。
ドレスの件での召集だ。
「クリス、セーレナに言付けてくれる? 私は会の進行をする」
クリスは頷く。
セーレナと共に役員詰め所に向かった。
アルドーは司会席へと急ぐ。
残りは国王挨拶で閉会だ。
ベニニタスは新たなる世代の活躍を祈念し、アルドーは『お披露目』の閉会を宣言した。
招待客が宴席から離れてゆくのを見送り、アルドーはクリスとセーレナを連れて学園長室へ向かった。
「クリス!」
物陰から出て来たジュール・ギルランドに腕を掴まれそうになった。
アルドーはクリスを引き寄せ、アルドーの護衛がジュールを拘束。
ペールが間に入った。
「ジュール様?」
「母上が連れて行かれた。お前のせいだ!」
拘束されたまま大声を張り上げる。
セーレナは一歩進み、ジュールに相対する。
「ギルランド様、わたくしのドレスでしたの。汚されたのなら相応の対応をして当然でしょう? それともわたくしにあれを黙って受け入れろとおっしゃるの?」
「そ、それは」
「こんな所にコソコソ隠れてクリス様を待ち伏せるなんて、一体何をしようとしていたのかしら? ⋯⋯どこかの先代公爵にでも、とか思ってらしたの?」
「え?」
ジュールは言葉の意味が解らないといった様子で、不思議そうにセーレナを見た。
「君も来るといい。今から向かうところだ」
ジュールを連れ学園長室に入る。
部屋の隅には項垂れた女子生徒二人と、真ん中のソファにツンと顎を持ち上げた女が座っていた。
傍らにはコルデラ侯爵が蒼白な面持ちで唇を噛み締めている。
「母上! これは一体? 父上、どういう事なんですか?」
ジュールは護衛の手を振り解き、ソファに座すコルデラ侯爵夫人ドロテの足元に跪いた。
「ああ、第二王子殿下。お待ちしておりました」
前方の執務机から立ち上がり礼をしたのは、学園長グウィント・フェン。
老境に差し掛かった、先代フルーメン伯爵の弟だ。
枯れ枝のように痩躯だが、眼光炯々たる人物である。
「大体の事は聞いている。何故ミニュスクール公爵令嬢所有のドレスに染料をかけたのか、理由が知りたい」
アルドーは実行したドロテの姪ナタリー・マルタンに視線を送る。
ナタリーがチラとドロテに目を向けると、射殺さんばかりに見返され怖気づく。
何とか気力を振り絞り、消え入るような声で証言した。
「わ、私は、ドロテ叔母様に瓶を渡され、クリスが着る予定のドレスに染料をかけました」
「コルデラ侯爵夫人、何故そんな事を?」
アルドーが追及するも何の応えもない。
扇を広げ顔を隠す様子を見たコルデラ侯爵ガブリエルは、生徒の退席を願い出た。
学園長自ら、双子とナタリーを扉へ誘導した。




