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ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第四章

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39 白いドレスは誰のもの?

 手首にあしらったコサージュ。

 クリスはそっと触れて、心を落ち着けた。


 コツコツと慣れないハイヒールで会場へ急ぐ。


 生徒会は一番最後の入場。

 大勢の招待客の前へ足を踏み入れた。


 クリスの父、ノアは爵位を気にして入り口近くにいた。

 クリスが笑みをこぼすと、ノアはクシャリと顔を歪めて目元に手を当てた。

 それから笑ってクリスを送り出す。


 壇上を見上げ、司会進行のアルドーを見る。

 呆気にとられてみるみる顔が赤く染まっていくのが分かった。

 その隣でエミリオがアルドーの袖を引いている。


 クリスはその様子が可笑しかったのと、アルドーに見てもらえたのが嬉しくて自然と笑顔になっていった。




 クリスはコンテスト出場者の列には加わらず、司会の二人の間に移動した。

 和気あいあいと進行を務め、無事コンテストは終了した。


 優勝は『商務』。アルゲンテア侯爵がイシャーンによく似た笑顔を見せた。

 その近くで暗い表情でマールム公爵が賛辞を送っていた。

 ジュゼッペの姿はない。

 何も知らないフリアを除く生徒会役員たちは、この場にいないことにホッとした。




 控室に戻り、クリスは制服に着替える。

 セーレナは「これは貴女に」といってドレスの入った衣装箱を渡す。

 

「貴女の為のドレスなんだから、ね?」

 

 押しの強さに負けてクリスは受け取った。

 そのお礼にマグノリアのコサージュを贈ろうかと逡巡するが、思い直す。

 

「これよりもっと良いものを作ります。それを今日の記念に贈らせてください」

 と申し出た。


 セーレナは花が綻ぶような笑顔を見せた。

「きっとよ?」




 クリスとセーレナは連れ立って会場へ戻った。

 歓談中の招待客の間を縫ってアルドーが小走りで近付く。


 セーレナは耳元で「頑張って」と囁くと招待客の波に紛れていった。


「ああ、もう制服に戻ってしまったんだね。ゆっくり見たかったな」

 心底悲しそうな顔を見せるアルドー。


「セーレナ様がくださいました。また着る機会があるかもしれません」

「その時は是非エスコートさせてくれるかい?」


 蕩けそうな笑顔でそっと呟き、念を押す。

「だめ?」


「⋯⋯う、嬉しい、です」




「うん、楽しみだな。ところでクリス、明日の生徒会のみんなで『リスエルン祈念』に行かない? ランタンを持って」


 建国祭二日目の夜、王都中央の噴水で祈りを捧げる『リスエルン祈念』。

 各々がランタンを持ち寄って、王城から昇る天燈を見守る。

 王と王妃が放つ天燈は四半刻程で油が燃え尽きるまで空を舞う。

 はっきりとした起源は解っていないが、故郷の一地方の風習から始めた事ではないかと言われている。

 “リスエルン”とは灯火の器具を指す古語である。

 

「私は来年、成人したら自由に動けなくなるから、行ってみたいんだ」


 返事を待たず念を押す。

 成人した王族は王城で天燈を見守り、祈りを捧げる。

 クリスがアルドーと『リスエルン祈念』に参加できるのは今回しかないのだ。


「私、行きたいです」

「⋯⋯二人で?」


「えっ」

 勢いで言ってしまったが、そう取られてもおかしくない。

 動揺してどんどん心臓が早鐘のように打つ。


「生徒会のみんなとは、途中で別れて二人で見よう。⋯⋯護衛がいるから二人きりにはなれないけどね」


 クリスはアルドーの微笑みに絡め取られた。

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