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ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第三章

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30 アンバーブロウ邸への訪問

 セーレナをミニュスクール公爵邸まで送り届けたアルドーは、王城を出る前に先触れを出しておいたアンバーブロウ邸へ向かった。

 目立たぬ様に紋章の無い馬車に乗り込み、クリスにつける護衛二人とこれからの配置について打ち合わせた。


 男爵邸に着くと侍従に案内され、応接室でノアが出迎えた。


「言いつけ通りこちらでお待ちしておりました。アルドー第二王子殿下にご挨拶申し上げます。クローステール男爵、ノア・アンバーブロウでございます」


 ノアとその後ろに控えるクリスも同様に、アルドーに跪き頭を垂れた。


「どうぞ楽にして。これから話す事情で派手な訪問は避けたかったので。急な事だったが、お会い出来て良かった」

「勿体無きお言葉です」


 侍従が席を整え、着席を促す。

 全員の前で茶を点て、まずノアが口にした。

 それからノアが促すと侍従は静かに退室し、ドアが閉じられた。


 


 クリスがこれ以上ないくらい困惑しているのは一目瞭然だった。

 両手を膝の上でぐっと握りしめ、俯きつつひたすら瞬きを繰り返していた。


 そんな様子をアルドーはちょっと可愛いと思った。


「ここはガラスで出来た楽園のようだね。ランプ、カップ、ソーサー。あのタペストリーもそうなのかな? あの聖女像も?」

 アルドーはぐるりと部屋を見渡した。

 落ち着いた色ガラスの嵌め込まれたランプの灯りは部屋全体を照らし、ゆったりとした空間を作り出している。


「左様でございます。わが領地には三つの小さな街がありますが、それぞれに異なったガラス細工を得意としております」

「アンバーブロウ嬢は『聖女コンテスト』のマグノリアの花をグラスビーズで製作してくれるそうだ。とても楽しみにしているよ」


 二人に笑顔を向けたが、父娘揃って恐縮した様子で、それがまたそっくりでアルドーは笑みを深めた。


 


「さてクローステール卿、手短に話そう。アンバーブロウ嬢の身に危険が迫っているかも知れない。王妃陛下から護衛を託されました。学園内に一人、侍女を装う体のものを一人」

 アルドーの席の後ろに立つ二人が礼をする。


「危険、とは」

「マダム・キアラが王妃陛下に匿われている事によって、マールム公爵家から狙われる可能性を示唆された。マールム公爵に近しい人物からの情報だ」


 ノアは目を瞠る。

 そこまで大きな事態に発展していると思ってはいなかった。


「先代マールム公爵は王家に害をなそうとしている。その実行人として選ばれたのがアンナ・フォンターナとキアラ・フォンターナ。だが、マダム・キアラは王妃陛下に保護されいています」

「キアラにそんな恐ろしい事をさせようとしていた、と?」


「アンバーブロウ嬢を盾にマダム・キアラに実行を強要するかもしれない。入学前は領地にいて手を出しにくかったが、授業中はいいが、通学途中となると拉致するのは簡単だろうね」

「しかし、殿下。男爵家の者が所有の馬車を使って登下校は⋯⋯許されません」

 ノアが絞り出すように言う。


「この風潮も私は如何なものかと思っているよ。⋯⋯侍女を装った護衛と一緒に乗り合い馬車に乗って欲しい。学園では、彼女『教育』のペール・フェンが君の護りになる」

「同じクラスの⋯⋯。伯爵家の方がそんな!」

 クリスが弾かれた様に声を上げた。


「いえ、お気になさらず。これからは私が護ります。お任せください、クローステール卿。私は体術を得意としておりますので! まずはお友達になりましょう!」


 肩の上で綺麗に切り揃えられた艷やかな黒髪を揺らしながら、溌剌とした笑顔でクリスに手を伸ばす。

 クリスは躊躇いながら握り返した。

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