27 召喚
「まずは整理しよう」
アルドーは三人をぐるりと見回し、一本ずつ指を立てる。
一、先代マールム公爵 ジュゼッペは国王ベニニタス陛下の暗殺を目論んでいる。
二、その目論見に『科学』が巻き込まれている。
三、実行人として、キアラ・フォンターナが送り込まれたが、王妃の手の中にいる。
四、マダム・キアラ奪取の為にアンバーブロウ嬢が拉致される可能性がある。
五、『内務』の他に『科学』や『医療』も王家に不満がある。
六、マダム・キアラの拉致にコルデラ侯爵夫人が関与している可能性がある。
「五つ目に関しては、喫緊の課題ではない。と言いたいところだが、放置していい話ではない。だが、正直なところこれら全て、我々生徒会役員で対処できる事象ではない」
「一つエミリオ様に確認したい事があります。公爵夫人が貴方に話す事によって身の危険はありませんの?」
セーレナが危惧するのは、たとえ邸外で二人の会合に何らかの疑いが掛かるのではないかという事。
「僕もそれは聞きました。ですが、心配するな、と」
「わかった。それは公爵夫人に任せよう。私は陛下に目通りを願う。それと、アンバーブロウ嬢に護衛を付けようと思う」
「そんな! 畏れ多いです!」
「いいえ、クリス様。これは国を揺るがす事態です。貴女一人の話ではありません」
セーレナに説得され、クリスは気まずそうだが了承した。
「あとは六つ目だが⋯⋯、これは私の手の者に調べさせる。⋯⋯セーレナ、陛下への謁見に同行してくれるかい?」
「承知しました」
「ひとまず今、この場での話し合いはここまでだ。君たちは先に出て『お披露目』の準備を頼む。私はもう少しここで資料を探すよ」
三人が資料室から出るのを確かめて、アルドーは部屋の最奥の書架へ足を進めた。
隣の書架との間に肘から指の先程の広さの隙間があり、左耳を壁に向けた。
壁に薄く線が入り、音もなく壁が奥に動いた後、横にスライドした。
その先には暗い通路が現れ、黒ずくめの男が立っていた。
非常時に資料室から脱出するための王族のみが知る隠し通路だ。
アルドーのイヤーカフの生体認証に反応する。
アルドーが生徒会室に入る際は、必ず護衛が待機している。
「聞いていたね? 王にお目通りを」
「その事ですが、殿下。王妃陛下がミニュスクール公爵令嬢と共に、お部屋に来るようにと」
部屋の会話は隠し通路には聴こえるようになっているが、話が早すぎる。
訝しみながらアルドーは了承する。
「⋯⋯わかった。活動が終わり次第伺うと伝えてくれ。アンバーブロウ嬢の護衛を二人、選定しておいてくれ」
男は一礼し内側のスイッチに触れ壁を元通りにした。
アルドーは自然と顰めていた顔に気づき、表情を緩める。
このまま出ればイシャーンとフリアに不審がられてしまうだろう。
マールム公爵家にも気取られぬ様にしなければ。
目を伏せ深呼吸する。
王族らしい笑顔を浮かべ資料室を後にした。




