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ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第三章

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25 不満と不安と不穏

 マールム公爵夫人サラ・ガルシアは不可解なものを見た。

 普段会話どころか目も合わせない息子が、息を切らして目の前に立っている。


「珍しいわね。何事かしら?」

 サラは不信感をあらわに、頭の天辺から爪先までエミリオを見る。


 エミリオはひたすらに居心地の悪さを感じた。

「マダム・キアラの娘が⋯⋯」


 そう聞いた瞬間、

「久しぶりにヴァイオリンの練習がしたいわ。明日の午後に。エミリオ、付き合ってくれるかしら」

 サラは声を被せた。


 


 そのまま侍女に防音設備の整った小さな練習場の予約を取るように申し付けた。

 侍女が退出すると、二人きりになった部屋でサラが口を開いた。


「ここで練習するのは恥ずかしいの。学園が終わったら付き合ってちょうだい。いいわね?」

 そう言って退出を促す。

 エミリオは何も発言を許されなかった事に腹を立てたが、『ここで練習するのは恥ずかしい』で気づいた。


 この家での発言は聞かれている。

 誰に? 祖父か? 家族なのに? 

 疑問が次々浮かんだ。


 エミリオは咄嗟に話を合わせた。

「わかりました。ぜひご一緒させてください」


 


 学園での授業が終わるとエミリオは停車場に向かった。

 公爵家の馬車に乗り込み、馬丁は王都の小さい劇場近くにある練習場へと馬車を走らせた。


「待っていたわ。始めましょう。ここなら話を聞かれる心配はないわ。ここは『科学』の息のかかった練習場よ。わたくしが『科学』の出身なのは知ってるわね?」


 サラは侍女を一人扉の外に置き、もう一人の侍女にヴァイオリンを弾かせながらエミリオに言った。

 エミリオの疑問を察してサラが続けた。


「あの家はどこもかしこも話を聞かれているわ。部屋に仕掛けがあるのは勿論、使用人もあの人たちの目や耳なのよ。時間がないわ、早く話しなさい。疑われるわ」


「わ、わかりました。僕は今年度も生徒会役員になりました。他に今年入学したマダム・キアラの娘、クリス・アンバーブロウ嬢も役員になりました。それで、その、ミニュスクール公爵家の調査で初めて叔父上の経緯を知って⋯⋯」

「待って。ミニュスクール公爵家の調査って、何故貴方がその内容を知っているの?」


 クリスに悪態をついた挙句、アルドーにまで突っかかり、セーレナに叱責された顛末を話す。


「マールム公爵家の男どもときたら⋯⋯」

 サラは頭を抱えた。


 


「どうしてお祖父様はマダム・キアラを子爵家に入れたんですか? 子供だって生まれていたのに」

「ここから先を聞けばマールム公爵家が、何をしようとしているのか知る事になるけどいいの? 知ってお義父様に付くなら、わたくしは止めはしないわ。それがマールム公爵家の男だから」

 サラは悲しげに顔を歪ませてエミリオに告げた。


「多分、付かないと思う。ダニエレに頼まれたから」

 まっすぐサラを見つめ、エミリオが言った。

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