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ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第二章

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14 クローステール男爵家とマールム公爵家

 アルドーに促されフラッハは広げられた調査書をすくい上げた。

 調査書の内容は以下の通り。


 

 クリス・アンバーブロウは領地の、特に工房からの評判も良い。

 努力家で学業はもとより、ガラス細工についても良く学んでいるようだ。


 父ノア・アンバーブロウと母キアラ・マリーノの出会いから離婚へ至る経緯が記されていた。

 また現在キアラは王妃付きの書記官として王城に出仕中との記述もある。


 アンバーブロウ家とマリーノ家で婚姻時に問題は見当たらない。

 二人は学園で出会い、恋に落ち結婚した。

 お互いの家は男爵位であり、どちらも婚約者はいなかった。


 部門を越えた婚姻など特に珍しくもない。

 むしろ他部門で優秀な人材があれば進んで縁を結ぶ。


 クローステール男爵領でのキアラの評判は悪くはない。

 明るく勤勉で職人たちからも歓迎されていた。


 離婚はあくまでも『内務』の事情。

 先代マールム公爵は最初からキアラの能力を買っていて、何かあれば離縁させて連れ戻すつもりだった。


 上位貴族が相手ならばそんな事はしなかっただろう。

 だが、アンバーブロウ家は男爵位だ。

 下位貴族なら何をしてもいいと思っているのが透けて見える。


「子供を産ませてやっただけ有り難いと思え。低俗な『芸術』には勿体無いわ」

 と、先代マールム公爵が豪語しているのを周りに聞かれている。


 王妃付きの書記官として内定していた子爵家の女性が病気を患い、出仕できなくなった。

 病死した子爵令嬢の代わりとする為に、キアラを連れ戻した。


 公爵家次男が婿入りしていたその子爵家に、キアラを後妻として縁付かせた。

 クローステール男爵家側から手出し出来ぬように、と。


 


 フラッハが一通り目を通したところで、アルドーが口を開いた。


「元々『内務』の人材として手元に置いておきたかったマダム・キアラの他部門への輿入れを見過ごしたのは何故だろうね? しかもクローステール男爵家の後継を産ませてる。その上で連れ戻したのはどういう意図だろう?」


「王妃陛下に直接尋ねてみては?」

「たかが生徒会役員の問題に王族が口を挟むのは如何なものかと言われそうな気がするが。そんな悪評がついて回る人物を生徒会役員にするのは妥当かどうかと」

「将来の側近候補と見なされてしまいますものねー?」

 フラッハの指摘にアルドーはこめかみを押さえ、ため息をつく。


「それと、エミリオが口汚くアンバーブロウ嬢の母を貶めているのは何故だろう? 兄上の為にエミリオの頭脳は必要だ。でも、彼女の書記としての能力は生徒会の手元に置きたい。私はどちらかを捨てたくないんだ」


「⋯⋯殿下、これはもっと深く調べた方が良いのでは?」

 フラッハはすべてを聞き終え、アルドーを見返す。


 

 アルドーはハンドコールベルを鳴らし侍従を呼ぶ。


「調べたいことがある。顔の知れていない、なるべく奥まで潜れるものを」

「承知しました。しばらくお待ち下さい」


 侍従は一度退出し、数分の後に「これをお使いください」と、年の頃が判別しにくい凡庸な顔の男を残していった。

 アルドーは男に封筒を渡し、読み終わった頃を見計らい問う。


「ミニュスクール公爵家での調査だ。マールム公爵家の内情が知りたい。何か疑問点は?」

「──能力を買っていながら一度は手放し、また戻したのは何故か。誰の思惑でこの無駄な行為をしたのか」

「私も同意見だ。それと、現在マールム公爵令息にマダム・キアラは『男を誑かす女』呼ばわりされている。理由が知りたい」


「承知しました。期限はございますか?」

「出来る限り早く。すぐかかりなさい」


 アルドーは男が一礼し去るのを見届けた。

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