表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/32

12 今年度生徒会発足

「全員集まったね」


 生徒会室の窓を背に生徒会長の両袖机。

 それから少し離れて向かい合わせに役員机が並ぶ。


 出入り口と役員机の間にソファテーブルと一人掛けソファ一脚、二人掛けソファが二脚。

 両壁には書架が並べられ、隣に資料室がある。



 アルドーによって紹介された生徒会役員は以下の通り。


 生徒会長 アルドー・ルカ・マグノリア

 副会長 セーレナ・ラティオ嬢、三学年 『財務』

 会計 イシャーン・ティワリ 二学年 『商務』

 書記 クリス・アンバーブロウ 一学年 『芸術』

 庶務 エミリオ・ガルシア 二学年 『内務』

    フリア・ロペス 一学年 『医療』



「今年の一学年は女子生徒の方が成績がいいのか?」

 一通り紹介が終わったところでエミリオ・ガルシアがクリスとフリアを見た。

 癖の強い黒髪にやや浅黒い肌、切れ長の目を意地悪く見開く。

 言外に不満を臭わせている。


「一位の『司法』のリーブラ公爵令息には断られてしまってね。法律の勉強に専念したいそうだよ」

 代わりに二位のフリアと話し合い、了承を得たという。


「それにしても、派手で中身のない『芸術』で、しかも男爵令嬢とか。今年は酷すぎるのでは?」

 ふん、とエミリオは鼻を鳴らす。



 元老院の上位貴族は分家筋の子爵家や男爵家に、侮蔑的な態度を取る。

 しかし、他部門の下位貴族に対してそうするのはあまりない。


「それは、私の人選が間違っていると言いたいのかい? エミリオ。教師の推薦があったとは言え任命したのは私だからね。それに部門間で上下を付けるのは如何なものかな?」


「殿下、いや、まあ、それは⋯⋯」

 アルドーの指摘にエミリオは口を濁す。




「アルドー殿下、ありがとうございます。ですが、私、拝命しましたからには結果を出せるよう努力いたします」

「期待しているわ。クリス様。 アルドー様、カードを貸して頂けるかしら?」

 アルドーはセーレナの意を汲み、クリスがタンブラーに添えたカードをエミリオに手渡した。


 カードの表面のカリグラフィーと裏面にはメッセージと署名。

 エミリオはカードの両面を見るうちにどんどんと眉間に皺を寄せていった。


「昨年度貴方は書記でしたけれど、貴方の筆記、わたくしには読めませんの。まるで殴り書きのよう。それでも貴方はとても優秀な方。庶務は将来クレプスクルム様の『内務』の一員としての良い勉強になりますわ」




 エミリオは、アルドーより兄の王太子に重きを置いている。

 それ故、将来王太子妃となるセーレナの意見を尊重しがちだ。

 それを踏まえてセーレナは叱責している。

 加えてエミリオは自他ともに認める悪筆だった。


「申し訳ございません」

 苦虫を噛み潰したような顔でエミリオは頭を下げた。



「では、それぞれ新入生に業務について」

 そうアルドーに促され、各々所定の位置に着いた。 




「ったく、何なんだよ。『医療』の奴がなんの役に立つんだ。役員の健康管理か?」

 エミリオは隣の席に座るフリア・ロペスに毒づいた。


 少し離れた席の他の役員たちに聞こえる大声だ。

 エミリオの声で一同は動きを止めた。


「口答えも出来ないのかよ。ったく」

「フ、フリア・ロペスです。よろしくお願いします。ガルシア先輩。でっ、出来ることなら何でもします」

 フリアは俯き、ブルネットの伸びた前髪から茶色の瞳を微かに潤ませた。


 イシャーンはアルドーに小さく頷き、エミリオの方へ歩いていった。


 ニヤニヤ笑いながら居丈高な態度で「へえぇ、何でもねえ」と、フリアを見下ろす。

 フリアは元老院の主家『医療』バストン侯爵家の嫡女。

 その態度に再び周囲が眉根を寄せる。


「エミリオ。照れ隠しなの?」

 エミリオの両肩に手を置き、イシャーンが声を掛ける。


 緩くオールバックに流した黒髪に褐色の肌。

 人好きのする笑顔が印象的だ。


「ロペス嬢、ごめんね。エミリオはね、女の子が苦手なんだよ」

「なっ!」

 顔を真っ赤にしたエミリオにイシャーンは笑みを浮かべ、手をひらひらと振って席に戻って行った。


「ち、違うからな!」




 空が赤く染まった時分にアルドーはその日の活動の終了を告げた。

 それぞれが帰り支度を始めると、アルドーはエミリオを呼び止めた。


「何でしょう? 第二王子殿下」


 エミリオの棘のある声音にアルドーは薄く微笑む。

 過去二年生徒会に席のなかった自分が、昨年も生徒会役員であったエミリオに軽んじられるのは致し方ない。

 だが、こうも空気を乱されては流石に看過できない。


「君が何故生徒会役員になれたのか、理由はわかっているかい?」

「⋯⋯僕の成績が優秀だからでしょう。昨年もやりましたし」

「そうだね。だが、二学年で首席はセーレナの弟、ロレンツォ。二位はエピ公爵の次男レオン・バーレイ、私の従弟だ。どちらも来年に誕生する王太子夫妻と血が近い。どういう意味かわかるかい?」


「⋯⋯⋯『平等であれ』」


 マグノリア王国の基本理念であるそれは、元老院たちの枷だ。

 どれほどの能力があっても、他部門を押しのけ上に立つことは許されない。

 あえて自分たちがその枷を壊して不穏を招く事態は歓迎されない。 



 アルドーとセーレナが生徒会長、副会長でいる間は、二人の親族は生徒会役員にはなれない。

 平等である為には他に譲る以外ないのだ。


「君がいずれ公爵位に就く私を軽んじている事は知っているよ。敬愛する王太子殿下のスペアだとね。

 だが、君もそうなんだよ。上位二人を役員に据えられない時のスペアなんだ」


「⋯⋯⋯⋯」


「この国では千年も昔から派閥を作ることを許していない。もしこのまま君が王太子にのみ忠誠を誓うと言うのなら、私は生徒会から君を外さざるを得ないよ」


「脅しですか?」

 剣呑な空気をはらむ。


「違うよ。自分の立ち位置を理解するべきだ。将来君は順当に行けば宰相になるだろう。だがそれは君が特別優秀だからじゃない。『内務』の血がそうさせるだけだ」

「⋯⋯! あんただってそうじゃないか」

「言われるまでもない、私は理解しているよ」


 ひた、とアルドーはエミリオに目を合わせる。

 エミリオは挑むような瞳でアルドーを見返し、一礼してドアに向かった。


「それはそうと、あの『芸術』の女子生徒は『内務』を裏切って男を誑かすような女の娘だ。気をつけた方が良いですよ」

 後ろ手でドアを閉めながらそう言って去って行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ