表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/31

11 一生の誓い

「あっ。確かに推薦の話は聞きました!」

 クリスはアルドーへ向けるセーレナの視線に気づき声を上げた。


 その後小声でつぶやく。

 入るかどうかは返答していない、と。


 セーレナはクリスを怯えさせてしまったと、少し反省。




「でもアルドー殿下にはお渡ししたいものがありまして! それとブローチの件でお話が」

 クリスは鞄から『虹の蜘蛛』で織られた紺色の包みを取り出し、アルドーに手渡した。

「ブジェフの職人の自信作です。もし良かったらお使いください」


 受け取ったアルドーは目を輝かせて、ゆっくりと丁寧に白いリボンを解く。

 するりと紺色の布が滑り落ち、木箱とその上にメッセージカード。

 木箱の中身は透明感のある青いタンブラーだった。


「素敵。ブジェフの職人技は王都でも有名なのよ。目が離せないわ」

「ああ、美しいね」

「ありがとうございます。職人に伝えます。きっと励みになるでしょう」

 クリスの顔が一気に笑顔になる。


 その様子にアルドーも笑みを深める。

 それからおもむろに木箱の上に置かれていたメッセージカードを手に取った。

「このカード、カリグラフィーが描かれているが⋯⋯」

「私が描きました。先日お気遣いいただいたので、お礼のカードを添えました」

「君は筆跡が綺麗なだけじゃなくて、こういった芸術的な文字も美しく描けるんだね。君を書記に推薦してくれた教師がね、入学試験での筆記の美しさも褒めていたんだよ」




 見る間にクリスの顔が赤くなっていった。

 アルドーも耳を赤くしている。


 ほわほわした空気の中、セーレナだけがぐっと扇を握りしめた。


 ──これは、いけるのでは?


 しかし万が一王家に害があってはならない。

 セーレナは大義名分のもと可愛いものに手を出す。


「本当に美しいわ。今度わたくしに教えてくださる?」

「あ、ああああ、ラティオ様に!? えっ、そんな恐れ多くて」

 落ち着きなくパタパタと手を振るクリス。


 そんなクリスが可愛らしくて仕方がないセーレナ。

 距離を詰めて右手を握る。

「セーレナと呼んで? わたくしもクリス様とお呼びしてもいいかしら?」


 ガクガクと頷き続けるクリスに、さらに畳みかけるセーレナ。

「それと、わたくしにも何か作っていただけるかしら?」

「はい! 私、ずっと前から夢があって! 王妃様をガラス細工で輝かせたいんです! そう、未来の王妃様、セーレナ様を!」


 思ってもみなかった野望を宣言されて、セーレナは『一生囲う』と固く決心した。




「あー、君たち。打ち解けて何よりなんだが⋯⋯。アンバーブロウ嬢、書記をお願いできるかな?」

 キラキラ輝く王族の笑顔を向けるアルドー。


 しかし、クリスは苦い顔をしたまま返答しない。

 男爵令嬢が生徒会役員になるなど周りから一体何を言われるやら。

 そう思っているのが見て取れる。


 ならば私が、とセーレナはできる限りの優しい笑顔を作り、首を傾げる。

「クリス様、わたくしと一緒に生徒会で働きましょう?」


「はい!」

 瞬時に応えるクリス。


「⋯⋯⋯えぇー」

 アルドーは項垂れた。




「では殿下。ブローチの件ですが⋯⋯」


 クリスに要望を聞かれたアルドー。

「君がイメージする私に似合うもので」とお任せ感の強い返事をする。


 クリスは嫌な顔をせず、おおまかなイメージを慣れた手つきで紙に描き出した。

 紺色のガラスをメインに、台座はマグノリアモチーフ。

 クリスはガラスのカットの仕方を軽く説明しつつ、意見を求めた。


「キラキラ輝くよりもそこにある(・・・・・)といった風がいいかな。普段使いにも出来るような」


 マグノリア王国は華美なものは敬遠される風潮がある。

 王族とて値の張るような鉱石の宝飾品を身につける事は稀だ。

 意を汲んだクリスはさらさらと紙にラフ画を起こす。


「⋯⋯軽く金箔を浮かべて四角のカボションカットにしましょう。台座はあまり派手にならない程度で」

「うん、ありがとう。任せるよ」

 クリスは一瞬不思議そうに、上目遣いでアルドーを見上げた。


 最近の強引な勧誘や華やかな姿ばかり見ていて、アルドーの本質がわからないクリス。


 不覚にもセーレナは少し眉を下げた。

 その様子はクリスにチラリと覗かれていた。




「では、そのように工房に伝えます。セーレナ様はどういったものがよろしいですか?」

 何事もなかったように笑顔で続けるクリス。

 まだ年若いのに客の扱いを心得ている、とセーレナは舌を巻いた。


「扇の房飾りにほんの少し華やかさを足したいの」

 そう伝える。

 クリスはグラスビーズのサンプルを取り寄せると返す。


「嬉しいわ。楽しみね」

「王都にも小さな工房で多少の加工は出来ますが、ブジェフの職人に作らせたいです。

 お時間をいただく事になると思います。特にこれからひと月は建国祭に向けて忙しくなりますし」


「領地までは遠いのだから、夏の休暇でかまわないよ、ねえ、セーレナ」

「ええ。ご無理はなさらないでね」

「ありがとう存じます」


 小さく拳を握りしめて、セールスの成功を喜ぶクリス。

 途轍もなく可愛らしい姿に、セーレナはあえて見て見ぬ振りをした。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ