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ガラス細工を愛する少女は王妃様を輝かせたい  作者: 麻生あきら
第二章

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08 双子の襲撃

「さて、君たち。入学おめでとう。上位クラスの担任のマドック・フェンだ」

 教壇で生徒たちを見渡す。

 痩せた眼鏡、ぼさぼさの髪。壮年といった年頃。


「受講内容を話す前に、まずは君たち貴族に関しておさらいしよう。十歳の時に、君たちは男子は左耳、女子は右耳にイヤーカフを着けたね? それが貴族の証明、戸籍に登録されるよ。さて、我がマグノリア王国には次の十一の部門がある」


『内務』マールム公爵

『財務』ミニュスクール公爵

『司法』リーブラ公爵

『農務』エピ公爵

『商務』アルゲンテア侯爵

『建築』フォンス侯爵

『医療』バストン侯爵

『芸術』コルデラ侯爵

『科学』アルジャブラ伯爵

『エネルギー』シンティラ伯爵

『教育』フルーメン伯爵


「これらの部門の主家は世襲制。国王陛下と元老院の承認で次代に引き継げるようになってる。そして、これが大事だよ。元老院に課せられた基本理念は『平等であれ』。とは言っても、貴族全体だと思って欲しい」


 マドックは胸に手を当て、一呼吸置いた。


「我が『教育』はそう思っている。『教育』主家フェン家の三男で、独身。実家に居候だけど、誰にも咎められていないよ。が、他部門ではそうではないかもしれないね? だが、学園内では出来るだけ爵位に関係なく平等であって欲しいと思ってるよ」


 マドックは微笑んでいるが、生徒たちはあまりいい顔をしていない。

 この上位クラスのほとんどが部門主家の出身だからだ。




「では、学園について話そう。君たち貴族の子女は十五歳になったら『学園』に通う事が決められている。学舎と寮、あとはアスレチック・フィールドがある。大昔はただの学びの場だったが、今は社交の練習もする、と言ったところかな。学園は三年制、男女、爵位関係なく成績順にひとクラス十五名を上限に、その年ごとに編成されるよ」


 時間割が配られ、それぞれが目を通す。


「一学年目は基礎学習。言語や歴史、地理、数学などがそれだ。二学年目からは基礎学習と、学生が所属する部門の専門的な講義が加わる。三学年目は主家の継承者や領主になる者に対する講義が別に組まれる事になる」


 一学年はその時間割の通りだよ。

 そう言ってマドックは紙をヒラヒラと振った。


「その他に三学年を通して、社交におけるマナーを学んでもらう。あとはね、男子は害獣駆除の為の戦闘訓練。女子は刺繍や家政などの授業も用意されているよ」


 説明を終えたところで終業の鐘が鳴った。

 マドックは手元の資料を纏める。


「明日からは授業が始まるからね。ちゃんと教材を見て予習してくるんだよ」

 マドックは教壇を降り、去り際にクリスに声をかけた。

「アンバーブロウ君、君は生徒会からの招集を受けている。書記に推薦されているんだ。生徒会室に向かってくれるかな?」


「私がですか?」

「そうだよー」マドックはそれだけ残して教室から出て行った。




 呆気にとられていると耳障りな大声が聞こえ、後ろから髪を引っ張られた。

「やあ、クリス。いったいどんな不正をして上位クラスに入り込んだんだい? この前も言ったじゃないか、侯爵家を愚弄するなと」


 クリスが振り返ると髪を鷲掴みにした『芸術』コルデラ侯爵令息 ジュール・ギルランドが見下ろしている。

 その隣には笑みを浮かべた双子の妹、イブリン・ギルランドがクリスを見ている。


 教室に残っていたクラスメイトたちは驚きのあまり絶句している。


「私が何をどうしたら不正なんて働けるんですか? 学園に失礼です。それとお手を離していただけますか?」

「お前は本当に生意気だな。そうそう、この前のゴミのようなネクタイピンはどうした? あれより良いものを作ったんだろうな?」

「父がコルデラ卿にお届けしているはずです。卿のお許しが出ましたので」

「聞いてないなあ」


 より一層髪を後ろに引っ張られる。

 クリスは苦痛に顔をゆがめる。




「不正とは聞き捨てならない言葉ですね。それが本当ならば、我が『司法』リーブラ公爵家で学園に調査を入れなければならなくなります。それを理解した上での発言ですか?」

 近くの席から男子生徒が一人近づいて来た。


「なんだと? お前は誰だよ」

「何とも品のない。僕はフィン・リヒター、リーブラ公爵家の家督を継ぐ身として、ご挨拶申し上げます」


 教本通りのような礼と、まだ少し高いが聞き取りやすい発語が美しい。

 丸メガネの奥に光る青い瞳と、綺麗に切り揃えられた銀の髪がまるで氷のような冷たさを放つ。


嘘言(うそごと)なのでしたら、あなたの方が罪となりますよ。それに婦女子に対する暴力は看過できません」

「大袈裟だな。主家の僕が仕置きをするのは当然だろう?」

 ジュールが面倒そうに吐き捨てた。


 その時、急に廊下の方からざわめきが起こった。

 それは徐々に教室に近づき、男子生徒が顔を覗かせた。


「クリス・アンバーブロウ嬢はいるかな?」 

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